梅雨の時期にも注意したい「熱中症」
梅雨になると、食べ物が傷みやすくなったり、カビが繁殖しやすくなったり、虫が増えたりと、煩わしいことが増えてしまいます。
ですが、それ以上に気をつけてほしいのが、“熱中症”。
じつは、熱中症リスクが極めて高いとされるのが、梅雨の時期になります。
そこで今回は、薬剤師である筆者が、梅雨の時期の熱中症について解説します。
熱中症はどのようにして起こる?
熱中症とは、「暑熱環境によって生じるカラダの適応障害」の総称で、カラダの中の熱がうまく発散できず、そのままこもってしまうことで引き起こります。
本来、人間のカラダは暑さを感じると、皮膚を流れる血液の量を多くして熱を冷まそうとしたり、発汗することで熱を放出したりします。
しかし、湿度が高い状態や気温が高い状態が続いていると大量に発汗してしまい、そのバランスが崩れてしまいます。すると、カラダの中から水分と電解質が失われ、血流や筋肉にまで影響してしまう恐れがあります。
このような体温調節機能に不調をきたしやすい人のタイプとしては、睡眠不足や脱水気味、高血糖状態、腸内環境が悪化しているなどが挙げられます。
熱中症初期の症状としては、めまいや立ちくらみ、失神、呼吸回数の増加など(血管が拡張するため血圧の低下や脳血流量の低下による)、そして唇のしびれや筋肉痛、こむら返り、筋肉のけいれんなど(大汗をかいて電解質が乱れることから筋肉に異常をきたす)があります。
次の段階になると、電解質と水分の両方の補給が間に合わずに脱水状態となり、頭痛や吐き気、嘔吐、虚脱感などを感じてしまうことがあります。
梅雨の時期にも熱中症が多い理由
熱中症に注意する時期として、真夏はもちろんですが梅雨の時期も注意が必要です。
真夏は、カラダが暑さに慣れているので、体温の上昇を感じて汗をかき始めるタイミングが早くなります。しかし、梅雨の時期には、まだカラダが暑さに慣れていないことに加え、湿度が高く、汗をかいたとしても、その汗が蒸発できずに熱がこもりやすくなります。
そのため、真夏に限らず、梅雨の時期にも熱中症に気をつけなければなりません。
日常生活における熱中症対策
熱中症は、屋外だけでなく、屋内でもかかる危険性があります。
正しい予防法や対策を知り、ふだんから気をつけておくことが大切です。
こまめに水分補給する
年齢とともに、喉の渇きに気づきにくくなることがあります。
水分が失われすぎてからでは遅いので、こまめな水分補給を心がけましょう。
汗を拭きすぎない
カラダの体温調節は、汗が蒸発することでも行われています。汗を拭きすぎないことも大切です。
室内の湿度を70%以下、室温を28度以下にする
エアコンや扇風機などを上手く使用しましょう。部屋の風通しを良くすることもポイントです。
特に、密室で高温多湿の環境は避けるようにしましょう。
熱中症は、誰にでも起こりうる症状です。
上記以外にも、暑さで弱っているカラダを休ませたり、漢方薬で「水(すい)」の巡りを改善させたりすることで、さらに対策はできると思います。
最近では、「新しい生活様式」でマスク着用に慣れつつある私たちですが、それによるリスクも考えられます。マスクを着けることによって、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがあります。
したがって、高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあります。シーンによって一時的にマスクを外したり、水分補給もしましょう。
熱中症は、命に関わることもあります。油断せずに、しっかりと対策をとるようにしましょう。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
薬剤師・大久保 愛