
妊娠初期に現れる吐き気や嘔吐(おうと)、むかつき、食欲不振などをつわり(妊娠悪阻:にんしんおそ)と言い、妊婦の50〜80パーセントに見られます。妊娠4週目ぐらいから始まる人もいれば、8週ぐらいから始まる人もいるように、症状の現れ方は個人差があります。症状の程度も人それぞれで、軽いむかつきぐらいですむ人もいれば、水分もとれないほど重い人もいます。一般的には10週ぐらいでピークを迎えた後、自然に症状が軽くなってきて、妊娠16週ぐらいまでには症状が治まります。
つわりの原因はよく分かっていませんが、妊娠による代謝やホルモンの変化に母胎が適応できずにいる状態と考えられています。また、不安や環境の変化からくるストレスなど精神的なものも関係しているようです。
つわりは苦しいものですが、多くの妊婦が経験する「妊娠の証」と考え、この時期をうまくやり過ごすことが大切です。つわりによる栄養不足、脱水に気をつけるためにも、次のようなケアをしていくと良いでしょう。
ただし、食事がとれないような重い状態が続く場合は、入院して心と体の安静をはかったり、点滴による栄養・水分補給を行ったりします。それでも回復しないときは、薬物療法が行われることもあります(保険適用外)。

妊娠中は使えない西洋薬が多いことから、漢方治療を行うことが少なくありません。
漢方医学でつわりは、水毒(すいどく:水分が体内に溜まっている状態)や気逆(きぎゃく:気の流れが逆行している状態)、気滞(きたい:気の流れが障害された状態)によって生じると考えられています。そのため小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などの利水作用のある漢方薬や、気の流れを整える漢方薬を使って症状をとっていきます。
漢方薬は白湯(さゆ)に溶かして飲んだ方がよいとされていますが、吐き気があるときは冷水で少しずつ何回かに分けて服用したほうが、飲みやすいようです。
いずれにしても、妊娠中の薬の服用は、たとえ漢方薬であっても慎重にならなければいけません。漢方薬を構成する生薬の中には妊娠時に服用しないほうがいいものもあるためです。決して自己判断では飲まず、必ず担当医に相談するようにしましょう。
【監修医師 安井敏之】