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がん治療における漢方の役割――プレスセミナーから

漢方薬

がん専門病院における漢方(東洋医学)治療

「漢方医学フォーラム」として、漢方について学ぶプレスセミナーが定期的に開催されています。
先日は、「がんと漢方」というテーマで、神奈川県立がんセンター東洋医学科の板倉英俊先生が講演されました。その内容の一部を紹介します。

同センターでは2014年に「漢方サポートセンター」を開設。それ以来、がんの患者さんに対して東洋医学的な治療を実施しています。
じつはこうした取り組みは全国的にみても珍しく、板倉先生は「がんに対して漢方はあまり使われていない」と言及。
実際、がんの専門病院のなかで、東洋医学科を開設しているのは同センターと、もう一箇所だけだといいます。

がんと共に生きるために漢方を

がん治療が進歩したことで、がんと共に生きる人たち(がんサバイバー)が増えている今、働き方や緩和ケアなどで、こうした人たちを支える仕組みが必要になってきているのも、事実。

2015年に厚生労働省がとりまとめた「がん対策加速化プラン」でも、「就労支援や緩和ケアなどを含む包括的な支援により、がんと共に生きることを可能にする社会を構築すること」を打ち出しています。
こうした背景もあり、板倉先生は次のように話されました。

「がん治療は複雑化していく一方で、長くがんと生きていく時代。だからこそ、薬物療法などで生じる副作用に対して漢方薬が有効か、あるいは安全か。当科ではこうした研究を進めていきたい」

がんと共に生きるために漢方を

同じ病気でも体質によって異なる漢方

では、現時点でがん治療における漢方はどのような位置づけなのでしょう。

現代医学では、特に薬物治療においてエビデンス(科学的根拠)を重視しています。
ところが、「残念ながら、今までがんに対して漢方が有効であることを示す研究データは出ていない」と板倉先生。
そして、その理由について「がんのステージ(進行度)や患者さんの体力、年齢を考慮せず、どんな患者さんにも同じように使っているため」と考察します。

「西洋医学は病名によって治療法が決まります。対して、漢方医学では患者さんの体力の状態や体質の違いで、同じ病気でも一人ひとり異なる薬を用いる『同病異治』という考え方があります。漢方薬はとても可能性がある薬ですが、西洋医学的な考え方で用いないほうがいい」(板倉先生)

同科では同じ胃がんの患者さんの副作用でも体力などによって漢方薬を使い分け、症状の改善や進行によって処方を変えるといいます。

「お腹をさわり、脈を診て、全身を診て、食事や生活指導なども行う。それで初めて漢方治療が完成すると思っています」(板倉先生)

同じ病気でも体質によって異なる漢方

がん治療で漢方が普及する可能性

漢方薬の効果が出るよう、多様な面からサポートしている同科のような取り組みが、今後、広がっていく可能性もあるようです。

例えば、2007年からは全国80の医学部すべてで漢方医学教育が実施され、医学生が漢方を学ぶ機会ができました。
さらに今年(2019年)になって、漢方医学の病態概念を取り入れた国際疾病分類が採択されています。

「今後は、より従来の漢方の考え方にのっとった使い方が普及するのではないでしょうか。がんの標準治療に漢方薬を組み合わせることで、患者さんのQOL(生活の質)を維持、回復ができる可能性があります」(板倉先生)

残念ながら、未だに日本人の死亡原因の1位は男女とも「がん」です。
今まで、がんの治療は抗がん剤による薬物治療のほか、手術や放射線治療などの「西洋医学」が治療の柱となり、そのような中で漢方薬は、抗がん剤の副作用、手術や放射線治療の合併症、がんの進行による心身の苦痛を和らげる手段などに用いられてきました。
板倉先生も述べたように、今後さらに、「漢方医学」と「西洋医学」のそれぞれの長所を活かした治療法が進み、より効果的ながん治療とQOLの向上が実現されることに期待が持たれています。

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