
長時間同じ作業を続けていたり、不自然な姿勢をとっていたりすると、負担がかかっている肩や首の筋肉に酸素を運ぶ血液が十分に行き届かなくなり、痛みや重苦しさを引き起こします。これがいわゆる「肩こり」で、ひどくなると肩が動かせなくなったり、頭痛や吐き気が生じたりすることもあります。
最近はパソコンに長時間向かう人が増えたために、肩こりになる人が増加。日常生活に支障を来すほど症状の重い人もいます。とくに女性は、男性よりも肩や首の筋肉が発達していないため、肩にかかる負担が大きく、肩こりになりやすいと言えます。
肩こりは肩の周辺の血液循環が悪くなったときに現れる症状ですから、腕や首を軽く回す体操やストレッチやマッサージで、固くなった筋肉をほぐしたり、温熱パックやお風呂などで肩を温めたりすると症状が和らぎます。
また肩こりにならない環境をつくることも大切です。例えば長期間同じ姿勢でいるときや根を詰めて作業をしているときは、1時間ぐらいおきに休憩をとって、軽くストレッチをするといいですし、パソコンやゲームなどで目を酷使しているときは、30分に1回ぐらいは目を休めて、肩の負担を軽減させることも大切です。
なお、40歳代より上の人で、肩こりがひどく腕が回らない、手や指がしびれる、眠れないくらい痛みが出るという場合、加齢現象によって肩関節の組織に障害や炎症が起きていたり、何らかの病気によって症状が出ている可能性もあるので、一度、整形外科で診てもらったほうがいいでしょう。
ちなみに年齢に伴って肩に症状が出てきたときに、よく「四十肩」、「五十肩」といった呼び名が使われますが、これらは正式な病名ではなく、他に診断がつかないときに便宜的に使うことが多いようです。
西洋医学では痛み止め(鎮痛薬)や炎症を取る薬(消炎薬)、筋肉の緊張をとる薬(筋弛緩薬)などを使って症状を抑えていきます。ただ、一時的にはよくなるものの、薬を止めるとぶり返してしまうなどの、問題点もあります。

漢方では患者さんの自覚症状の改善を重要視するという特徴があるため、肩こりの改善が期待できる漢方薬はたくさんあります。大きく分けると、症状が出ているときに一時的に使うものと、体質改善のために少し長めに飲むものとがあります。
肩の痛みやしびれをとるために一時的に使う漢方薬には、次のようなものがあります。
ただ、肩こりは慢性的な症状ですから、
一時的に症状を和らげても再び症状がぶり返してしまいます。
したがって漢方では、その人の体質や原因を改善して慢性症状を取ることを
目的に治療を進めることがあります。肩こりの場合では、
肩の周辺の血流障害や精神的なストレスが原因で起こることが多いので、
血液循環をよくする漢方薬、緊張を和らげる漢方薬などを服用していきます。
ちなみにこうした状態を漢方の「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方から見ると、
肩こりは、生命エネルギーである「気」がスムーズに流れていない状態や、
血液循環が悪い「お血」などによって起こる、と考えられます。
そこで、気と血に重点をおいた漢方薬が処方されます。
例えば、気の問題が原因なら気の状態を整える「柴胡剤(柴胡という生薬が含まれる漢方薬)」が、
お血が問題なら血流をよくする「駆お血剤」が用いられます。
| 「気」に問題がある場合 | 大柴胡湯(だいさいことう)・小柴胡湯(しょうさいことう) ・柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) ・柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)など |
|---|---|
| 「血」に問題がある場合 | 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) ・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・加味逍遙散(かみしょうようさん)など |
漢方の診察では、独特の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、
ご自身の症状とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、
お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも肩こりが起こる原因を探るために必要な診察です。
また、慢性的な病気の改善や体質改善を目的にする場合は、
長期にわたる服用が必要となります。忘れずに根気よく飲み続けることが、症状改善の最大の鍵となります。
*すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。
【監修医師 檜山幸孝】