漢方ビュー通信

漢方独自の考え方「気・血・水」でカラダの不調を診る

漢方」と聞くと、専門用語や漢字が難しい、敷居が高い、よく分からないなど、実際はどういうものなのか理解していない人が多いと思います。
漢方の始まりは5〜6世紀まで遡るとされ、中国から伝わった医学が発展し、日本独自の「漢方医学」へと昇華されていきました。

現在では、“漢方を学ぶ項目”は大学の医学教育カリキュラムに組み込まれており、医学生は卒業までに、漢方独特の診断法や概念、漢方薬の使い方などについて学ぶことになっています。
また、海外からも注目されているこの「漢方」は、多くの医師の関心を集めるほどまで成長しています。

今回は薬剤師である筆者が、多くの人が持つ悩みのひとつ“冷え”をテーマにしながら、漢方独自の考え方を解説します。

漢方独自の理論、「気・血・水」とは

漢方では、独自の理論に基づいて体質を診るオリジナルの“ものさし”として「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方があります。
「気・血・水」は、カラダに必要不可欠なもので、この3つの要素がうまく体内を巡ることで健康が維持されていると考えられています。
したがって、それぞれが不足したり、巡らなかったり、余分に溜まったりしたときに、体調不良を感じるとされています。

気(き)・血(けつ)・水(すい)

<気(き)とは>

カラダを動かしたり、温めたり、代謝をしたりと、生命維持のために必要なエネルギーのことです。
例えば、「気」のつく言葉として、気合いや気力、元気、気分などがあるので、イメージしやすいのではないでしょうか。
目には見えない心の状態を表すものが多いですが、「気」が充実しているとやる気に満ち溢れ、逆に巡りが悪いと、気分がイライラしたり不安になったりしやすくなります。

<血(けつ)とは>

主に血液のことを指し、全身を巡ってさまざまな組織に栄養を与えます。
「血」が不足すると、貧血はもちろんのこと、髪の毛や肌の乾燥、冷えなどを感じやすくなります。また、血の巡りが悪いと、肩こりや月経の異常などを感じるようになります。

<水(すい)とは>

血液以外の体液全般を表します。
水分代謝に関わるものなので、「水」がカラダに溜まると、むくみやめまい、頭痛、下痢、排尿障害などを起こしやすくなります。
また、水は血管やリンパ管を通るので、血の巡りが悪い場合にも水が溜まり、冷えなどの症状を引き起こしやすくなります。

冷えの原因を「気・血・水」で診る

「気・血・水」はカラダの不調の原因をはかるものさしですが、この3つの要素の状態を整えることは、冷えを改善することにも関係しています。
それは、「気・血・水」の不足、巡りが悪く滞りが生じているときに“冷え”を感じやすくなるとされているからです。

悩み別漢方の「冷え症(冷え性)」でも詳しく解説していますが、具体的には、血が足りない状態(血虚)、血が滞っている状態(お血)、水分が溜まっている状態(水毒)、気が不足している状態(気虚)などがあります。
他にも、いくつかの状態が重なって冷えが現れたり、悪化している場合もあるようです。

漢方が得意とする“冷え”の症状

冷えで悩んでいる場合、その原因を知った上で対策を取る必要があります。
冬になると手足がしもやけになる、一度冷えるとカラダが温まるまでに時間がかかる、お腹が冷えやすく下しやすい、膝から下が冷えやすいなど、症状はさまざまで原因も人それぞれです。

そこで、自分でできる対処法をとっていくのもよいですが、冷え対策は漢方薬の得意とするところなのでぜひ一考を。
前述した「気・血・水」の観点から、体質や状態、冷えに伴う他の症状などを考慮して、自分に合った漢方薬を、医師や薬剤師に相談するとよいでしょう。

また、冷えは、長い時間をかけて少しずつ進行してきた症状です。時には深刻な場合もありますので、漢方薬だけでなく、生活習慣の改善を行っていくことも大切です。

冷え解消は焦らずに、まずは自分のカラダに起きている冷えの原因を探ることが大切です。病院に行くほどでもない、と思うような症状でも、早期解決のために一度診てもらうことをおすすめします。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

Mar 24 2020

薬剤師・大久保 愛

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