漢方ビュー通信

腹痛、下痢、腹部膨満感…何とかしたい“お腹の症状”

腹痛、下痢、腹部膨満感…何とかしたい“お腹の症状”

漢方ではお腹の状態を重視

寒い時期はお腹が冷えて痛くなったり、便が緩くなったりという人も多いのではないでしょうか。
温かい飲みものを摂るとお腹のあたりがポカポカするように、お腹(胃腸)は、食べものや飲みものの影響を受けやすい臓器といえます。

漢方医学ではお腹のことを「」と呼び、その状態をとても重視しています。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「大建中湯(だいけんちゅうとう)」など、処方名に「」という漢字がついているものは、たいていお腹の不調を整えるなどの目的を持ったものです。

漢方の診察法である「四診(ししん)」のひとつ、「切診(せっしん)」のなかには、お腹の状態をみる「腹診(ふくしん)」があります。
お腹が柔らかいか固いか、押したときに痛みがあるか(鋭い痛みか、鈍い痛みか)、抵抗感や不快感がないか、動悸がないか、チャポチャポと音がするかといったことを診ていきます。
こうした症状は、漢方の処方を決める手がかりとなります。

お腹の冷えから全身の冷えに…

お腹の冷えは、漢方でいうところの「気虚(ききょ)」や「血虚(けっきょ)」という状態を伴っていることが多いとされています。
気(き)」は目には見えない生命エネルギーのようなものを指し、一方、「血(けつ)」は全身を巡ってさまざまな組織に栄養を与える血液やその機能のこと。この気や血が不足した状態が気虚であり、血虚なのです。

お腹の冷えでは、食欲不振があったり、食後にお腹が張ったり、倦怠感が出たりすることが少なくないようです。
胃腸はエネルギーや熱のもととなる食べものを消化吸収する大切な臓器です。そこが冷えで弱ってしまうと、消化吸収機能が低下してしまうため、熱が産まれにくくなります。つまり、虚の状態を作ってしまうのです。
そのまま放っておくと全身の冷えや体調不良などにもつながります。
冷えは生活習慣だけでなく、体質によるところも大きいので一朝一夕には改善できないかもしれませんが、コツコツと対処していくことが大事です。

お腹を温めるセルフケアも実践しましょう!

お腹を温めるセルフケアも実践しましょう!

冷えに対するセルフケアの基本のキは、やはり「お腹を温めること」です。
腹巻きなどで熱を逃がさないような工夫をしたり、必要に応じてカイロなどを使ったりして温めるといいでしょう(低温やけどには注意)。
また、シャワーだけで済ませるのではなく、ゆっくりと湯船につかってカラダを温めましょう。

食事もできるだけ温かいものを摂るようにしたいものです。
寒いこの時期は、鍋料理などがいいかもしれません。諸説はありますが、コショウやトウガラシ、にんにく、ネギなどの香辛料などは、カラダを内側から温めてくれる食材といわれています。こうしたものを取り入れながらバランスのよい食事を目指しましょう。

お腹の冷えに使われる漢方薬

漢方入門!漢方薬の名前に隠された秘密を解説

冷え”という現象は西洋医学ではとらえにくく、漢方医学の得意とするところです。

先に紹介した四診(問診、聞診、望診、切診=ここに腹診が入ります)から、その人の症状・体質に合わせた漢方薬が処方されます(※)。そのため、同じお腹の冷えでも人によって処方が違うこともあります。

例えば、お腹の冷えや不調がある方の胃腸虚弱や下腹部に処方されているのは、「人参湯(にんじんとう)」や、「真武湯(しんぶとう)」、「大建中湯(だいけんちゅうとう)」、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」などです。
セルフケアだけでは対処できない、お腹の冷えで困っていたら、一度、医療機関や薬局などで相談してみるといいかもしれません。

(※)…四診をせずに処方が決まることもあります。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

参照

漢方スクエア 「冷え」に関する総論と漢方治療
漢方スクエア 消化器領域の冷えと漢方治療 その1、その2
入門漢方医学

Feb 25 2020

医療ライター・山内

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