「思春期」の不調と漢方
「思春期」とは、「初経(初潮)が始まってから月経が安定するまでの期間」(日本産婦人科学会)のことで、具体的には8〜9歳ごろから17〜18歳ごろまでの時期を指します。
エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が始まり、カラダが丸みをおびてきて、胸がふくらんだり、陰毛やわき毛が生えてきたりと、大人の女性のカラダに近づいていきます。
初経を迎えるのは10〜14歳ぐらい(平均12歳6カ月)ですが、その頃はエストロゲンをつくる卵巣のはたらきが未熟なため月経周期や期間は不安定です。子宮の発育が未熟なことから月経痛が起こる場合もありますが、一般的には、初経から3年ほど経って排卵周期がみられるようになってから月経痛を自覚することのほうが多いです。
思春期の不調は、カラダの発育が未熟なために起こることが少なくありません。また、この時期の月経痛は、月経に対する不安や緊張など精神的な要素が関与していたり、子宮内膜症などの器質的な疾患がなくても起きたりする場合があります。そのため、治療には体質や症状に応じて処方される漢方薬が向いていることがあります。
思春期のカラダの変化(8〜9歳ごろから17〜18歳ごろ)
まずはチェックリストであなたの女子力を確認してみましょう。
皮下脂肪がついてカラダが丸みをおびてくる
胸がふくらんでくる
陰毛やわき毛が生えてくる
月経が始まる
思春期の代表的な病気・悩み「成熟期」の不調と漢方
思春期が終わり、更年期に入るまでの間が「成熟期」で、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が順調になり月経周期が安定してきます。
成熟期の前半(20歳前後〜30代前半)は、カラダが妊娠や出産にもっとも適した状態になります。つまり、妊娠や出産による大きなカラダの変化を経験する可能性の高い年代ともいえます。一方で、仕事、家事、育児などハードワークになりがちです。無理がきくのでつい頑張ってしまいますが、その結果、ココロやカラダの調子を崩すこともあります。なかでも過度なストレスはホルモンバランスの乱れをもたらし、不妊などの原因になるので要注意です。成熟期の後半(40代前後)になると卵巣機能は少しずつ衰えてきて、エストロゲンの分泌が少しずつ低下していきます。
成熟期は性活動が盛んなため、性感染症の予防やチェックが必要です。また子宮内膜症や子宮筋腫などにかかりやすく、子宮頸がんの発生が増える年代でもあるので、定期的な婦人科検診や子宮頸がん検診を忘れずに受けておきたいところです。
乳がん検診が勧められるのは40代以降からですが、自分で定期的に胸を触ってセルフチェックをしておくといいでしょう。
妊娠や出産、育児、仕事と忙しいこの時期ですが、更年期や老年期の健康を考えるとこの時期の体調管理はとても重要です。定期的な健康診断を受けるなど健康維持に務め、不調を放っておかないようにしましょう。西洋医学的に異常がない場合でも、カラダの不調を感じる未病の段階こそ漢方薬による治療が有効です。
成熟期のカラダの変化(20歳前後から40代前後)
女性らしい体つきになる
妊娠や出産に適した体に
成熟期の代表的な病気・悩み- 冷え症(冷え性)
- 月経前症候群
- 月経困難症
- 疲労
- 便秘
- 自律神経失調症
- 頭痛
- 不妊症
- 不育症
- つわり
- マタニティーブルー
- 妊娠高血圧症候群
- 産後の肥立ちが悪い
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 性感染症
- 子宮頸がん
- 乳がん
「更年期」の不調と漢方
閉経が起こる前後5年間、年齢的には45歳ぐらいから55歳ぐらいまでを「更年期」と呼んでいます(日本産婦人科学会)。ただ、個人差がとても大きく、40代前半から始まる人、50歳を過ぎてから始まる人などさまざまです。
卵巣のはたらきは成熟期の終わりごろから少しずつ落ちてきますが、40代後半あたりから機能低下がはっきりしてきます。卵巣機能低下とともにエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が減少します。
個人差はありますが、そこに社会的・環境的な要因、精神的な要因、加齢によるカラダの変化などが複雑に絡み合い、ホットフラッシュ、のぼせ、ほてり、発汗、イライラ、うつ症状といった更年期特有の症状をもたらします。このような症状に対してホルモン補充療法(HRT)や漢方薬による治療が有効です。
エストロゲンには骨密度を維持する、コレステロールを下げるといったはたらきもあります。そのためエストロゲン分泌が減ってしまうと、骨粗しょう症や高脂血症、動脈硬化などの病気にかかりやすくなります。健康診断を欠かさず受けるとともに、生活習慣の改善にも努めましょう。
更年期のカラダの変化(45歳ぐらいから55歳ぐらい)
白髪が増える
シワやシミが増える
体毛が濃くなる
閉経を迎える
この時期に気をつけたい代表的な病気・悩み- 冷え症(冷え性)
- 頻尿や尿漏れ
- 更年期の症状(のぼせ・ほてりなど)
- 肥満
- 糖尿病
- うつ症状
- 自律神経失調症
- 皮膚のかゆみ
- 骨粗しょう症
- 高脂血症
- 高血圧
- 心臓病
- 乳がん
- 子宮頸がん
- 子宮体がん
- 卵巣がんなど
「老年期」の不調と漢方
更年期が過ぎた60代半ば以降を「老年期」といいます。
老年期を迎えるとエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が著しく減少し、男性との差はほとんどなくなります。生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病など)、がん、骨粗しょう症などの病気にもかかりやすくなります。
このほか視力や聴力、筋力が低下してきたり、物覚えが悪くなったりします。このように一見あまりよいイメージをもたない老年期ですが、想像力や判断力、経験を元にした能力は、若い人より老年期の人の方が豊富。最近では老年期を第二の人生として前向きに過ごしている人たちも増えています。
この時期になると、持病のため何かしら病院にかかっているという人も多いでしょう。加齢に伴って現れる好ましくない変化や、カラダやココロの不調改善にも漢方薬が有効です。ただし他の薬との飲み合わせなどの問題もあるので、服用についてはかかりつけの医師や薬剤師と相談することが大事です。
老年期のカラダの変化(60代半ば以降)
白髪が増え、毛量が減る
シワやシミが増え、皮膚に弾力がなくなる
視力や聴力、筋力がおとろえる
骨がもろくなる
この時期に気をつけたい代表的な病気・悩み- 冷え症(冷え性)
- 頻尿や尿漏れ
- 更年期の症状(のぼせ・ほてりなど)
- 肥満
- 糖尿病
- うつ症状
- 自律神経失調症
- 皮膚のかゆみ
- 骨粗しょう症
- 高脂血症
- 高血圧
- 心臓病
- 乳がん
- 子宮頸がん
- 子宮体がん
- 卵巣がんなど
監修医師
麻布ミューズクリニック 院長 玉田 真由美 先生熊本大学医学部卒業。慶應義塾大学大学院医学研究科修了。
熊本大学医学部附属病院第二内科(現:血液膠原病内科)入局後、熊本大学医学部附属病院を中心に熊本県内の病院で内科診療に従事したのち、亀田総合病院附属幕張クリニックで消化器内視鏡検査の研鑚を積む。
慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御部門にて癌の代謝を中心に研究を行い学位取得。
自身の体調不良が漢方治療で改善されたことをきっかけに、慶應義塾大学漢方医学センター、自治医科大学東洋医学部門、麻布ミューズクリニックにて漢方を学び、2016年4月より麻布ミューズクリニック院長就任。自治医科大学地域医療学センター東洋医学部門非常勤講師。
医学博士・日本内科学会総合内科専門医・日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医 ・日本東洋医学会漢方専門医