漢方ビュー通信

「沈黙の臓器=肝臓」について知っておきたいこと

「沈黙の臓器=肝臓」について知っておきたいこと

お酒を飲む日が続いているとき、そろそろ「休肝日」を取らないと…と考えたことのある人は多いと思います。休肝日の「」とは、もちろん肝臓のこと。

肝臓には、アルコールを無毒化してくれる働きなどがありますが、痛みなどを感じる神経が通っていません。そのため、症状が現れにくく、「沈黙の臓器」とも呼ばれています。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、異変に気づいてからでは遅い肝臓について解説します。

肝臓の3つの働き

肝臓の3つの働き

肝臓の働きには、大きく3つあります。

1)代謝

消化管で、消化吸収されたタンパク質や糖、脂肪などは肝臓に運ばれます。
ここで、さまざまな酵素が働き、カラダで利用できるように変換され、血中に放出されて必要な臓器に分配したり、肝臓に蓄えられたりします。

2)解毒作用

アルコールや食品添加物、細菌、老廃物、薬物などのカラダに有害な物質を分解し、無毒化します。

3)胆汁の生成と分泌

胆汁は、脂肪の消化吸収を助ける消化液ですが、肝臓で作られています。胆汁は、胆管に分泌され、胆嚢で濃縮され、十二指腸で膵液とともに脂肪の分解を行います。

肝臓は予備能力が高く、たとえ肝機能検査で異常な数値を示し、組織が少し破壊されていたとしても、肝臓の働きは保たれているので重症化しないと自覚症状を感じにくいのです。
そして、それを放置したまま気がついた時には、肝硬変や肝がんなどの命に関わる重篤な病気に進行している場合があります。

症状が出ない脂肪肝は、重病につながることも…

症状が出ない脂肪肝は、重病につながることも…

脂肪肝とは、肝細胞の30%以上に脂肪がたまっている状態です。
もともと肝臓には、エネルギー源として脂肪を肝細胞にためる仕組みがありますが、消費エネルギーよりも作られる脂肪の方が多いと、肝細胞に脂肪がどんどん蓄積していきます。

注意したいのが、アルコールの摂り過ぎによって肝細胞に脂肪がたまってしまう「アルコール性脂肪肝」です。
これは、アルコール摂取過多により、脂肪の代謝が阻害され、脂肪が沈着している状態のことをいいます。じつは、この症状も自覚症状はほとんどありません。
そして、この症状の怖いところが、そのまま放置していると「肝炎」へと進行していくことです。
さらに、肝細胞が破壊されたり、繊維化していったり、そのままアルコールを節制できないでいると、肝硬変や肝がんへと続いていくことがあります。

しかし、症状が出にくいとされる脂肪肝でも、軽い状態であれば、生活習慣の見直しで十分改善がみられます。
まずは、飲酒を制限することが一番。そして、カロリー制限や定期的な有酸素運動、十分な睡眠などを徹底することで改善につながることが多いとされます。

ここまで、肝臓にまつわる怖い病気を解説してきました。
ですが、何より大事なのは、こういった症状が起きる前に生活習慣を見直すことです。
ついアルコールを飲み過ぎてしまうときには、精神的に安定していないことが多いと思います。
適度にリフレッシュしながら、時には漢方薬を用いるという手段も・・・
漢方では消化器系の疾患への適用以外にも、不眠や食欲不振、ストレスの原因を探ってケアすることを得意としているからです。

生活習慣の乱れから肝臓が重篤な病気へと進行しないように、早い段階から対策をとっていきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

May 19 2020

薬剤師・大久保 愛

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