冬こそ深刻!寒い季節の尿トラブルの原因と対策
冬にトイレが近い理由は?
寒いこの時期、いつもよりトイレが近く、間一髪!あるいは…。
そんな経験ありませんか?
じつは、この時期のトイレ問題、意外と悩んでいる人は少なくありません。
冬にトイレに行く回数が増える、いわゆる“頻尿傾向”になるのには、理由があるのです。
そのひとつは、汗をかかないことです。
夏と違って、この時期は運動でもしない限り、汗をかくことはありません。
尿の量は、「食事や飲みものなどで摂取した水分」から「汗や便、呼吸などで出ていく水分」を引くことで決まります。
つまり、冬は汗をかかない分だけ尿量が増え、トイレの回数が増えるというわけです。
もうひとつは、冷えに対するカラダの防衛反応。
体内に水分が多いとカラダが冷えます。それを防ぐため、カラダから水分を出そうとするのです。
このほかにも、冷えによって膀胱の筋肉が縮むのでトイレが近くなるといった要因や、内臓が冷えると熱を作る作用が落ちるため尿量が増えるといった要因も指摘されています。
昼間9回以上トイレに行くと「頻尿」
ちなみに、私たちは1日でどれくらいの尿を出しているかご存知でしょうか。
季節や水分摂取の量によっても異なりますが、健康な人の1日の尿量は1000~1500mLとされています。
一般的には、膀胱に300~500mLぐらい尿が溜まると、神経から脳に信号が送られ、尿意が起こります。
排尿回数は昼間4~6回、夜1~2回が平均的。昼間に9回以上トイレに行くことを「頻尿(昼間頻尿)」、夜間に2回以上トイレに行くことを「夜間頻尿」と呼びます。
おしっこの量は少ないのに、気になってトイレにすぐ行きたくなるという人もいるでしょう。この場合は「習慣性の神経性頻尿」の可能性があります。
「過活動膀胱」という病気が原因かも
トイレが近くなる理由は、冒頭の気温や冷えによるものだけに限りません。
膀胱や腎臓などの感染症(膀胱炎になると頻尿になることが多い)、多飲(水分の摂り過ぎ)、薬の副作用のほか、「過活動膀胱」という病気が原因で生じることもあります。
過活動膀胱とは、膀胱の筋肉がおしっこの量と関係なく収縮して、尿意が起こるという泌尿器科の病気。日本では810万人以上が患っているといわれています。
原因はまだ分かっていませんが、膀胱や尿道、子宮などを支える骨盤底筋の弱まりのほか、蓄尿や排尿には自律神経が関わっていることから、自律神経の乱れなどが関係していると考えられています。
こんな症状で困ったら病院へ
尿もれや頻尿は40代以上の約12%に見られる症状の一つ。
1日に何度もトイレに行きたくなる(トイレに行っても尿はあまり出ない)
尿意切迫感(急にトイレに行きたくなる)を覚えてトイレに間に合わず漏れてしまう
尿に勢いがない、排尿に時間がかかる
こんな症状で困っているようであれば、一度、泌尿器科医に相談してみましょう。
過活動膀胱では薬物治療もあり、尿漏れや頻尿には漢方薬も使われています。
尿もれや頻尿はQOL(生活の質)を低下させる大きな要因であることが分かっています。
水分の摂取を適度に控えるなど日常生活の対策を講じつつ、必要に応じて薬を上手に利用し、尿トラブルに悩まされない日々を送りたいものです。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
参照
日本泌尿器科学会
https://www.urol.or.jp/public/symptom/02.html
日本臨床内科医会「過活動膀胱」
http://www.japha.jp/doc/byoki/039.pdf
「尿のトラブル がまんしていませんか」関口由紀著
「臨床検査法提要」(金原出版)
医療ライター・山内