漢方ビュー通信

口が渇く、舌が痛い…その口腔トラブル、更年期のサインかも?

口が渇く、舌が痛い…その口腔トラブル、更年期のサインかも?

口腔トラブルと更年期

最近ちょっと口が渇く、ちゃんと歯を磨いているのに口が臭い、歯ぐきが腫れてきた…。
ミドルエイジの女性で、そんな症状が気になるようになったら、それはもしかしたら“更年期によるホルモンバランスの乱れ”が原因の口腔トラブルかもしれません。

更年期とは、卵巣の働きが徐々に低下してきて、完全にその働きを止めるまでの期間。
いわゆる閉経前後の期間を示していて、個人差はありますが、平均すると40歳半ば~50歳半ばがその期間にあたるといわれています。

更年期というと、発汗やほてり、肩こり、頭痛、うつ症状といった全身の症状が起こりやすい時期というイメージがあります。
これらの症状はいわゆる「更年期障害」と呼ばれるものですが、それ以外にも、冒頭に挙げたような口腔内の症状が出ることが、じつは少なくないようなのです。

ドライマウスで虫歯、歯周病、口臭のリスクが

ドライマウスで虫歯、歯周病、口臭のリスクが

なぜ女性ホルモンの低下が、口腔内のトラブルを起こしているのか。
まだ分かっていないところも多いようですが、“女性ホルモンの低下が唾液の分泌量の低下を招いている”ともいわれています。

唾液の分泌量が下がると、口腔内が乾燥していわゆる「ドライマウス(口腔乾燥症)」という状態に陥りがちです。ある調査では、ドライマウスを訴えるのは50代~70代の中高年者で、男女比は1対3と女性が多いことが分かりました。

唾液中には殺菌作用がある成分が含まれているため、虫歯や歯周病の予防につながりますし、唾液には歯を保護したり、再石灰化を促したりする働きもあります。
つまり、唾液が減れば、それだけ虫歯や歯周病のリスクは高まる可能性があります。さらに、虫歯や歯周病があると口臭などの問題も起こりやすくなります。

口腔トラブルを防ぐには、こまめなプラーク除去が大事。
いつもの歯磨きに加え、デンタルフロスや電動歯ブラシなどの利用もいいかもしれません。
一方、アルコール入りのマウスウォッシュは乾燥を進めやすいので、使用する前にかかりつけの歯科医などに相談したほうがよいかもしれません。

味覚障害や顎関節症、舌の痛みも

味覚障害や顎関節症、舌の痛みも

このほかに更年期との関連が指摘されている、口腔トラブルには「顎関節症」や「舌痛症」、「味覚異常」などがあります。

顎関節症とは、アゴの痛みや動かしにくさ、噛みにくさなどが起こる病気。
歯ぎしりや食いしばり、ストレス、かみ合わせの異常などが原因とされ、閉経の時期の女性に多いといわれています。

舌痛症はその名の通り、舌の先や舌の縁がヒリヒリする、ピリピリする、痛むといった症状が起こるもの。検査をしても異常が見つからない場合などに、診断されることがあります。
唾液の分泌低下やストレスなどが関係しているとされ、40代以上の女性が圧倒的に多いことが分かっています。

味覚障害は、味がまったく分からないという味覚消失のほか、濃い味しか分からない、実際の味と違う味がするといった症状などが現れます。
原因としては、亜鉛の欠乏、薬の副作用、慢性の病気、ストレスなどが挙げられます。

口腔ケア+全身のアプローチが更年期では大事

こうした口腔トラブルは、更年期の症状としてなかなか捉えにくいもの。
しかし、更年期障害を専門的に診ている女性外来などでは、こうした問題についても相談にのってくれるところがあります。

また、更年期に起こるさまざまな症状に対しては、HRT(ホルモン補充療法)や漢方薬による薬物治療が行われており、この期間を穏やかに過ごしている女性が大勢います。
漢方ビューの「女性の健康と漢方」でも、女性のココロとカラダの変化や、年代別のさまざまな不調・トラブルについて解説しています。

この先を快適に過ごすためにも、かかりつけの婦人科医や歯科医と連携して、症状の軽減を図っていくことが大切かもしれませんね。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

参照

「性ホルモンと唾液腺機能修飾」歯科学報Vol.107,No.2(2007)
「見逃していませんか?お口からのSOS」更年期と加齢のヘルスケア Vol.8,No.1(2009)

Dec 21 2018

薬剤師・大久保 愛

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