「実証」と「虚証」を知って健康管理に役立てよう
同じ病気でも人によって症状の出方が違う
同じ病気を患っても、人によって症状の出方や強さが違ったりします。
日常的な病気である風邪を例にとってみても、ある人は高熱が出たけれど、別の人は微熱で済んだりしますし、咳がひどい人もいれば、喉の痛みが強く出る人もいます。
もちろん、風邪の原因となるウイルスの種類の違いもあるのでしょうが、やはり一人ひとりの体質の違いが、症状の現れ方を変えていることもあるといえます。
個々のこうした違いを重視し、着目するのが、“漢方(の考え方)”。
具体的には、症状の出方が強い状態を「実証(じっしょう)」、弱い状態を「虚証(きょしょう)」と捉えて、それぞれにあった治療を行っていくことが少なくありません。
ちなみに、「証」というのは「その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の出方などの個人差)を表すもの」で、本人が訴える症状や、体格などの要素から判別します。
筋肉質で肌つやがよく、便秘気味…「実証」のタイプ
症状の現れ方は、病気への抵抗力の強さで変わってきます。
実証は、体力があって、筋肉質でがっちりしている。血色がよくて、肌つやがよい。声は大きくて太い。胃腸が強くて食欲が旺盛な一方で、便秘気味。暑がり…といった特徴があります。
月経痛が強い、イライラする、お腹が張っている、風邪やインフルエンザにかかると高熱が出て節々が痛くなるなどの症状は、まさに実証の人に生じやすいと考えられています。
ちなみに、一般的に子どもの頃は実証であることが多く、高齢になるほど虚証に傾いていくことが知られています。
やせていて寒がり、胃腸が弱い…「虚証」のタイプ
では、虚証はどうかというと、体力がなくて、弱々しい。細くて華奢(きゃしゃ)、顔色が悪くて、肌が荒れやすい。細くて、小さな声。胃腸が弱くて、下痢をしやすい。寒がり…といった特徴があります。
漢方に詳しい専門家がよく例えに出すのが、大正ロマンの美人画で一世風靡した画家、竹久夢二が描く絵によく出てくる女性です。線が細くて色白、どことなくはかない感じの女性です(興味がある方は、ネットなどで調べてみてくださいね)。
虚証の人がよく訴えるのが、「疲れやすさ」や「冷え」です。また、胃腸が弱いので、食欲不振や胃もたれ、腹痛、下痢などが起こりやすいとのことです。
季節の変わり目による気候の変化や、ストレス、不摂生に弱く、こうした状況になると体調を崩しやすいといったことも挙げられます。
なお、虚証は単に体質的なものだけでなく、病気を患った後や病気そのものによってもたらされることもあります。
体質を重視する漢方ならではの養生法
これまでみてきた「実証」・「虚証」は、あくまでもその人が持つ体質であり、善し悪しはありません。また、「実証」と「虚証」は明確に分けられるものでもなく、前述したように状況によって証が変わることもあります。
ただ、こうした証を知っておくことは自身の健康管理に役立ちます。
例えば、虚証の人は一見、病気になりやすいというイメージがあります。しかし、一病息災ではありませんが、日々の生活や体調管理に気を配って、カラダの小さなSOSにも対処できるため、案外、大きな病気を患うリスクが低いといわれています。
反対に、実証の人は自分の体力を過信しがちで、その結果、無理をして大病を患うケースもあるようです。何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。無理をしないよう務めることが大事、というわけです。
このように、証を考慮したライフスタイルは、体質を重視する“漢方ならではの養生法”、ともいえるかもしれません。
※証に関係なく、症状などから判断して漢方薬を処方するケースもあります。
参考
入門漢方医学』(日本東洋医学会学術教育委員会編集)南江堂
『総合診療』Vol.28 No.12 私のイチオシ処方
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
こちらも参考に!
漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/clinic医療ライター・山内