漢方ビュー通信

胃腸の不調と疲労感…この関係性について

胃腸の不調と疲労感…この関係性について

お腹の調子が悪い…と同時に、だるさや疲労感、眠気、やる気の低下などを感じることはないでしょうか。
胃腸の不調は、ただでさえ痛みや吐き気、張り感、食欲の低下、便秘や下痢などの不快な症状をもたらしますが、上記のような全身的な症状も合わさると、丸一日が無駄になってしまうことも。
また、このような不調がその日だけで終わるといいのですが、長期化すると栄養の吸収も低下し、疲れが長期的に残ってしまうことも考えられます。

そこで、今回は薬剤師である筆者が、胃腸の不調と栄養の吸収、そしてカラダの疲れの関係について解説します。

胃の不調と栄養の吸収について

疲れを強く感じつつ、胃腸の不調も感じている人は、胃酸の分泌が低下しているケースが多く存在します。そもそも、加齢に伴い胃酸の分泌は低下していくものですが、胃の不調を感じるたびに制酸剤(制酸薬)を多用してしまい、消化力を落としてしまっている人も少なくありません。

一般的に、胃酸の分泌が低下すると、消化不良や胃もたれ、下痢、腹痛などの症状が現れやすくなります。また、胃酸が不足していると、胃酸により活性化されるタンパク分解酵素の活性ができずに、タンパク質の消化が困難になります。さらに、胃酸の刺激によって分泌を促される胆汁が不足すると、脂肪の吸収に支障を生じてしまいます。
その結果、食事からのタンパク質や脂質の吸収率が落ちてしまうのです。

腸の不調と栄養の吸収について

腸の調子が悪く、未消化物やウイルス、異物などが腸管から体内へと入ってしまうと慢性炎症の原因となることがあります。慢性炎症が起こると、動脈硬化や心不全、糖尿病などの生活習慣病へと繋がる恐れがあるため注意が必要です。
さらに、腸内環境が荒れてしまうと、マグネシウムや鉄の吸収が低下したり、腸内で作られるビタミンB群やビタミンKの生成が不足してしまうことも。

このように、胃や腸の働きに不調が生じているときには、食事から思ったように栄養補給ができません。ですから、まずはお肉でスタミナを!ではなく、胃腸の働きにダメージを与えないような食事が必要になります。
例えば、消化を助けるレモンや梅干しを使った料理を1品加えたり、胆汁の分泌を促したり、腸内環境を整える水溶性食物繊維(昆布、わかめ、果物、里芋、大麦など)を食べるようにすることもよいでしょう。また、基本的なことですが、“噛む回数を増やすこと”も忘れてはいけないポイントです。

胃腸の不調、元気がない時におすすめの漢方薬

漢方薬

胃腸の働きが弱っていて、且つ疲れやすい時におすすめしたいのが漢方薬です。なぜなら、漢方薬の中には、胃腸を整えながら元気をつけてくれる種類が多く存在するからです。

例えば、代表的なものに、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」や「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」、「六君子湯(りっくんしとう)」などがあります。
補中益気湯は、比較的幅広く使われますが、黄耆建中湯は腸の調子が悪い時に、六君子湯は胃の調子が悪く、元気がない時などに処方されます。
胃腸の調子が悪く、元気を取り戻そうと栄養を補給してもなかなか元に戻らないという人は、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、自分に合った処方をしてもらうとよいでしょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Mar 28 2023

薬剤師・大久保 愛

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