漢方ビュー通信

「慢性腰痛」で悩んでいる方へ!原因と対策を解説

「慢性腰痛」で悩んでいる方へ!原因と対策を解説

腰痛患者の数は推定で2770万人

スポーツの秋。すがすがしい青空のもとでカラダを動かすのは気持ちいいもの。
ですが、その一方で慢性的な腰痛のため、スポーツどころではないという人もいるかもしれません。
厚生労働省研究班の調査(2012年度)によると、腰痛の患者割合は37.7% (男性34.2%、女性39.4%)。患者数は推定2770万人(男性1210万人、女性1560万人)です。また、国民生活基礎調査(2013年)では、腰痛のため病医院に通院している人は、男性は高血圧、糖尿病、歯の病気に次いで4位、女性は高血圧に次いで2位でした。
それほど患者数の多い腰痛。もはや国民病の一つといってもいいかもしれませんが、今年9月に行われた日本整形外科学会の記者説明会では、今までの腰痛のイメージを覆す興味深い内容が発表されたので、紹介します。

多くの腰痛は筋膜・筋肉が原因だった

多くの腰痛は筋膜・筋肉が原因だった

これまで腰痛といえば、その85%は病院などで検査を受けても原因が分からない“非特異的腰痛”で、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの原因が明らかな腰痛は、たったの15%程度しかないといわれていました。
しかし、これはアメリカの報告をもとにした数字で、病院の受診システムなどが違うにもかかわらず、数字だけが一人歩きしてしまっていたようなのです。
実際、山口大学医学部整形外科が行った調査「山口県腰痛スタディ」では、“ていねいに検査をすれば腰痛の多くは原因が特定できる”ことを明らかにしています。
この調査によると、今まで原因が分からないといわれていた非特異的腰痛の多くは、筋・筋膜性腰痛や椎間関節性腰痛など、X線写真などの画像検査では写りにくかった、筋肉や筋膜、関節などの損傷や炎症によるものでした。

腰椎を支えるインナーマッスルを使う

腰椎を支えるインナーマッスルを使う

筋肉や筋膜が原因となる腰痛は、基本的には深刻な腰痛(がんなど)や神経の痛みやしびれをもたらす腰痛(腰椎椎間板ヘルニア、胸部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症による圧迫骨折など)ではないため、手術で治すというよりもむしろ日々のセルフケアが重要になってくるとのこと。
腰痛のセルフケアで、大事なのが“運動”。じつはカラダを動かすことで脳内に「鎮痛メカニズム」がはたらいたり、炎症を抑えたりしてくれるのだそうです。
腰痛対策によい運動は、インナーマッスル(コアマッスル、腹横筋ともいう)を使うもの。インナーマッスルは腰椎を支えるコルセットのような役目を果たしているため、ここをしっかり使うことで腰痛の改善や防止につながるといいます。
インナーマッスルを使うヨガやピラティスのほか、仰向けになって膝を立て、息を吐きながらお腹をへこます「ドローイン」という運動がオススメ。たったこれだけインナーマッスルをしっかり使うことができます。
大きくカラダを動かす運動ではないので、腰に不安を抱えている人でもできます(※腰痛で病院にかかっている人は、事前に主治医にご相談ください)。
ドローインでインナーマッスルの使い方がわかったら、通勤中や仕事中、家事をしているときなどにも意識して使っていきましょう。この運動は「気づいたときにやる」ことが大事。お腹もへこみ、姿勢もよくなるので一石二鳥かもしれません。

痛みにこだわらないことが大事

そして腰痛対策で何より大事なことは、痛みにこだわらないこと。
「痛みがあることを忘れられる」「痛みがあってもできる」という気持ちを持つことで、生活の質の改善が望めます。反対に、痛みにこだわるとうつ状態を招き、さらなる痛みの増強につながってしまうといいます。
一方、同じ痛みでも「安静にしていても痛い」「腰に熱感がある」「しびれやマヒがある」「尿が出にくい」といった症状があったら、なるべく早く整形外科で診てもらうようにしましょう。


膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2012/123011/201217001A/201217001A0001.pdf

厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査(P22)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/04.pdf

山口県腰痛スタディ
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/201602209901788506

Nov 7 2017

医療ライター・山内

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