


--ビューティーライフ・アドバイザーとして、健康的な生活スタイルを提案しておられる嶋田さん。日本を代表するメークアップ・アーティスト、嶋田ちあきさんの奥様でもあり、『美』に対する意識はとても高いのではないかと思います。
嶋田さん:夫婦で美容にかかわる仕事をしていますが、美の基本は「健康であること」だと思っています。体調がいいと肌や髪のつやも良くなるし、声にもハリが生まれますよね。夫もメークで外見を美しくする仕事をしていますが、不健康な生活をしている人のボロボロな肌をメークで美しく変身させるのにはやはり限界があって、元気な人が持っている自然な美しさにはかないません。
--嶋田さんご自身も40代とは思えないエイジレスな美しさに溢れ、同世代の女性たちの憧れです。やはり健康が美しさにつながっておられるのでしょうね。
嶋田さん:若いころよりも今のほうがずっと体調がいいんですよ。気持ちも前向きになりますね。毎日、仕事や家事を楽しんでいます。
--今は元気に活躍なさっていますが、23歳のときに難病にかかった経験をお持ちだとか。
嶋田さん:結婚して2年くらい経ったころ「原田病」という原因不明の病気になって、目がほとんど見えなくなりました。主に目に症状が現れる病気なのですが、耳も聞こえづらくなり、味覚も感じなくなって、首から上が全ておかしくなってしまったような感じでした。 1ヶ月ほどで退院はできましたが、多少良くなった程度ですから、家に戻ってからがまた大変。お風呂に入ろうとしてもしゃがみこんでしまうくらい体力が落ちていて、夫(メイクアップアーチストの嶋田ちあき氏)に手助けしてもらわないと生活できないんですね。目の焦点が合わないから料理はできない、電話をかけたくても数字が見えない、テレビも見えない、音もほとんど聞こえない。「私、何のために生きているんだろう」って、絶望感でいっぱいになりました。
--20代前半は病気になるなんて予想もつかない時期ですよね。ショックも大きかったでしょう。
嶋田さん:それまで病気らしい病気をしたことがなかったので、健康であることを当たり前と受け止めていたんですね。自分の身に降りかかってみて初めて病気の怖さを実感しました。発病初期には強いステロイド剤を投与したために副作用で顔はむくみ、髪も抜け、ストレスで食欲もなくなって体はガリガリ。これらはたいへんつらかったですね。
それから少しずつ良くなって、目も見えるようになり、できることは増えていきましたが、その後も長い期間さまざまな後遺症に悩まされ続け、治るまで15年もかかってしまいました。その間は、何かを心から楽しむ余裕なんてなかったような気がします。
--長い闘病生活の間には、離婚を考えたこともあったそうですね。
嶋田さん:夫は仕事だけでも忙しいのに、ずっと私の世話もしてくれていました。何とか治ってほしいと一生懸命で、誰かから「いい病院がある、いい治療法がある」と聞くと、すぐに車に乗せて連れて行ってくれて。結局良くならないことが多くて、そのたびに私は落ち込んで「生きていても仕方ない」とわがままを言いました。でも夫も「必ず良くなるから」なんて、無責任なことは言えないんですね。負担ばかりかけていることが申し訳なくて、本気で離婚も考えました。夫の献身的な介護がなければ、私は生きることができなかったと思います。

--ある程度は良くなったものの足踏み状態だった病状が一気に快方に向かったのは、ご主人のひとことがきっかけだったそうですね。
嶋田さん:闘病生活が十数年続いて少しずつ良くなってきていたころ、夫が「疲れた」ってポロッとつぶやいたんですね。弱音なんてほとんど吐いたことがない人だったので、そのひとことを聞いて愕然としました。そしてこれまでの彼のいろいろな苦しみ・苦労が伝わってきて、「これ以上負担を増やしたら過労死するかもしれない、今度はこの人のために自分が何かしなくては」と思ったのです。それからは自分のためというよりも夫を健康にしたくて、どういうものを食べればいいだろう、どういう環境で生活をすれば疲れが取れるだろうと、真剣に考え始めました。
--具体的にはどのようなことを実行していったのでしょうか。
嶋田さん:まず緑豊かで環境のいい場所へ引っ越して、二人が心底落ち着けるような住空間づくりをしました。次に内側から健康になるために、食生活は玄米を基本にしたバランスの良いヘルシーメニューに変え、レシピや食材研究に奮闘しましたね。すぐ疲れてしまうので外出はつらかったはずなのに、いい食材を手に入れるために少し遠くまでお買い物に出かけるのは楽しくて。健康を意識して暮らすようになったら、夫ばかりでなく自分もメキメキ元気になりました。だから今は、夫が「疲れた」とこぼしてくれたことにとても感謝しています。
--病気を経験なさったことで、得たものも多かったのですね。
嶋田さん:家族の中にひとりでも具合が悪い人がいると、家族全体のバランスが崩れてしまいます。病気のせいで長い年月を無駄にしてしまったと思う一方で、そういう経験があったからこそ夫との絆も深まったし、今健康であることの大切さが実感できるんだと思うんですね。

--嶋田さんは病気のときに、漢方薬を飲んだこともあるそうですね。
嶋田さん:病院の先生に勧められました。それまでいろいろな薬を使ってきましたが、中には副作用がとても強いものもあって体が相当参っていたので、私にとって「薬は怖いもの」になってしまっていたんですね。先生にも「副作用の強い薬はもう飲みたくない」と言ってありました。そんな中で漢方薬は穏やかに作用するというイメージがあって、抵抗なく受け入れることができました。攻撃するのではなく、じわじわと浸透して、体の中に入りこんだ悪いものが浄化されていって、元気になるような優しい感じですね。
--実際、漢方薬には体全体のバランスを整えて体調を改善していくという特徴があるんですよ。
嶋田さん:当時の私は悪い部分がはっきりしていなくて、何となく具合が悪かったから、漢方薬が向いていたのかもしれませんね。でもね、私の中では漢方薬って土鍋みたいなもので薬草をグツグツ煎じるようなイメージが強かったから、普通のお薬(西洋薬)のように小袋に入ったサラサラの薬を渡されたときはびっくりしました。「えっ?漢方薬ってこんな近代的な薬だったの?」って。
--漢方薬は、もともとは生薬を煎じて飲むというスタイルの薬です。嶋田さんがお医者さんから渡されたのは「エキス剤」といって、煎じ薬の成分はできるだけそのままの状態で、持ち運んだり飲んだりしやすいように顆粒状に加工してアルミパックで包装したものなんですよ。
嶋田さん:なるほど!漢方薬は苦くて臭くて鼻をつままないと飲めないというイメージでしたが、エキス剤は飲みやすかったですね。
--お医者さんに処方してもらえて、健康保険が使えるということも、ご存知ではなかったのでしょうか。
嶋田さん:そのときまで全く知りませんでした。近代的になった漢方薬にもびっくりしましたけど、それを病院で処方されたことにもびっくりしました。でも私の体の状態をよくわかっている先生が選んでくれた薬だから、より安心して飲むことができたような気がします。
--嶋田さんは、今も漢方薬を飲むことはありますか。
嶋田さん:かかりつけの内科の先生は、風邪をひいたときにはたいてい漢方薬を処方してくださいます。こちらからお願いしたわけではないのに漢方薬が出てきたので、風邪にも効果があるんだなと。実際、服用するととても楽になりますね。
--漢方薬はゆっくり効果が出てくるようなイメージが強いですが、即効性があるものもあって、風邪のような急性疾患にもよく使われています。
嶋田さん:そうなんですか。私は風邪薬(西洋薬)で湿疹出てしまうこともありましたが、幸い漢方薬を飲んで肌が荒れたことはないし、胃も荒れずに済むので、とても助かっています。その先生のところでは、風邪以外でもアレルギーの症状があるときにも漢方薬を出してもらっていますし、普通の薬(西洋薬)と一緒に処方されることもあります。漢方薬に関してはいつも安心して先生にお任せしてしまっているので、処方された漢方薬の名前もよく覚えていないくらいです(笑)。

--病気は完治されたということですが、現在のお体の調子はいかがですか。
嶋田さん:おかげさまで、今までの人生の中でベストと言っていいほど元気いっぱい。お仕事も家事も楽しんでいます。病気がひどかったときは治るとは思っていなくて、「せめて人の手を借りずに生活できるようになれば」と考えていたので、信じられないくらい健康になりました。
--健康を維持するために、ふだんはどのようなことに気をつけて生活しているのでしょうか。
嶋田さん:食事はもちろんのこと睡眠や運動にも気を配っていますが、そんなにむずかしいことをしているわけではなくてどれもシンプルなことばかり。例えば、私は寝不足になると気分だけでなく髪も肌も、体全部が元気をなくしてしまうので、最低7時間は睡眠をとるようにしています。睡眠時間を確保するために夜11時以降はメールやFAXがきてもいっさい見ません。見始めると、お仕事をどう調整しようかと考えたり、返事をしなければと気になったりして結局夜更かしをしてしまうでしょ。だから「明日の朝にする」と線引きをしています。
--忙しい生活のなかで、健康管理に取り組むための心がまえを教えてください。
嶋田さん:忙しさを理由にしていると、あっという間に年月が経ってしまいます。本気になれば時間は作れるし、優先順位を変えればできないことなんてほとんどないはず。運動も食事も切実ではないから「まぁいいか」「来年になったらはじめよう」ということになっちゃう。そうやって先延ばしにしているほうが楽じゃないですか。でもこれがお仕事だとしたら、お金が発生するし責任もあるから先延ばしになんてしないでしょう?それくらいの気持ちで健康管理に取り組んでほしい。
--「何からはじめればいいかわからない」という場合は、どうすればいいんでしょう。
嶋田さん:いっぺんに変えようなんて欲張ると長続きしません。夕食は毎回コンビニのお弁当という人は、まずは10回のうち1回だけでも手作りしてみるとか、自分のできるところから始めてみればいいのではないでしょうか。たとえば運動も必ずこれじゃなきゃいけないなんてものはなくて、お掃除をしながら意識的に体を動かすのもいいし、お買い物のときに車を使わず歩くだけでも十分だと思います。それをすることでいかに気持ちよく暮らせるかを体験すると、継続せずにはいられなくなります。
--なるほど。エイジレスな嶋田さんの美しさや生き方に憧れる女性も少なくありません。漢方ビューの読者にアドバイスをお願いします。
嶋田さん:厳しいことを言うようですが、いろいろなものを欲しがるわりには、それを手に入れるための努力をしていない女性が多いように思います。健康や美しさを手に入れたいと思うなら「面倒くさいから自分にはできない」と思い込んでほしくないし、できることは絶対あるはず。以前の私も運動なんか大キライという面倒くさがりの人間でしたが、実際始めてみると気持ちがいいし、元気でいられるし、体型もキープできる。今は「やらなきゃ損」というくらい、運動大好き人間になりました。
年をとることは止めることができないけれど、自信を持っていろいろなことに取り組んでいけば、内面からの美しさが滲み出てくるはず。自分の可能性を信じて生きてほしいと思います。

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