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産後の肥立ち

マーク産後の肥立ちのメカニズム・西洋医学の考え方

妊娠・出産という大役を果たした女性の体は、出産後、少しずつ妊娠前の状態に戻っていきます。
例えば出産直前には胃の高さにまでふくらんでいた子宮が、妊娠前のように小さくなり(子宮復古)、お産のときにできた子宮や産道の傷も徐々に治っていきます。子宮が収縮するときに後陣痛が起きたり、悪露(おろ:産褥中に膣や子宮から出る血液を伴う分泌物)が出たりしますが、これは自然なことで、日が経つにつれて少しずつ治まってきます。

いわゆる産後の肥立ちとは「お産を終えた女性が日増しに健康を回復すること」を言い、体調がなかなかもとに戻らず、さまざまな不調が続く状態を、「産後の肥立ちが悪い」と呼んでいます。
産後の代表的な不調や病気には、子宮復古不全、産褥熱(さんじょくねつ)、乳腺炎、産後精神障害(マタニティブルーなど)などが挙げられます。そのほかに痔や便秘、会陰部痛、腰痛、尿もれ、脱毛などに悩まされることも多いようです。次に示すのは、出産後の代表的なトラブルとその対処法です。

出産後の代表的なトラブルと対処法
子宮復古不全 子宮復古が遅れ、悪露がいつまでも出ている状態。 子宮収縮薬や抗生物質を服用する。
産褥熱
(さんじょくねつ)
子宮や産道の傷口から細菌が入ることで起きる感染症。38〜39度の熱が出る。最近では少なくなっている。 トイレで用を足したときに悪露を消毒したガーゼなどでキレイに拭き取るなどして、患部を清潔に保つ。抗生物質を服用する。
乳腺炎 母乳を出す乳管がつまって母乳が乳管内にたまる「急性うっ滞性乳腺炎」と、そこに細菌が入って化膿する「急性化膿性乳腺炎」がある。 うっ滞性乳腺炎では搾乳をまめにするなどして母乳の出を良くするだけでも症状がとれる。急性化膿性乳腺炎では、抗生物質を服用する。
産後精神障害
(マタニティブルーなど)
出産前後のホルモンの分泌量の急激な変化で起こる。出産による精神的な疲れや育児に対する不安などが引き金になることも。マタニティブルーのほか、産後うつ病、産後精神病などがある。 家族や両親などに協力を得ながら、育児だけに集中せず、気分転換を行うのが効果的。育児仲間を作って相談し合うのも。重い症状が続く場合は抗うつ薬や抗不安薬などを服用する。
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マーク漢方医学ではこう診る

出産後に現れるさまざまな不調とその治療法については、漢方医学の古典と言われる「金匱要略(きんきようりゃく)」に載っており、現在もこの古典をもとに漢方薬が処方されています。

金匱要略には「気(き)と血(けつ)を補う漢方薬を用いると良い」といった内容が記されています。出産するとたくさんの出血があり、極度に体力が消耗します。漢方医学ではこうした状態を気の不足や血の不足、お血(血液循環が滞った状態)ととらえ、漢方薬を用いることで、産後の肥立ちを良くしようとしたわけです。

子宮復古不全 本来なら少しずつ減っていく悪露がいつまでも子宮内に残っている状態=お血ととらえる。 お血をとるようにはたらくキュウ帰調血飲(きゅうきちょうけついん)桃核承気湯(とうかくじょうきとう)桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などの「駆お血剤」が用いられる。
マタニティブルー 体力の消耗、精神的な疲れから、気や血が不足する気虚や血虚、あるいは気がうまく回っていない気滞という状態になっているととらえる。 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)人参養栄湯(にんじんようえいとう)補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などの「補気剤」や、香蘇散(こうそさん)半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などの「理気剤(気滞を解消する作用を持つ薬)」が用いられる。

そのほか母乳の出が悪い乳汁分泌不全や、会陰部の痛み、便秘、痔といったトラブルに対しても、有効な漢方薬がいくつかあります。とくに乳汁分泌不全には有効な西洋薬が少ないため、漢方薬に期待が持たれています。

このように漢方薬は妊婦や出産後の女性の体調を改善する手段として、頼もしい存在ですが、出産後は自身の体のことだけでなく、生まれてきた赤ちゃんのことも考えなければなりません。
授乳中に漢方薬を飲むと、その成分が母乳に混じることがあります。この時期に用いる漢方薬は基本的に問題がないとされていますが、授乳中の薬の服用は、慎重にならなければいけません。自己判断で飲むのではなく、必ず担当医に相談してから使用しましょう。

【監修医師 安井敏之】

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