生活の質を落とすことも? 意外と怖い肌の乾燥
1月の湿度は7月の3分の2程度
秋から冬にかけて起こってくる肌の乾燥。肌のうるおいの変化やカサカサ、かゆみなどの肌症状で季節の変化を感じる人も多いのではないでしょうか。
秋や冬は乾燥しやすい季節であることは、データ的に見ても間違いなさそう。例えば気象庁が公表している2015年の1年間の湿度の変化をみると、平均湿度が最も低いのは、1月。続いて3月、12月、2月となっています。なんと1月の湿度は、最も高い7月の3分の2程度しかありません。
環境に追い打ちをかけるのが、カラダの季節変化。秋や冬の発汗量や皮脂量は夏と比べて少なくなります。この時期の乾燥は、カラダと環境の両面から進んでしまうのです。
皮膚は外敵からカラダを守るバリア
ここで少し皮膚(肌)のしくみについて、おさらいをしておきましょう。
皮膚は、ウイルスや花粉といった異物の侵入を防ぐという役割を持つ、大切な器官。表皮、真皮、皮下組織の3層からなっており、表皮のいちばん外側にあるのが角層です。角層には角質細胞が10~20層ほど重なり合っていて、細胞内には天然保湿因子(MNF)が、細胞間には角質細胞間脂質(セラミドなど)が存在しています。
これらの成分が不足して肌が乾燥すると、まず、バリア機能の低下で外部の刺激を受けやすくなります。その結果、赤みや炎症が起こったり、知覚神経が刺激されて、かゆみなどの症状が出たりします。皮膚の弾力性、柔軟性も失われるので、肌が突っ張り、ちょっとしたことでも傷が付きやすくなります。
乾燥を進める加齢、ストレス、女性ホルモン低下
残念なことに、肌の保湿力は歳とともに低下します。それは皮脂の分泌が加齢とともに減るためで、女性の場合は、女性ホルモンの分泌低下による影響も少なくありません。ストレスによる自律神経バランスが乱れても、乾燥肌に偏ってしまいます。
肌が乾燥すると、小ジワができ、メイクのノリが悪くなるといった美容上のトラブルはもちろん、かゆみで仕事に集中できなくなったり、眠れなくなったりと、生活の質が下がることだってあり得る。
だからこそ、「たかが乾燥」と侮らず、適切なケアをしていくことが大切なんですね。
保湿は種類より「塗るタイミング」がカギ
秋~冬の乾燥肌対策に必要なのは、適切なスキンケア+環境の改善です。
スキンケアでは、保湿成分(表)がしっかり含まれているローションやクリームを、すり込まないようやさしく塗っていきます。入浴後の肌が柔らかいときだけでなく、乾燥が気になったらときにまめに塗るのが、保湿効果を保つコツ。
保湿成分にはセラミドやコラーゲン、ヒアルロン酸などさまざまな種類があります。使い勝手のよいものを選ぶことがポイントです。最近では、かゆみや炎症を抑える成分が含まれる製品も出ているので、購入の際は薬剤師などに相談するとよいかも。
環境の改善では、加湿器などで部屋の湿度を40~50%ぐらいに調整すること。乾燥を進める電気毛布やこたつは、できるだけ使わないか、使用を控えるようにしたいものです。
セルフケアだけでは改善できず、乾燥肌をこじらせてしまったときは、一度、専門の医師に相談することも大切ですね。
保湿剤の種類
油脂性軟膏 (白色ワセリン、亜鉛華軟膏、親水軟膏など) |
安価で刺激は少ない。べとつき感はある。 |
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ヘパリン類似物質 (ヒルドイド) |
塗りやすいが、においが気になることも。 |
尿素 (ウレパール、ケラチナミンなど) |
塗りやすいが、刺激を感じることも。 |
セラミド | 塗りやすいが、値段は高め。 |
そのほか (コラーゲン、ヒアルロン酸など) |
特徴は製品によって異なる。 |
スキンケアや環境に加えて、カラダの中からうるおいを与えるという意味では、漢方という手段も。漢方では、皮膚の乾燥は全身に栄養や酸素を送る血(けつ)の不足で生じると考えられており、血の不足などを補う補血剤などが、その人の体質などを考慮して用いられます。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
医療ライター・山内