
腰は重い上半身を一手に支える、まさに「要」の部分であり、それだけにトラブルが起きやすいと言えます。「人類が二本足で立つようになって以来の宿命的な悩み」と表現することもあるほどです。
腰痛のうち何らかの検査をしても原因が分からないものを、「腰痛症」と呼んでいます。
長年、重いものを持ったり、腰を曲げたりする仕事などで腰に負担をかけてきた人、運動不足の人、年配の人などによく見られます。腰痛症の場合は、安静にしたり、お風呂や温熱の湿布などで体を温めたりすると、症状が和らぐのが特徴です。
一方、腰痛は椎間板ヘルニアや骨粗しょう症などの骨の病気、腎臓や子宮の病気で起こることがあります。いつまでも痛みが和らがない場合、病院で診てもらうことをおすすめします。
腰痛になりやすい人は腰を曲げるときは力を入れない、重いものを持ち上げるときは腰ではなく膝を曲げるというふうに、日常生活で腰痛対策を行なっていくことが大切です。
ウォーキングやラジオ体操は腹筋や背筋を鍛えられるので、腰痛対策としてはおすすめです。ただし、腰痛症でこうした腰痛対策を行なっても痛みが続く場合、病院では鎮痛薬、神経ブロック(痛みを起こす神経を麻酔でマヒさせる治療)などの治療を行うことがあります。
また、腰痛予防と言うと、「腰痛体操」がよく知られています。いろいろな方法がありますし、独自の判断で行うと腰痛がかえってひどくなる場合があるので、整形外科の医師や理学療法士などにその方法を教わるとよいでしょう。
重いものを急激に持ち上げたり、無理な体勢をとったりしたときに起こる「ぎっくり腰」は、急性の腰痛症のことです。「ぎっくり腰」になったら楽な姿勢で痛みがとれるまで安静にし、動けるようになったら一度、病院で診てもらうようにしましょう。鎮痛薬や筋肉の緊張を取る薬(筋弛緩薬)を用いて治療を行います。

漢方では腰のトラブルは、「腎」の働きの低下(「腎虚(じんきょ)」)や、「血(けつ)」や「水(すい)」の滞り、冷えなどと関係していると考えられています。腎は腎臓のことだけではなく、泌尿器や生殖器の機能なども含めた働きを指します。また血は血液とその働き、水は体液など血液以外の水分を示しています。
そしてこの腎や血、水に問題があると腰痛が起きることがあるため、腎や血、水の状態をよくする漢方薬を用いて、症状を改善していきます。
| 腎虚を改善 | 八味地黄丸(はちみじおうがん)・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)・六味丸(ろくみがん)など |
|---|---|
| お血を改善 | 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・五積散(ごしゃくさん)など |
| 冷えを改善 | 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)など |
| 水の滞りを改善 | 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)・防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)・桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)など |
年配の方は、夜中の頻尿、排尿困難、冷え、下肢の痛みなどを伴うことから、腎虚が原因で腰痛が起きると考えられ、腎虚を改善する八味地黄丸や牛車腎気丸などが用いられることが多いようです。
一方、女性に多いのは「お血」による腰痛。冷えや生理に伴うトラブル(痛みや不快症状、不順など)を併せ持っている場合がよく見られます。そのためお血をとる桃核承気湯等を用いて治療を進めていきます。
さらに、ぎっくり腰などの急性の腰痛には、筋肉の緊張をとるとされる芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)でよい効果が得られることがあります。
漢方の診察では、独特の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、腰痛とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも原因を探るために必要な診察です。
また、慢性的な病気の改善や体質改善を目的にする場合は、長期にわたる服用が必要となります。忘れずに根気よく飲み続けることが、症状改善の最大の鍵となります。もちろん、腰痛対策も併せて行っていきましょう。
*すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。
【監修医師 檜山幸孝】