漢方ビュー通信

女性を悩ます「ストレス便秘」の正体と対処法

女性を悩ます「ストレス便秘」の正体と対処法

腹痛でトイレに行くも、コロコロ便しか出ない

ストレス社会ともいえる現代社会──
多かれ少なかれ誰でもストレスを抱えていると思いますが、そのストレスで健康を概してしまわないように、ココロとカラダが発するSOSを察知することも大事です。

今回、取り上げるのは、女性(男性も!)を悩ませる「ストレス便秘」です。

そもそも便秘とは、“便通が定期的にこない”という状態。
本来なら、お通じは1日1回程度あるものですが、何らかの理由で、それが数日に1回程度に減ることがあります。長い間、大腸の中に便が溜まっているため、水分が腸から吸収され、硬い便になってしまいます。そうなると、余計に排便が困難となります。

ストレス便秘は、腸の機能が低下することで生じる便秘とは少し異なり、自律神経の乱れが関わっています。「おなかが痛くなってトイレに駆け込むけれど、コロコロとした便しか出ない」のが特徴です。

ストレスによる便秘は「過敏性腸症候群」かも

ストレスによる便秘は「過敏性腸症候群」かも

ストレスによる便秘のことを、専門的には「過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)の便秘型」といいます。
IBSとは、がんや潰瘍、炎症といった器質的な病気がないにも関わらず、便秘や下痢、腹痛、腹部の不快感、痛みが生じる病気のこと。背景に自律神経が関わっているため、ストレスが強くかかると症状が悪化し、排便によって症状が軽くなります。
ちなみに、便秘が主の便秘型、下痢が主の下痢型、両方が混在した混合型があり、便秘型は女性に多いといわれています。

自律神経の乱れによって蠕動運動が不安定に

IBS便秘型の特徴は「けいれん性便秘」です。
そもそも腸の中にある内容物(便)は、腸の蠕動運動によって胃側から肛門側へと押し出されていきます。この蠕動運動を支配しているのが自律神経です。

けいれん性便秘では、自律神経の乱れによって蠕動運動が不安定になり、便の押し出しがスムーズに行かなくなります。その結果、便が溜まってしまうのです。
ストレスがかかると、自律神経から腸へと伝わる蠕動運動の信号が強まるため、症状が悪化すると考えられています。

まずは生活習慣の改善を

まずは生活習慣の改善を

基本的にIBSでは、最初に生活習慣の改善を試みます。
便秘型の場合は、食事では納豆やヨーグルトなどの発酵食品食物繊維を多く含む食品が勧められます。定期的な運動も効果があるとされています。
睡眠や休養も十分に取るようにしましょう。

これらで症状が改善しない場合は、薬物治療が行われます。
腸の運動を整える消化管機能調整薬や、善玉菌を増やすプロバイオティクス、便の水分バランスを調整する高分子重合体などが用いられます。意外かもしれませんが、下剤は補助的に使われるだけで、メインのお薬にはなりません。

便秘や、便秘による諸症状の改善に有用な漢方薬もいくつかあります。
腹痛の改善には「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」、下腹部痛や腹部膨満感に対しては「大建中湯(だいけんちゅうとう)」など、さまざまな漢方薬が症状に応じて広く用いられています。
生活習慣の見直しで改善されないようなら、一度漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみるのもよいでしょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

参照

日本臨床内科医会
http://www.japha.jp/doc/byoki/012.pdf

日本大腸肛門病学会
http://www.coloproctology.gr.jp/aboutsickness/archives/6

日本消化器病学会ガイドライン
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs.html

Apr 28 2020

医療ライター・山内

関連コンテンツ