漢方ビュー通信

仕事にならないほどの月経痛は克服できる?

仕事にならないほどの月経痛は克服できる?

月経のある女性の4人に3人が「月経痛あり」と回答

健康な状態であれば月に1回はやってくる月経(生理)。経血のわずらわしさもさることながら、多くの女性を困らせているのが、「月経痛(生理痛)」です。
女性労働協会の調査によると、16歳から49歳の女性の4分の3以上の人が、痛みの程度はさまざまですが、「月経痛がある」と回答。なかには会社を休まなければならないほど強い月経痛があると答えた女性も、とくに若い人で多くなっています。
このような場合、痛みによるツラさはもちろんのこと、月経痛によって集中力が低下して仕事のパフォーマンスが思うように上がらないことも、当人にとっては悩みの種です。

また、月経痛に関しては、社会にとっても大きな損失と考えられています。次の項で詳しく解説していきます。

月経痛で社会は約5000億円損失している!?

月経痛で社会は約5000億円損失している!?

ココロやカラダの不調で職務遂行能力が低下している状況を「プレゼンティーイズム」といいますが、経済産業省の試算によると、月経痛など月経の随伴症状による労働損失は、なんと4911億円にものぼるとのこと。
まさに月経痛は、プレゼンティーイズムをもたらす大きな要因ということです。

経産省はこれを大きな問題と捉え、女性の健康課題に対応し、働きやすい社会環境の整備を進めることを推奨しています。
ちなみに、働く女性の健康推進に関する実態調査でも、女性従業員の約半数が女性特有の健康問題で「職場で困った経験がある」と答えています。その7割が月経痛や月経不順によるものでした。

月経痛の背景に病気が隠れていないか

月経痛には大きく、原因と考えられる疾患(子宮内膜症など)がないものと、こうした疾患が背景にあるものとに分かれます。

月経痛で困っている女性が真っ先にやっておきたいことは、痛みの背景に病気が隠れていないかを婦人科で確認すること。その際、内診を行う場合もありますが、必要な検査なのできちんと受けましょう。

何らかの理由があって内診ができない場合、それを理由に受診しないのではなく、まずは医師にその旨を伝え、相談することが大切です。
その上で、原因がとくになければ器質的な疾患によらないものとして、痛みをとる治療を行っていきます。
もしも病気が見つかった場合は、その治療とともに痛みの治療を行っていきます。

月経痛にはNSAIDsや漢方薬が使われています

月経痛の治療では、一般的な痛み止めである「非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDs)」を痛みのあるときに頓服的に服用します。

そもそも、月経痛は子宮内膜にプロスタグランジンという物質が増え、これが子宮を収縮させて、子宮内膜を絞り出すことで生じると考えられています。実際、月経痛のある女性の子宮内膜や経血は、プロスタグランジンの濃度が高いことが分かっています。
NSAIDsは、このプロスタグランジンを阻害する働きを持つため、なるべく早期の服用がよいとされています。服用のタイミングについては医師や、薬剤師に相談してみましょう。

漢方薬

また、NSAIDsと違い、日常的に服用する「漢方薬」も選択肢のひとつです。
例えば、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが挙げられますが、どれでもいいという訳ではありません。
なぜなら、漢方の考え方において、月経痛は「気・血・水(き・けつ・すい)」のひとつ「血」の滞りである「瘀血(おけつ)」や、「冷え」によって起こるものとされ、その人の体質などを考慮して処方されるからです。
さらに、その時の体調や症状に合った漢方薬を処方することで、その効果をより実感できるようになるのです。

月経痛は、女性にとって月に一度訪れる、避けては通れないもの。
時と場合によって、漢方薬や西洋薬を使い分けながら、上手に付き合っていくということも考えてみましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

参考

日本産婦人科医会 月経困難症
https://www.jaog.or.jp/lecture/%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%9B%B0%E9%9B%A3%E7%97%87/

経済産業省 健康経営における女性の健康の取り組みについて
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/josei-kenkou.pdf

臨床婦人科産婦人科 70巻6号 月経痛の診断と治療
Gノート Vol.6 No.1 女性のおなか(月経痛)にも漢方!

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/search.html

May 12 2021

医療ライター・山内