座りっぱなしの生活と冷えで、痔のリスクがアップ!?
かゆみ、痛み、残便感がある人は要注意
自宅などで仕事をするリモート生活が始まって、約1年。
出社していたときは、プリンターまで印刷物を取りに行ったり、コーヒーブレイクをしたりと、何かしら“動いて”いましたが、自宅で仕事となるとそれほど動く用事はなく、気がついたら朝から晩までパソコンの前で座りっぱなしということも。
そんな毎日が、思いも寄らないカラダのあるパーツに負荷をかけているかもしれません。
そのパーツとは、ずばり「肛門」です。
肛門の代表的な病気といえば痔ですが、じつはこの痔を発症する原因のひとつが、長時間の座りっぱなしによるものとされています。
肛門のあたりがかゆかったり痛かったりする、排便時に違和感がある、残便感がある…。
こんな症状に心当たりがある人は痔の可能性も。早めの対処が大切です。
痔の2大要因は排便問題と血流低下
痔とは、肛門の周囲の組織にできた病気の総称のことで、「痔核(いぼ痔)」と「裂孔(切れ痔)」、「痔瘻(じろう)」の3タイプがあります。
このうちもっとも患者数が多いのが痔核。直腸や肛門の静脈がうっ血して膨らんだ状態をいいます。ちなみに、直腸と肛門のつなぎ目より内側にできるものを内痔核、外側にできるものを外痔核といいます。
じつは、大腸内視鏡を受けると高い割合で見つかるほど、痔はメジャーな病気だそう。だからこそ、日ごろから気を付けなければならないともいえるでしょう。
痔ができてしまう2大要因は、排便問題(便秘)と血流の低下。
例えば、便秘があると排便時にトイレで強くいきまなければなりません。すると腹圧が上がって、肛門の細い血管がうっ血します。これが繰り返されることで痔核ができます。
また、座りっぱなしだと肛門周囲はうっ血した状態が続くことになり、痔核を悪化させてしまいます。
うっ血という意味では、下半身の冷えも問題になります。
つまり、冬のリモート生活こそ痔に気を付けなければならないのです。
進行すると手術が必要なことも…
痔核のレベルは、「痔核があるが、外に出ない(Ⅰ度)」「排便時に痔核が外に出るが、排便後に元に戻る(Ⅱ度)」「排便時に痔核が外に出るが、指で押し込めば戻る(Ⅲ度)」「痔核が常に肛門の外に出たまま、押し込んでも戻せない(Ⅳ度)」の4段階あります。
治療は、Ⅰ度やⅡ度であれば生活習慣の改善(後述)と軟膏や坐薬による薬物療法など。ただ、それも痛みや出血などの症状がない場合は様子をみるだけで、日常生活に支障が出てきたときに初めて検討されます。
一方、Ⅲ度以上で症状が強く出るようになると、手術が必要となることもあります。
痔の治療では、漢方薬を合わせて用いられることがあります。
例えば、痔の原因となる便秘やうっ血を改善するために、乙字湯(おつじとう)や大柴胡湯(だいさいことう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)などが用いられることがあります。
生活習慣の改善をできるところから
痔の治療では、生活習慣の改善が大事。
続けていくことで痔の改善だけでなく、悪化予防や再発予防にもつながります。
まず改めたいのは、座りっぱなしの生活。
ちょこちょこと用事を作って立ち上がることで、お尻の負担が軽減されます。定期的にカラダを動かすことも大切です。
冷えもよくないので、膝掛けやレッグウォーマーなどで下半身の保温を。入浴も有効です。
便秘気味の人は、便をスムーズに出せるよう水分や食物繊維をしっかりとることを心がけて。
便座に長く座り続けるのもリスクになる場合があるので、排便はできるだけ短時間ですませるよう、便意がくるまでトイレに座らないなどの工夫も大事でしょう。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
参考
肛門疾患(痔核、痔瘻、裂肛)診療ガイドライン
https://www.coloproctology.gr.jp/uploads/files/journal/komonshinryo2014_2.pdf
医療ライター・山内