カラダの中の時計?人間に備わっている体内時計の秘密
体内時計──、それは人間のカラダを司る時計といわれています。
例えば、朝自然に目が覚めたり、お腹が空いたり、そして夜は眠くなる…その理由は、カラダに備わっているこの体内時計によるものです。
私たちのカラダは、体内時計によって常に“リズム”を刻んでいます。
このリズムは非常に重要で、旅行や仕事などによる短期的なリズムの乱れならよいのですが、長期的な乱れはさまざまな疾患を招くことがあります。
今回は薬剤師である筆者が、健康にも密接に関係している体内時計について解説します。
体内時計の調整役は“強い光”
体内時計は、脳の視床下部の視交叉上核に存在し、約24時間周期のリズムを示しているとされています。(厳密にいうと、若干体内時計の方が長いリズムを持っている)
そして、体内時計のタイミングと外界のタイミングの誤差を一致させるために、同調機構を働かせるのが朝日などの“強い光”です。
仮に、朝日を浴びずに日常を過ごしていると、徐々に体内時計が遅れて夜型の生活に移り変わってしまいます。
その他にも、食事や運動もタイミングを調整する同調因子とされています。
体内時計を乱す主な原因
体内時計が乱れる大きな原因は、不規則な生活です。
起床する時間が日によって大きくずれていたり、朝食を抜いたり、就寝前にスマートフォンやパソコンなどの光を見たりしていることなどが挙げられます。
また、加齢によってもそのリズムは乱れやすくなります。年齢を重ねると、早く目が覚めやすくなるのはそのためです。
体内時計のズレはさまざまな不調の原因に…
体内時計は、カラダの機能を最大限に発揮するためにも必要なものです。
なぜなら、体内のリズムは、体温や血圧、心拍数、腸の動きなどの内分泌系、自律神経系などにも影響しているからです。
体内時計がズレている時に起こる特徴的な症状は、“寝つきの悪さ” です。
そのため、日中に眠気や頭痛を感じたり、食欲がなくなったりするような不調を感じることがあります。
このような状態が長い期間続いていると、高血圧や気管支喘息、糖尿病、心血管疾患などの症状を悪化させてしまうこともあります。
体内時計が乱れたときの対策5つ
1)起きる時間を固定し、朝日を浴びる
人間のカラダは、起床して光(朝日)を浴びて14~15時間くらい経過すると、睡眠に導くメラトニンというホルモンが分泌されます。
朝はカーテンを開けて光をしっかり浴びるようにしてみましょう。たとえ朝をゆっくり過ごせる休日でも、起きる時間の差は通常の2時間以内に収めるようにしましょう。
2)必須アミノ酸を摂る
良質な睡眠へと促すメラトニンには、必須アミノ酸のひとつであるトリプトファンが必要です。
トリプトファンが多く含まれている食材は主に、豆腐や納豆、味噌・しょうゆなどの大豆製品、そしてチーズや牛乳、ヨーグルトなどの乳製品、米などの穀類などがあります。
こういった栄養素は、日々の積み重ねが大切です。日頃から、意識しながら食事を摂るようにしましょう。
3)朝食を抜かないようにする
体内時計は、光による刺激だけではなく、摂食活動によっても整えることができるとされています。
朝食を抜いてしまう生活が当たり前になっている人は、少量だけでも構わないので、何か口にすることをおすすめします。
朝食を摂ることで、1日の摂食リズムをしっかり整えましょう。
4)就寝前に明るい光を見ない
就寝前にスマートフォンやパソコンなどの明るい光を見ていると、メラトニンの分泌を低下させ、睡眠に対して悪影響を与えてしまいます。
まずは、ベッドや布団の中に入ってから、スマートフォンなどを使用しないことから始めてみましょう。
5)医療機関に相談する
睡眠のリズムを正常に戻す際、場合によっては医師の指導のもとで睡眠薬や抗不安薬などを使用することがあります。
しかし、そういった薬に少し抵抗があるといった人には漢方薬もおすすめです。
漢方医学においては、「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方から「気」の流れをスムーズにする処方が用いられます。
漢方薬は、睡眠薬などと違い、直接的に睡眠を誘発するようなはたらきは持っていませんが、眠れない原因にアプローチすることで、自然な睡眠へ導いてくれます。
体内時計は、健康維持に必要な体内のリズムを調整してくれる大事な役割を持っています。
“朝起きて、夜寝る”といった、当たり前の生活習慣を送ることで、人間のカラダの機能は最大限に発揮されます。
そのためには、生活のリズムをしっかりと整えること──特に、現代では睡眠のリズムが乱れやすくなっています。神経を休め、睡眠の質を高める工夫をしながら、規則正しい生活リズムを目指しましょう。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
薬剤師・大久保 愛