漢方ビュー通信

食後の胃腸の不快感…理由と対策を解説

食後の胃腸の不快感…理由と対策を解説

食後の不快感──。
人と同じメニューを食べているのに、自分だけ胃がムカムカする、胃が痛む、下痢を起こしてしまうなどの経験はありませんか。
もちろん、食べ過ぎに注意することは大事ですが、不快感を覚えるのにはちゃんとした理由があります。

今回は薬剤師である筆者が、食後の不快感の理由とその対策について解説します。

食品が胃腸に違和感を与える理由

食品が胃腸に違和感を与える理由

普段なら美味しく摂れている食事でも、その日の体調や気分によって、胃腸に違和感を覚えることがあります。
その違和感の正体とは、一体何が原因なのでしょうか。カラダの中で起こっている症状を、食品別ごとに解説します。

1)コーヒー

胃粘膜には、胃酸を分泌して食べ物を“消化する働き”と、胃自らが胃酸によりダメージを負わないように、胃粘液を分泌して“保護する働き”があります。
胃の働きは、この“消化”と“保護” のバランスで保たれていますが、コーヒーなどに含まれるカフェインの過剰摂取によって、そのバランスを崩されてしまうことがあります。
つまり、カフェインを過剰に摂取すると、胃酸分泌が増え、それに伴い胃粘膜がダメージを受けることになるため、胃に違和感を覚えることになるのです。

2)アルコール

アルコールの過剰摂取は腸管に炎症を起こす恐れがあります。
また、アルコールは肝臓で解毒されますが、胆汁の生成に負担がかかるため、お腹をゆるくしてしまうことがあります。

3)牛肉など油の多いもの

例えば、焼肉を食べに行くと、翌日必ずと言っていいほど下痢を起こす人がいます。
じつは、脂肪が多い食べ物は、他の食べ物に比べて消化に時間がかかります。そのため、脂肪が多い食材を過剰摂取すると、十分に分解されないまま腸に移動してしまい、腸の蠕動運動が亢進し下痢を起こしやすくなってしまうのです。

4)辛いもの

辛い香辛料の代表に、唐辛子があります。
唐辛子にはカプサイシンという成分が含まれていて、胃の働きを助けてくれる効果があります。
しかし、これも過剰摂取することで、胃の保護を行う胃粘膜を損傷してしまうことがあります。
これは、胡椒や生姜などを摂りすぎた場合も同様です。

適切な胃腸薬の選択を!

胃腸に不調を感じた時の対処法として、胃薬に頼る人も多いのではないかと思います。
一般的に胃薬には、胃酸の分泌を抑えるもの、胃の粘膜を強化するもの、消化酵素を補うものなどがあるので、その時の症状に合わせて適したものを服用したほうがよいでしょう。
ところが、ドラッグストアなどにはいろいろな種類の胃薬があり、自身で適した薬を選ぶことはなかなか容易ではありません。
また、人によっては、合うもの合わないものがあるので、医師や薬剤師の判断を仰ぐことが必要です。

漢方薬の選択や服用の際にも同様のことが言えます。
漢方ビューの「悩み別漢方」でも、胃腸関連の対処について解説していますので、いくつか処方例を紹介します。

漢方入門!漢方薬の名前に隠された秘密を解説

六君子湯(りっくんしとう)

体力中等度以下で、胃腸が弱く食欲がなく、みぞおちがつかえ疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすい人の胃腸虚弱や消化不良などに使用される漢方薬です。
胃への血行を促して胃腸を温めることで胃の緊張を解いたり、胃に溜まった水を排出させたりする働きが期待できます。

四君子湯(しくんしとう)

体力虚弱で、やせて顔色が悪くて食欲がなく疲れやすい方の胃腸虚弱、胃もたれなどに使用される漢方薬です。
胃の血行をよくして消化機能を改善する働きに期待できます。

安中散(あんちゅうさん)

体力中等度以下で、腹部は力がなくて胃痛または腹痛、胃もたれがある方の胃腸虚弱、慢性胃炎などに使用される漢方薬です。

胃腸の不調の訴えは、お腹の張りや胃痛、吐き気がするなど、人それぞれです。
今回紹介した漢方薬以外にも、胃腸の不快症状に対して効果が期待できるものは多数あります。
ですから、処方される漢方薬もその人の体質や症状に合ったものを選ぶ必要があります。
もし、漢方薬に頼ろうと思った時は、自分で判断するのは控え、漢方に詳しい医師や薬剤師に体質や状態、他に現れている症状なども詳しく知らせた上で選んでもらうとよいでしょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/search.html

Jun 11 2019

薬剤師・大久保 愛

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