インタビュー

子どものための漢方

発育途上にある子どもの病気や不調にこそ漢方を

先生のプロフィール

医療法人社団泰慎会たんぽぽこどもクリニック 院長 石川 功治 先生

1983年、獨協医科大学医学部卒業。同年、第75回医師国家試験に合格し、大学病院・総合病院で勤務。1989年、獨協大学医学部大学院卒業、医学博士号取得。1999年、日本医師会・千葉県医師会・野田市医師会に加入。同年、医療法人社団泰慎会たんぽぽこどもクリニックを開設。

石川 功治 先生

発育途上にある子どもは、さまざまな病気にかかりやすいもの。アレルギー性の病気や乳幼児ならではの感染症のほか、「おなかの調子が悪い」「食が細い」「なんとなく元気がない」といった原因がはっきりしない不調も少なくありません。近年、そんな子どもの病気や不調に、漢方薬を活用するケースが増えてきています。
子どもにはどのように漢方治療が行われ、どのような効果が期待できるのでしょうか。
漢方を治療に取り入れている小児科医の石川功治先生にお話を伺いました。

西洋医学的な治療では改善しない病気が増加

西洋医学的な治療では改善しない病気が増加
石川先生は、どのようなきっかけで小児科医になろうと思われたのでしょうか。

私自身の病気がきっかけです。
中学3年の時に突然首のリンパ節が腫れ、埼玉県の総合病院の小児科に入院しました。いろいろ調べたのですが、原因がわからなくて、大学病院の小児科に転院。1年ほど入院生活を送って、ようやく退院できました。

長い入院生活の中で何人もの小児科医に会いましたが、小児科医の言葉や行動に救われることもあれば、傷つくこともありました。そんなとき、「僕が小児科医だったらどうするだろう」と、子どもなりに考えたんですね。「患者さんに不快な思いをさせないようにこんな風に診察したらいいんじゃないか」などと考え始めたら、楽しくて。

入院前は外交官になりたいと考えていましたが、小児科医も面白そうだと思うようになり、医学部を目指しました。

卒業後は、大学病院の小児科に勤務なさったそうですね。

大学病院には難しい症例や珍しい病気の患者さんが集まります。
その一方、大学の関連病院などで、一般外来を担当していたので、風邪やアトピー性皮膚炎といったよくある病気のお子さんも診ていました。
さまざまな経験を積むことができたと思っています。

勤務医時代は漢方薬を使うことはなかったのでしょうか。

当時は医療用漢方があまり認識されていなかったので、小児科に限らずどの診療科でも、漢方薬を使う大学病院はほとんどなかったのではないでしょうか。私自身もその頃は漢方医学のことを知りませんでした。

開業後に漢方薬を使い始めたのは、なにがきっかけだったのでしょう。

漢方薬を使うようになったのは、15年ほど前からです。開業後、患者さんが増えるにつれ、西洋薬だけでは改善しないお子さんも多くなってきたんです。
「この子たちを治す方法はないものか」と模索していた時に、漢方薬を試してみようと。
困っていたから、利用できるものは何でも利用するつもりで漢方の講習会に参加して勉強し、治療を始めました。

漢方治療の手ごたえはどうでしたか。

たとえばアトピー性皮膚炎はかなり重症でも、通常は充分な量のステロイドの塗り薬を必要な日数塗り続ければ改善しますが、どうしても治らないケースもあります。こうしたお子さんには、ステロイド薬に加え、赤みや乾燥、かゆみの状態に合わせた漢方治療を取り入れるとかなり効果が現れました。
また、同様に西洋医学的治療では改善しない難治性の副鼻腔炎も、漢方治療を並行して行うことで明らかに症状が改善しました。

恐る恐る始めた漢方治療ですが、「意外と効くんだ」という感触を得て、さまざまな病気や症状に広げ、今は多くの患者さんに使っています。

子どもにこそ漢方が向いている

子どもにこそ漢方が向いている
漢方薬は子どもにも効果があるんですね。

最近、アレルギーの病気など、西洋薬だけではなかなか治らない病気が増えています。
このような場合は西洋薬に漢方薬を加えると、症状が良くなることが少なくありません。

また、子どもは心も体も成長途上にあるので、周囲のさまざまな刺激に対して大人以上にストレスを感じやすいのです。その結果、自分でも気づかないうちに心が壊れ、それが体の不調として現れることもあります。

夜泣き、チック、どもり、癇癪、学校に行こうとするとおなかが痛くなるといった症状はその一例。こうした症状を心と体の両面から治していく上で、漢方は有用な手段となっています。

1つの症状だけでなく、全体的に体調が良くなるお子さんも多いそうですね。

漢方は全身のバランスを整えることで、症状を改善します。
たとえば、虚弱体質で「たびたびおなかが痛くなる」という訴えで受診したお子さんが漢方薬を飲むと、おなかの調子がよくなるだけでなく、元気が出て、食欲も旺盛になる。
体質を改善してくれるんですね。
私は「子どもにこそ漢方が向いている」と考えています。

子どもの場合、少しでも早く症状を楽にしてあげたいものですが、漢方薬はすぐに効果は出ないのでしょうか。

飲み続けてゆっくり体質を改善するタイプの処方もありますが、風邪やインフルエンザ、筋肉のけいれんといった「すぐに効いてほしい症状」に対応できる処方もたくさんあります。症状や体質に合う処方であれば、西洋薬と同じように短期間で効果が表れます。

漢方薬は独特のにおいや味があります。子どもは嫌がりませんか。

漢方薬というと煎じ薬のイメージがありますが、現在多くの病院で出される漢方薬は、煎じ薬を濃縮、乾燥させて顆粒状に加工した「エキス製剤」で、かなり飲みやすくなっています。

症状や体質に合っている薬は、嫌がらずに飲んでくれることが多いですが、喜んで飲むようなものではないので、赤ちゃんは少量の水で溶かして口の中に付けてあげたり、幼児や小学生はジャムやココアなど、好きな食べ物や飲み物と混ぜたり、工夫してあげてください。
飲むのを嫌がる場合は、飲むこと自体がストレスになってしまうので、無理強いはしないようにしましょう。

漢方薬に副作用はないのでしょうか。

漢方薬は自然界にある生薬を複数組み合わせたものです。すなわち、漢方薬も薬であることには変わりないので副作用がまったくゼロではありません。
服用後になにか気になる症状が出た場合には、早めに医師に相談してください。

時代とともに病気も変化、上手に漢方を活用する

時代とともに病気も変化、上手に漢方を活用する
今後、小児科で漢方が活用できる機会は増えそうですか。

子どもの病気の傾向は時代とともに変化します。
近年目立つのは、病気にメンタルがかかわっているケース。メンタルの影響が現れる時期が早まっていて、今は5歳くらいから見られます。
社会が複雑化してストレスが増えているということもあるでしょうし、お子さん自身も敏感になっているのかもしれません。

メンタルは西洋医学ではなかなか治療しづらいものですが、漢方は「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の「気」に作用して心のバランスも整えるなど、治療の手立てがあります。
また、メンタル面には親御さんとの関係がかかわっている場合も多いことから、漢方ではお母さんも一緒に治療することもあります。

気(き)・血(けつ)・水(すい)

たとえばお子さんの夜泣きがひどく、お母さんもイライラして精神的に不安定になっているときには、「母子同服」といって親子で同じ種類の漢方薬を飲むとすみやかに改善することが少なくありません。
西洋医学にはない、漢方医学ならではのアプローチと言えるでしょう。

お子さんに漢方薬を処方する際に特に気をつけていることはありますか。

適切な処方をするには患者さんのお話を聞く必要がありますが、大人と違って子どもは積極的に症状を伝えてくれません。根気よく聞き取ることが大事です。
また、子どもは経過が速いので、病状に合わせて薬を変えていくことも多々あります。

治療に漢方を採り入れている小児科医は多いのでしょうか。

漢方薬を使う小児科医は以前よりも増えていますが、それでもまだ多いとは言えません。
「漢方は難しい」と考えて一歩を踏み出せない小児科医も多いようですが、処方にはある程度のパターンがありますし、日々患者さんを診ている中でどの漢方薬が適しているのかがわかってくるものです。
一人でも多くの小児科医が、漢方に目を向けてくれることを願っています。

最後に「漢方ビュー」を見ている読者にメッセージをお願いします。

西洋医学と漢方医学は得意とする分野がそれぞれ異なります。
両方を使うことで互いの弱い部分を補い合えるだけでなく、治療の選択肢を増やすことができるのです。
お母さんたちにはもっと漢方に興味を持ってほしい。そしてお子さんの健康管理に漢方を上手に取り入れてほしいですね。

※ 掲載内容は、2020年2月取材時のものです。

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