漢方ビュー通信

意外と知らない“赤ら顔”「酒さ」という病気とは?

じつは原因不明の「皮膚トラブル」

酒さ(酒皶・しゅさ)」という皮膚トラブルをご存知でしょうか。名前ぐらいは知っているという人もいるかもしれません。
酒さとは、顔に赤みや毛細血管の拡張、ほてり感、肌あれ、ニキビ、かゆみ、乾燥などがみられる慢性炎症性疾患をいいます。いわゆる「赤ら顔」のことです。

最近では、20歳前後から50歳くらいまでの女性に増えているといわれ、洗顔料やスキンケア用品でヒリヒリするなどの症状が出ることもあるため、悩みを抱えている人も少なくないようです。

気温差や香辛料、紫外線などで悪化する

この酒さについて『尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017』で紹介されているところによると、原因はわかっていないものの、紫外線や外気温の急激な変化、刺激のある食べ物(主に香辛料)やアルコールの摂取で悪化することがわかっています。
また別の資料によると、ストレスがきっかけで発症することもあるようです。

日常生活での問題以外では、ステロイドの塗り薬や降圧薬、界面活性剤などの要因でも生じることが知られていますし、更年期のホットフラッシュや甲状腺の病気、膠原病といった病気が原因で生じるという報告もあります。

酒さに伴う諸症には漢方薬を使うことも

酒さに関しては、原因がわかっていないだけでなく、治療法も確立されていません。健康保険で認められている薬も、今のところありません。
漢方薬に関しては、「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」や「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」、「温清飲(うんせいいん)」、「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」、「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」、「白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)」などの漢方薬を肌荒れ、ニキビ、かゆみ、湿疹などに使うことがあります。
ただ、今のところガイドラインでは他の西洋薬と同様に「推奨する」ところまでには至っていません。今後の報告が待たれるところです。

漢方薬

ちなみに、漢方の考え方で酒さは、熱を持っている状態と捉えて、熱を冷ますことを目的とした清熱剤と呼ばれるタイプの漢方薬を用いることが少なくないようです。また、血液循環が滞った状態を示す「瘀血(おけつ)」や、貧血状態を示す「血虚(けっきょ)」なども考慮して、体質に応じて用いる漢方薬が変わります。
個々の体質や状態によって処方が異なりますので、漢方に詳しい医師や薬剤師、皮膚科医に相談することが大事です。

酒さの改善には生活を見直す養生が重要

治療薬が確立していない酒さでは、ライフスタイルの改善、つまり養生の部分が大事になります。先に挙げた原因となるようなことはできるだけ控えます。
具体的には、紫外線に対しては日焼け止めなどで対応し、低刺激の洗顔料やスキンケア用品を使います。香辛料やアルコールはできるだけ控える、できるだけストレスを溜めない生活をする、といったことが大事になります。

ストレスといえば、過度に酒さを気にしないことも重要です。スキンケアにがんばりすぎて、かえって悪化するという例もあるようなので、あまり深刻にならずに生活を送るメンタルも必要かもしれませんね。

参考

『BEAUTY』Vol.3 No.4 美容皮膚科と漢方

日本皮膚科学会外ガイドライン『尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017』
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/acne_guideline2017.pdf

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Dec 6 2022

医療ライター・山内

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