胃腸薬は多種多様!自己判断はリスクを伴う…?
年末年始の暴飲暴食や、忙しさによる不規則な生活などで、気付かないうちにダメージを受けているカラダの器官があります。
それはズバリ、消化器系──。
もちろんストレスや冬の寒さなども影響するので、消化器系の不調を訴える人が増加する時期がまさしく今です。
そこで、頼りたくなるのがドラッグストアなどでも手に入れやすい胃腸薬。
けれど、ひとつ注意して欲しいのが、その胃腸薬で本当に自分の症状が改善されるのか、ということ。
じつは、胃腸薬にはたくさんの種類があり、症状に適さないものを選ぶとリスクが生じるものも…
そこで今回は、薬剤師である筆者が、胃腸薬の種類や、それに代わる漢方薬の可能性について解説します。
薬を選ぶ時は慎重に!
胃の不調といっても症状はさまざまです。
食前・食後に胃が痛い、ストレスで胃が痛い、寝ているときに胃が痛くなる、朝は胃が重い、お腹にガスが溜まって苦しい…など。
原因はそれぞれ異なりますが、そのような時、市販されている胃腸薬に頼る人は多いと思います。ただし、胃腸薬も薬剤のひとつ、その作用機序にも違いがありますので、選ぶ時は注意が必要です。
胃腸薬の種類について解説しますので、選ぶ際の参考にしてみてください。
<制酸剤>
胃酸を中和するため、胃酸による不調の改善に即効性があります。
ところが、原因が胃酸によるものではない時に、慢性的に服用すると、胃腸の不調を招くことがあります。
<粘膜修復剤>
胃粘膜の保護や、胃粘膜の血流量を増やし粘膜量を増やすことで、胃へのダメージを軽減するものです。
<消化剤>
消化酵素が含まれており、消化を促進します。食べ過ぎの時などに向いています。
<健胃剤>
苦味や香りに特徴のある生薬が使われています。
そのため、味覚を刺激して唾液や胃液などの分泌を促し、消化を助けるとされています。
<総合胃腸薬>
上記、4種類のうち2種類以上組み合わせたものです。
<H2ブロッカー(H2受容体拮抗剤)>
空腹時の胃酸の分泌を抑える薬です。即効性はありませんが効果は持続します。
このように、ひとえに胃腸薬といってもその効果や目的は多種多様です。
医薬品の中でも、比較的身近な胃腸薬ですが、CMで見たことがあるとか、名前を聞いたことがあるという理由で安易に選ぶことは避けましょう。
自分の胃の不調の原因を明確にした上で、医師や薬剤師に相談して選んでもらうと安心です。
症状によっては漢方薬がおすすめの場合も
漢方薬の中にも、消化を助けるものや温めて胃を整えるもの、吐き気を抑えるもの、お腹の張りを改善するもの、胃の痛みを緩和するものなど種類が多く存在します。
例えば、手足が冷えたり、疲れやすい人の胃痛や食欲不振を改善する「六君子湯(りっくんしとう)」や、胃痛や吐き気を伴うような神経性胃炎には「安中散(あんちゅうさん)」などが用いられることがあります。
しかし、漢方薬も市販の胃腸薬と同様に自己判断で選ぶことは避けましょう。
漢方の診断では、症状に適した漢方薬を決めるために、自分の体感している不調などを分析していきます。じつは、そのときの体質や状態、他に現れている症状などによって、処方される漢方薬も異なるからです。
これは、「四診」と呼ばれる独自の診察方法で、一見、自分の症状とはあまり関係ないように思われることを問診で尋ねたり、お腹や舌、脈を診たりすることがありますが、これも病気の原因を探るために必要なことなのです。
そのため、自分の訴える不調に対して、ピンポイントでの改善に期待ができるのです。
胃の不調は、精神的なものが原因であったり、冷えが原因であったりもします。体質から整える漢方薬もあるので、胃の不調が慢性化している人などは選択肢のひとつとしてみてはいかがでしょうか。
ぜひ漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみることをおすすめします。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
薬剤師・大久保 愛