漢方ビュー通信

“理想の便”を理解して、毎日の健康状態をチェックしよう

“理想の便”を理解して、毎日の健康状態をチェックしよう

お腹の調子を確認するのに最適なのは、“便の状態”を見ることです。
しかし、正常な便の色や硬さ、匂いなど、他人と比べにくいものなので、一体どの状態が理想なのか把握できていない人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、理想の便と悪い便について解説します。
それを踏まえ、毎日の便チェックを行い、自分の健康状態を測るバロメーターにしてみてください。

理想の便の状態を理解する

理想の便の状態を理解する

便の色や形、におい、量などをチェックすることで、胃腸の状態や、ふだんの食事が胃腸に負担をかけていないかなどを把握することができます。

<色>

便の色の黄色っぽい色は、ビリルビンという物質からきています。ビリルビンは血中のヘモグロビンが分解されたもので、酸性だと黄色から茶色に、アルカリ性だと黒っぽくなる特徴をもっています。
また、腸内で善玉菌が優位だと酸性に傾き、便は黄色っぽい茶色になります。逆に腸内が悪玉菌優位だとアルカリ性に傾き、便は黒っぽくなります。

<形>

通常、便の水分量は、便全体の75〜80%とされていて、スルッと出てくるバナナ状の便をイメージするとよいでしょう。これは、善玉菌優位の状態で、理想の便の硬さ、水分量といえます。

次に、水分量が少なく60%程度のときには、腸内に便が長期間滞在し悪玉菌が優位になっている状態となります。硬くコロコロしている特徴があり、腸の動きに異常があったり、直腸の感受性が低下していることなどが考えられます。便秘気味で残便感を感じることもあります。

そして、水分量が85%程度と多いと、形状は細く柔らかくヒョロヒョロしています。便器にベトリとこびりつきやすい特徴があります。これは、脂肪分が多い、消化不良、自律神経の乱れ、お腹の筋力の低下などで、悪玉菌が優位だと考えられます。残便感を感じやすく、一度で出ずに何度も便意を感じることがあります。

ちなみに、水分量が90%以上の水下痢も悪玉菌優位が考えられ、感染症や暴飲暴食、ストレスなどの原因が考えられます。突発的に我慢できない便意を感じることがあります。

<におい>

食べたものに大きく影響されます。そのため、食事の内容が胃腸に負担をかけていないかチェックするためには、便自体の匂いと合わせて、おならの匂いチェックも行うとよいでしょう。

腸内では1日に400〜1200㎖のガスが作られ、その多くが便と一緒に排泄されます。
このガスの成分は、飲み込んだ空気や腸内細菌が食べ物を分解する時に作り出された無臭の水素やメタンなどがほとんどです。そのため、おならがクサイときには、腸内に負担のかかる食事を摂っていたことが考えられます。
また、たんぱく質や高脂肪食品が多いと、それを分解する時にアンモニアやインドール、硫化水素などが発生し、いわゆるクサイ便、クサイおならの原因になります。

<量>

1日100〜200g程度の排便が一般的です。
便の成分は、約8割が水分で、残りの2割が食べカスや腸内細菌、剥がれた腸粘膜が等分量存在しているとされています。水分や食物繊維、たんぱく質、脂肪の摂取量、お腹の筋肉量、ストレス状態などの状況が整っていると正常な便になります。

腸内環境は、免疫を保つため、感情を安定させるため、栄養の消化吸収をするためにも整えておくべきものです。
便秘や下痢の症状のときに、下剤や下痢止めなどを使用して一時しのぎをするのではなく、その原因を毎日の便の状態から把握し対処することが大切です。
そして、生活習慣の改善だけではなかなかよくならない場合は、腸の不調の原因を見極め、漢方薬で対策をとることもおすすめです。

漢方薬

漢方薬の中には、便秘や下痢、お腹の張りから胃痛までさまざまな不調にピンポイントで改善を促してくれるものがあります。しかし、漢方薬の服用に際して理解しておかなければならないのは、個々の体質、その時の体調や症状に合わせて、処方される漢方薬が異なるということ。
漢方薬の種類は数多くありますので、最適な服用を心がけるためにも、自分の便の状態、そしてカラダの状態を把握しながら、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

May 12 2020

薬剤師・大久保 愛

関連コンテンツ