
「カーッと熱くなる」「血が頭に上がっていく感じがする」といった症状を、ほてり・のぼせと言います。顔などの血管が拡張するために起こる症状で、その背景には「体の機能を調整する自律神経の乱れ」があると考えられています。
私たちの体はストレスや気温の変化、騒音といったさまざまな刺激に対し、体の状態を一定に保とうとします。こうした体の調整を行っているのが自律神経です。「自律」という言葉からも分かるとおり、私たちの意思とは関係なく動いて、心臓や血圧、体温、胃腸などをコントロールしています。そして、この自律神経の機能が低下することで血管収縮の調整が行われにくくなり、ほてりやのぼせが起こってくるというわけです。
こうしたほてりやのぼせはとくに更年期(45歳〜55歳ぐらい)に現れることが多く、「ホットフラッシュ」と呼ばれています。
ホットフラッシュは更年期のエストロゲン(女性ホルモンのひとつ)の低下に伴って起こることから、現在、不足したホルモンを錠剤や貼り薬で補う「ホルモン補充療法(HRT)」が行われています。実際、ホットフラッシュには有効性が高いことから、第一選択薬(最初に使うことが望ましい薬)となっています。
しかし、HRTは乳がんや子宮体がんがある人などには使用できず、慎重に様子を見ながら使わないといけない人もいます。それらに該当するかどうかを確かめるため、肝機能検査、腎機能検査、乳がんや子宮体がんの検査を事前に行う必要があります。また治療を急にやめるとリバウンド(強い症状が出る)が出る可能性もあるので、やめるタイミングもしっかりと考えていくことが大切です。

ほてりやのぼせが更年期に起こっている場合、低下したホルモンを補うホルモン補充療法(HRT)が有効ですが、前述したとおり、副作用が出てしまったり、がんなどのリスクが高くて治療ができなかったりする人も少なくありません。そういう点において副作用も少なく、有効性も高い漢方薬はたいへん期待されている治療と言えるでしょう。
漢方には「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方があり、ほてりやのぼせは、このなかの「気(生命エネルギー)」が本来とは違った方向に流れる(逆行する)「気逆」、や「血(血液やそのはたらき)」が滞る「お血」によってもたらされるとされています。そのため気の流れを整えたり、血液循環をよくしたりするために、漢方薬が用いられます。
また、ほてり、のぼせといった症状だけでとらえるのではなく、漢方的な診断に基づいて、体力がある人、ない人といった体質や、ほてりやのぼせ以外の症状(イライラ、頭痛、肩こり、不眠、むくみなど)などを考慮した上で、用いられる漢方薬が決まります。
ちなみに最近ではHRTをやめる時に、リバウンドを防ぐ目的で漢方薬を使うという方法も行われています。
漢方の診察では、独特の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、ご自身の症状とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これもほてりやのぼせの原因を探るために必要な診察です。
*すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。
【監修医師 小暮敏明】