漢方ビュー通信

秋こそ大事、冬に備える「冷え対策」

冬を万全な体調で過ごすため秋の体調管理は大事

長かった猛暑の夏が終わり、ちょっとほっとしてきた今日この頃。暑くも、寒くもないこの時期は、夏バテで落ちた体力を回復させたいところです。
何より、秋は暑い夏から寒い冬に向かう移行時期でもあります。今きちんと体調を整えておくことで、これからやってくる冬を万全な体調で乗り越えることができるともいえるでしょう。
そう、秋の体調管理はとても大事なのです。

そこで今回は、秋の時期に行っておくべき“冷え”対策について考えてみたいと思います。

カラダや手足の一部が冷たい状態が「冷え」

新型コロナウイルスで発熱、体温が注目されていますが(多くの施設のエントランスにはサーモグラフィが設置されていますよね)、冷えとはこうした体温とは別の、「カラダや手足の一部が冷たい感覚」のようなものをいいます。
実際に体温が低くても、冷えているという実感がなければ、冷えとはいいません。

ちなみに漢方は中国を発祥の地としていますが、興味深いことに「冷え症」は日本独自(オリジナル)の言い方だそうです(冷えという考え方は中国にも存在しています)。

冷えの病態は年齢などによっても異なります。
例えば、30代以降の男女に多くて最も頻度が高いのが、「足先から腰まで下半身が冷えるタイプ」で、この年代ではそのほかにも、内臓(主に胃腸)が冷える「内臓冷え症」もみられます。
一方、手や足が冷える、いわゆる「末端冷え症」は、やせていてダイエットを繰り返すような10~20代の女性に多いタイプ。高齢者や一部の若い人、病気などで体力を消耗している人は、「全身が冷え」の傾向あるようです。
また、こうした冷えはひとつではなく、重なっていることもあります。

むくみがある冷えは「水」の異常が原因?

漢方には、診断の際に用いる独自の〝ものさし〟に、「気・血・水(き・けつ・すい)」というものがあります(※)。
気は生命エネルギーのようなもの、血は血液とその働き、そして水は血液以外の水分を指しますが、このいずれの状態が悪くても、冷えを起こします。

気血水

例えば、気の異常による冷えは、メンタルやストレス、ココロの病などが関わっていることがあり、血の異常による冷えは、貧血瘀血(おけつ:血が滞っている状態)を伴うことが多く、生理の不調を訴える女性に多く見られます。
水の異常による冷えは、水分の蓄積が多すぎたり、一部にまとまって偏在していたりすることが原因とされています。むくみがあって冷えている場合、まさに水の異常が引き起こしている冷えといえるでしょう。

※気血水という概念を用いないで診療するケースもあります。

胃腸を整える食事、全身の運動や全身浴を

こうした冷えを解決するには、まずは生活習慣の改善が大事です。
まず試みたいのが、「胃腸を整えること」です。夏の間、冷たいものや飲みものばかり摂っていた人は、胃腸が冷えている恐れが。それが冷えをもたらしている可能性があります。

焼き肉やウナギ、香辛料たっぷりの料理などのようなハードな食事ではなく、胃腸にやさしい食事を心がけましょう。アルコールはカラダを温めそうなイメージがありますが、血管を開いて熱を放出してしまうので、結果的に冷えを助長してしまいます。
運動や入浴も効果的です。運動ではストレッチやラジオ体操などの全身を使った運動が、入浴も半身浴より全身浴のほうが勧められます。

自律神経の乱れには漢方薬が効果的な場合も

こうした生活習慣の改善を心がけても冷えがとれないときは、漢方薬などを利用する手もあります。
冷えの状態や特徴によって処方される漢方薬はさまざまですが、例えば、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)・人参養栄湯(にんじんようえいとう)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)・温経湯(うんけいとう)・加味逍遙散(かみしょうようさん)・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)などがあります。

冷え治療は漢方の得意分野です。体質や原因によって、処方される漢方薬は異なりますので、服用する時は必ず漢方薬に詳しい医師や薬剤師のアドバイスに沿うようにしましょう。
秋のうちにこうした習慣をしっかりつけ、必要に応じて漢方薬を使いながら、冷えにくいカラダを作っていきましょう。

参考

週刊日本医事新報 2015.12.12「『冷え』の東西医学による診断と治療」

『冷え症改善ブック』(南雲久美子著)

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Sep 13 2022

医療ライター・山内

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