漢方ビュー通信

女性ホルモンと脳と漢方薬の関係

女性ホルモンと脳と漢方薬の関係

女性にとって、月に一度訪れる月経(生理)は、それに伴う痛みや下痢だけではなく、ニキビや過食、イライラなどなどの不快症状を引き起こすこともあり、月経(生理)なんてなければいいのにと考えてしまう人も多いと思います。
ところが、いざ月経(生理)が遅れたりすると、早く来ないかな…と不安になってしまう不思議な存在ですよね。

さて、月経(生理)が原因で起こる女性の悩みはたくさんありますが、体調が整っていると、先に述べたような生理不順は起こりにくく、さらに月経(生理)中のホルモンのリズムの乱れによる不快症状も軽減していくとされています。

そこで、今回は薬剤師である筆者が、女性の体調を司る女性ホルモンについて解説します。

そもそも女性ホルモンの働きとは?

私たちのカラダには100種類以上のホルモンが存在しており、脳をはじめとしたさまざまな器官で作られています。
その中で、卵巣で作られているものに、女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロンがあります。

エストロゲンは、成長とともに分泌量が増えるホルモンで、20代にピークを迎え、40〜50代で急激に減少します。
女性らしい体型を作るように作用したり、子宮内膜を厚くしたり、肌の状態を整えたり、心を安定させたり、骨や脳、関節、血管など強くするために働きます。

プロゲステロンは、妊娠しやすい状態を作ったり、体温を上げたり、食欲を増したり、腸の働きを抑えたり、水分を溜め込んだり、眠気を促したりという働きがあります。

女性ホルモンの分泌は脳が指示を出している

女性ホルモンの分泌は脳が指示を出している

女性の体内で起こるホルモンの変動は、月経(生理)周期前半にエストロゲンの分泌が増え、後半にプロゲステロンが増える仕組みになっていて、その変動によって排卵や月経(生理)が起こります。
このホルモン変動によって、イライラや気分の落ち込み、頭痛、肌荒れ、むくみ、食欲増加、便秘などさまざまな体調の不調を感じるようになるのです。

さて、この2つのホルモンを、どのタイミングでどのくらいの量を分泌するかなどの指示を出しているのが、脳の視床下部です。
そのため、ストレスや寝不足などカラダに負担がかかると、脳は生命維持に必要な機能を優先するため、女性ホルモンの分泌指示を控えてしまうことがあります。
そうなると、生理周期の乱れ、あるいは月経(生理)が止まってしまうこともあるので、脳に負担がかからないように注意することが大事です。

脳への負荷を軽減するために

先述したように、脳は、生きていく上で優先すべきことを知っています。
その時のカラダの状態によって、女性ホルモンの分泌よりも、その他のホルモン分泌を優先することも当然起こりえます。
そのような時に、少しでも脳への負荷を軽減する手段のひとつとして、漢方薬があります。

例えば、貧血が原因で月経(生理)の異常が起きている場合には、血(けつ)を補う「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」を用いたり、ストレス過多で月経(生理)不順を起こしてしまっているときには、イライラなどを緩和してくれる「加味逍遙散(かみしょうようさん)」を用いたりします。

自律神経の乱れには漢方薬が効果的な場合も

月経(生理)は毎月のことなので、抱えている不調が一定の周期で訪れますが、安定剤や鎮痛剤などでその場しのぎしていては、いつまでも改善しません。
上記以外の症状でも、改善に期待できる漢方薬は異なりますので、女性ホルモンにまつわる不調や月経(生理)の悩みを抱えている人は、漢方薬に詳しい医師や薬剤師に相談し、自分に合ったものを処方してもらうとよいでしょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Jun 28 2022

薬剤師・大久保 愛

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