悩み別漢方

胃もたれ

胃もたれのまとめ

<胃もたれとは>

胃のはたらきが弱くなっていったり、胃の消化機能をオーバーするような食べもの、飲みものが入っていたりすると、消化が遅くなり、ムカムカする、胃が重い、お腹がふくれたような感じになります。これを胃もたれと言います。

<胃もたれの治療>

漢方医学の視点

漢方で胃もたれは、「気・血・水(き・けつ・すい)」の「気」が不足している「気虚」の状態、あるいは「水」のバランスが悪くなっている「水毒」の状態と考えられています。そこで胃への血行を促して胃腸を温めることで胃の緊張を解いたり、胃に溜まった水を排出させる治療を行います。

<病院での診察>

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。月経の状態、日常生活のことなど、胃もたれとはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、おなかや舌、脈を診たりすることがありますが、いずれも薬を決めるための手がかりになりますので、重要です。

胃もたれのメカニズム

通常、食べものは、その内容によっても違いますが、1~5時間ほど胃の中にとどまって消化された後、小腸へ送られます。ところが胃のはたらきが弱くなっていったり、胃の消化機能をオーバーするような食べもの、飲みものが入っていたりすると、消化が遅くなり、胃もたれと呼ばれる状態になります。なお、「もたれる」というのは、ムカムカする、胃が重い、お腹がふくれたような感じです。
胃の消化機能を低下させる原因としては、暴飲暴食による消化不良、香辛料やアルコールなど刺激物の摂取、ストレス、タバコなどが挙げられますが、このほかに睡眠不足や生活の乱れなどの不摂生によって自律神経の機能が乱れると、やはり胃の動きが悪くなり、胃もたれを起こすことがあります。
ただ、こうした一次的な胃もたれであれば、その原因を除去することで回復しますが、いつまでも症状が続いたり、お腹が張る(腹部膨満感)、食欲不振がある、胃が痛む、痛むような胸やけなどがあるといった場合、胃がんやポリープ、潰瘍など胃や食道に病変がある(器質性)可能性もあるので、一度、検査を受けたほうがよいでしょう。

最近では、検査で胃の粘膜にただれや出血などの器質的な病変がないのにもかかわらず、さまざまな胃の症状を訴える状態が12週以上続く場合を、機能性胃腸症「FD: Functional Dyspepsia」と呼ぶようになりました。これまで慢性胃炎、胃下垂、神経性胃炎などと呼ばれていたのを一つの状態にまとめたものと考えてよいでしょう。胃もたれはFDの特徴的な症状のひとつで、そのほかに食欲不振、腹部膨満感、吐き気、胃痛、胸やけなどが挙げられます。
世界の医師たちで構成されるローマ委員会によって、機能性胃腸症は次の2つの症状に分類されています。胃もたれは「食後愁訴症候群」に含まれます。日本ではこのタイプが多いようです。原因はよく分かっていませんが、胃の機能低下、胃酸分泌の異常、ストレスなどによる胃腸障害、薬剤の影響、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染などが関係していると言われています

FDのタイプ

食後愁訴症候群
<食後に起こるもたれ感を中心としたタイプ>
胃もたれ感がある
食事をしてもすぐに満腹になる
(早期膨満感)
心窩部痛症候群
<胸から上腹部に痛みを感じるタイプ>
心窩部に痛みを感じる
心窩部にやけるような感じがある
※心窩(しんか)部はみぞおちのこと

胃もたれの薬物治療

胃もたれの治療についてですが、病気が原因であるときはそちらの治療を優先します。生活習慣の乱れによって生じる場合は、当然、タバコやアルコールを控えたり、食事の内容を工夫したり、たっぷりと睡眠をとったりするなどして、生活の改善を行っていきます。
さらに症状が治まらないときは、短期的には胃腸薬を用いることもあります。胃腸薬の種類には、胃の機能を活発にする「健胃薬」、胃や腸での消化を助ける「消化薬」、胃酸の分泌を抑える「制酸薬」、胃の粘膜を保護する「胃粘膜保護薬」などがあります。桂皮、生姜など漢方薬に配合されている生薬も健胃薬の成分として、市販の胃腸薬に含まれていることがあります。 胃腸薬はその種類によって飲む時間帯が違います。具体的には健胃薬は食事の30分前くらい前まで、消化薬は食後30分くらいまで、制酸薬、胃粘膜保護薬は食後2時間以降の空腹時や寝る前となります。処方してもらうとき、購入するときには、薬剤師や医師に服用の注意点を聞き、正しく服用することが大切です。

一方、FDの治療は、症状を抑える対症療法と生活習慣の改善の2本立てで行われます。対象療法については、心窩部痛症候群では、胃酸の分泌を調整するH2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬を服用します。

漢方薬による治療

漢方で胃もたれは、「気・血・水(き・けつ・すい)」の「気」が不足している「気虚」の状態、あるいは「水」のバランスが悪くなっている「水毒」の状態と考えられています。そこで胃への血行を促して胃腸を温めることで胃の緊張を解いたり、胃に溜まった水を排出させたりする六君子湯(リックンシトウ)が用いられます。そのほか胃の血行をよくして消化機能を改善する四君子湯(シクンシトウ)、同じく胃の血行を良くして、自律神経のバランスを抑えたり、胃酸の分泌を調整したりする安中散(アンチュウサン)が用いられることもあります。

胃もたれに使用されることが多い漢方薬

六君子湯 体力中等度以下で、胃腸が弱く疲れやすい方の胃腸虚弱・消化不良など
四君子湯 体力虚弱で、やせて疲れやすい方の胃腸虚弱・胃もたれなど
安中散 体力中等度以下で、胃痛、胃もたれがある方の胃腸虚弱・慢性胃炎など

また、漢方薬はいくつもの生薬によってできていますが、実は生薬の中には胃を健康にする健胃作用をもつ生薬がたくさんあります。漢方薬を飲んでも胃腸に負担がかかりにくい理由は、こうしした健胃作用の生薬が含まれているからです。

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。月経の状態、日常生活のことなど、胃もたれとはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、おなかや舌、脈を診たりすることがありますが、いずれも薬を決めるための手がかりになりますので、重要です。

*すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。

【監修医師 東海大学医学部専門診療学系 漢方医学准教授 新井 信 先生】

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