まとめ

ニキビ(にきび)とは
ニキビ(にきび)は皮脂の過剰分泌で起こってくる皮膚の病気です。ニキビの状態から「白ニキビ」「黒ニキビ」「赤ニキビ」などと呼ぶこともあります。
ニキビ(にきび)の治療
皮膚の症状と体内の不調とは深く関わっています。したがって漢方では、ニキビだけを診て治療をするだけでなく、ニキビができる根本的な原因を探り当てて、そこを改善させていくことを目的にします。あわせてニキビそのものをよくしていく漢方薬を用いることもあります。
病院での診察
漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。ニキビとはあまり関係ないように思われることを尋ねられたり、お腹や舌、脈を診たりすることがあります。処方される薬も胃腸の薬であったり、虚弱体質を治す薬であったりと、さまざまです。
咳

ニキビとは、専門的には「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」と言って、毛穴にできた丘疹のことを指します。皮脂などの分泌物がたまった「白ニキビ」、たまった皮脂にアクネ菌と呼ばれる菌が感染して炎症が起こった「赤ニキビ」などがあります。赤ニキビは化膿しやすく、ニキビ痕が残ってしまうこともあります。

ニキビ(にきび)のメカニズム

ニキビ(にきび)のタイプ

皮膚の表面の角層が厚くなることで毛穴の入り口が狭まります。そこに皮脂などが溜まって皮疹をつくります(白ニキビ)。皮脂の外側がホコリなどに触れて、黒っぽくなることもあります(黒ニキビ)。

溜まった皮脂の周辺でアクネ菌(皮膚に存在する菌の一つ)が増殖し、炎症を起こします(赤ニキビ)。
炎症を起こした部分が化膿し、黄色味を帯びてきます。

皮脂が増えるのは、ホルモンバランスが乱れて男性ホルモンが増加するためです。生理前など、ある期間だけニキビができたり悪化したりする人もいますが、こちらもホルモンの影響と考えられています。

このほか同じ皮脂量でもニキビができてしまう人もいれば、できない人もいるように、体質なども関係していますし、生活習慣、食生活なども皮脂の分泌に影響を与えていると言われています。とくに大人になってできるニキビは、ストレスや寝不足、不規則な生活などによって生じると考えられています。 なお、「チョコレートを食べるとニキビができる」と言われますが、この点については、チョコレートとの因果関係は認められないという報告が海外から出ています。

ニキビ(にきび)の薬物治療

ニキビの西洋医学的な治療には、抗菌薬(抗生物質)の服用、非ステロイド系抗炎症外用剤や抗菌薬クリームの塗布、ケミカルピーリング(皮膚の一番外側を薬剤を使ってはがし、新しい皮膚の再生を促す治療)、ビタミンCの服用、トレチノイン治療(ビタミンAの誘導体で角質をはがし、皮膚の再生を促す治療)、圧出(皮脂を専用の器具で押し出す治療)などが挙げられます。
ただ、いずれもニキビを完治させる治療とは言い切れないのが現状です。抗菌薬の長期投与によって抗菌薬に強い耐性菌が出来てしまったり、カンジダなどの菌に感染しやすくなる、ピーリングやトレチノインでかえってシミができたといった問題も起こることもあります。また、一時的にニキビが改善されても、ニキビになりやすい体質は変わっていませんので、再発を繰り返す可能性も少なくありません。

漢方薬による治療

「皮膚は内臓を写す鏡」と言われるように、皮膚の症状と体内の不調とは深く関わっています。したがって漢方では、ニキビだけを診て治療をするだけでなく、ニキビができる根本的な原因を探り当てて、そこを改善させていくことを目的にします。あわせてニキビそのものをよくしていく漢方薬を用いることもあります。専門的には病気の根本的な原因や体質を改善して病気になりにくい体を作る治療を「本治療」、症状そのものを抑える治療を「標治療」と言います。これはニキビの治療に限らず、多くの漢方治療で共通する治療方針です。

標治療では、ニキビなどの皮膚の炎症は「熱」ととらえ、基本的にはその熱を抑えることを目的にした「清熱剤」を用います。清熱剤にもいくつかあり、その人の体質やほかの症状を加味しながら薬を選んでいきます。

ニキビ(にきび)の治療で用いることが多い漢方薬

清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
体力中等度以上で、赤ら顔で、ときにのぼせのある方のにきび、顔面・頭部の湿疹など

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
体力中等度以上で、皮膚の色が浅黒い方のにきび、慢性鼻炎など

桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
比較的体力があり、肩こり、頭重、のぼせて足冷えなどがある方のにきび、しみなど

一方、本治療では、便秘や下痢などの胃腸障害が背景にあれば、お腹の調子を整える漢方薬を、冷えや血行不良が背景にあれば体を温めて冷えをとったり、血行をよくしたりする漢方薬を用います。ニキビが化膿しやすい人は、免疫力を高めて感染しにくい体質に変える薬を処方します。
根本的な不調を改善させることから、ニキビの治療を始めると、生理不順が治ったり、お通じがよくなったり、お腹の調子が整ったりすることがしばしばあります。

漢方の診察では、独自の「四診」と呼ばれる方法がとられます。一見、ニキビとはあまり関係ないように思われることを尋ねられたり、お腹や舌、脈を診たりすることがあります。処方される薬も胃腸の薬であったり、虚弱体質を治す薬であったりと、さまざまです。
体質改善を目的にするため、長期にわたって服用することが必要で、忘れずに根気よく飲み続けることが、ニキビの根本治療の最大の鍵となります。

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師がこの診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

監修医師

あらなみクリニック
総院長
荒浪 暁彦先生
荒浪 暁彦 先生

浜松医科大学を卒業後、同大皮膚科入局。静岡市立清水病院、富士宮市立病院等を経て、現在、静岡県島田市及び千葉県船橋市皮膚科クリニック(あらなみクリニック)理事長。漢方医学は金匱会診療所、熱海アオキクリニック、北里研究所東洋医学総合研究所にて学ぶ。慶應義塾大学漢方医学センター非常勤講師、浜松医科大学東洋医学講座非常勤講師。著書に『アトピー漢方治療革命(メディアパル)』

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