漢方ビュー通信

大病のリスクにも…今すぐ改善したい「瘀血(おけつ)」とは

大病のリスクにも…今すぐ改善したい「瘀血(おけつ)」とは

漢方医学では、血(けつ)が滞った状態

手足が冷えやすい、月経痛がひどい、便秘がある、シミが濃くなってきた…。
もしかしたらそれらの症状、「瘀血(おけつ)」が原因かもしれません。じつは、現代社会にはこの瘀血の状態になりやすい要因が数多く存在します。

瘀血とは漢方を代表する「気・血・水(き・けつ・すい)」という概念のひとつで、さまざまな不調の原因を調べるための“ものさし”になります。
健康であればこの3つの要素が体内をうまく巡っていますし、不調や病気があるときは、これらが不足したり、滞ったり、偏ったりしていると考えられています。

血(けつ)」は全身を巡って、さまざまな組織に栄養を与えるとされるもの。西洋医学でいうところの、血液とその働きにあたります。そして、その血が滞った状態瘀血と呼びます。

ちなみに、「気(き)」は目に見えない生命エネルギーのようなもので自律神経の働きに近く、「水(すい)」は血液以外の体液全般に相当し、代謝や免疫に関わっているとされています。

瘀血がリスクのトラブルはこんなに多い!

瘀血がリスクのトラブルはこんなに多い!

瘀血が関わる代表的なトラブルには、月経痛(月経困難症)月経不順月経異常(過多月経、過長月経など)月経前症候群(PMS)などがあります。
事実、漢方では昔から女性特有の月経や月経にまつわるトラブルを「血の道症」と呼んで、血のバランスを整える治療を行ってきました。

ほかに瘀血がもたらす症状・病気には、頭痛やもの忘れ、めまい、耳鳴り、肩こり、疲労、便秘、腰痛、腹部膨満感、口の乾燥、内出血、静脈瘤(静脈がこぶのように膨らんだ状態。下肢に起こりやすい)、冷えなど。さまざまな全身症状・病気が挙げられます。
ニキビや色素沈着、さめ肌、皮膚のくすみといった肌トラブルも瘀血症状のひとつです。この場合、スキンケアだけでなくカラダの内側からのケアも必要になります。

何より怖いのは、瘀血は大病のリスクにもなり得るということ。
動脈硬化や心筋梗塞、狭心症、高血圧、脳梗塞など、生命やQOL(生活の質)の低下に関わるような病気のなかには、瘀血という病態が関係していることがあります。
いずれにしても、たかが瘀血とあなどらず、改善に努めることが大事なのです。

セルフケアで行いたい瘀血改善法は3つ

交通が発達し、食生活が豊かになった現代。
ひるがえると、それはカラダを動かす機会が減り、食生活が乱れがちであることを示しています。運動不足や偏った食事は血の状態を悪くし、瘀血をもたらす大きな要因となります。そういう意味では、瘀血は現代病でもあるわけです。

瘀血を改善するために必要なのは、「食事の見直し」と「便秘の解消」、「適度の運動」の3つ。

食事では、「食物繊維が多い野菜や海藻類などをたっぷりに食べる」、「冷たい食べもの・飲みものを避ける」といったことが大事になります。
これは偏った食事の改善だけでなく、便通の解消にもつながります。
「食べる→出す」という巡りをよくして老廃物を溜めないカラダに変われば、瘀血の改善だけでなく、予防にもつながります。

運動や入浴で血液循環をよくすることも、取り組みたいケアのひとつ。
また、ストレス対策も忘れずに。ストレスや緊張は血管を収縮させて血流を悪くします。ストレスがたまってイライラしときは、思い切り深呼吸をしてみましょう。リラックスモードに切り替わります。

漢方薬も瘀血を改善する強い味方

「気(き)」の不調には漢方薬を

瘀血に対しては、「駆瘀血剤(くおけつざい)」という瘀血を改善させる漢方薬があります。

代表的な駆瘀血剤は、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」や「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などで、症状や体質などによって選ばれます。

さまざまな病気や症状に関わる瘀血は、まさに“万病の元”。
カラダが冷えるこの時期は、とくに瘀血が悪化しやすいともいわれています。
まずは瘀血を改善する生活を心がけ、それでも症状や不調が残るようであれば、一度、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみるのもよいでしょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

参照

入門漢方医学
わが家の漢方百科
漢方と診療 Vol.7 No.2 2016
産婦人科の実際 Vol.68 No.5 2019

Dec 25 2019

医療ライター・山内

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