漢方ビュー通信

新型コロナウイルス感染症に漢方は有効か?

新型コロナウイルス感染症に漢方は有効か?

いまだ決定的な治療薬がない新型コロナウイルス

2019年11月に「原因不明のウイルス性肺炎」として、中国の武漢市で見つかった新型コロナウイルス。2020年3月にはWHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的大流行)を宣言しました。

今もなお、収束の目処がたっていない新型コロナウイルス感染症ですが、その大きな理由のひとつに、「いまだ決定的な治療薬がない」ということが挙げられます。
ただその一方で、既存の薬が有効であることが明らかになり、重症化を食い止めたり、症状を軽減させたりしているのも事実です。

そのようななか、「日経メディカル」本年1月14日の記事に、「COVID-19※で存在感高まる漢方製剤と副作用」という記事がアップされました。
※新型コロナウイルス感染症のこと

「漢方薬を活用する意義が大きい」と医師

記事では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴って、日本感染症学会のウェブサイトに新型コロナウイルス感染症に対する漢方治療の考え方が掲載されるなど、漢方が「評価されている面もある」と指摘。
さらに、記者が取材した医師は、「新型コロナウイルス感染症の可能性はあっても、すぐに処方できる西洋薬は限られる」が、風邪の経過や症状に応じて漢方薬を処方できるため、「COVID-19の流行で、以前よりも風邪診療に漢方薬を活用する意義が大きくなった印象がある」とコメントしています。

金沢医科大学臨床感染症学の飯沼由嗣教授は同学会のウェブサイトにメッセージを寄せ、新型コロナウイルスが最初に見つかった中国では、生薬に対する治療(漢方治療)が診療ガイドラインに掲載されているとした上で、エビデンス(科学的な有効性)は十分ではないものの、「漢方製剤は期待できる薬剤」と述べています。

漢方薬

漢方薬は、感染症の治療対象になる!?

また、ウェブサイトには金沢大学附属病院漢方医学科の小川恵子特任准教授が、日本における新型コロナウイルス感染症の漢方治療の考え方を投稿。中国の診療ガイドラインを参考にしつつ、日本の漢方に置き換えてさまざまな処方例を紹介しています。

ほかにも、中医学と西洋医学の併用によるコロナ肺炎治療の有用性について記した中国の論文に触れ、西洋医学単独よりも、中医学との併用のほうが随伴症状の喪失率やCT画像改善率などで有意に高く、重症化率が有意に低かったことを明らかにしています。
興味がある人は論文をぜひご覧ください。

今から100年前のスペイン風邪でも…

その論文の冒頭で小川特任准教授は、「抗生物質もワクチンもなかった時代、日本の伝統医学である漢方の主要な治療対象は感染症」と述べています。

確かに、今から100年ほど前に世界的な猛威をふるったスペイン風邪では、世界で1億人が、そして日本では38万人が亡くなったとされています。その一方で、多くの日本人の命を救ったのが漢方だともいわれています。

現在、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンに期待が高まっていますが、治療のひとつとして漢方の有効性が示されるような研究結果が待たれます。

漢方入門!漢方薬の名前に隠された秘密を解説

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

参考

日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/202101/568639.html?n_cid=nbpnmo_mled_ranking0116c

日本感染症学会
https://www.kansensho.or.jp/modules/news/index.php?content_id=140

小川医師の論文
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_kanpou_0319.pdf

漢方スクエア
https://www.kampo-s.jp/web_magazine/back_number/277/index-277.htm

感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA02.html

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/search.html

Mar 2 2021

医療ライター・山内

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