漢方ビュー通信

冬の不調は大敵!「気虚」対策のための漢方薬

漢方医学の概念のひとつである「気・血・水(き・けつ・すい)」は、不調の原因を探るための“ものさし”──、どの要素もカラダにとって欠かせないものであり、過不足なく体内を巡ることによって健康が維持されていると考えます。

私たちの住む地球は、常に気候の変化や環境の変動があります。それに対して私たちは食べ物や生活リズム、習慣などを変えて適応しようとしています。しかし、この適応の過程で「気・血・水」のバランスが乱れると、さまざまな不調を感じやすくなります。

そこで、今回は薬剤師である筆者が、寒い季節に不足するとつらい思いをする「気」について解説します。

「気」の具体的な働きは5つ

それでは、「気」にはどのような働きがあるのか、以下にあげていきます。

1)血液などの流れを促す、推動(すいどう)と呼ばれる働き
2)カラダを温める、温煦(おんく)と呼ばれる働き
3)出血や汗、尿などが過剰にならないように抑える、固摂(こせつ)と呼ばれる働き
4)エネルギー代謝や新陳代謝に関わる、気化と呼ばれる働き
5)免疫機能に関わる、防御と呼ばれる働き

これらの働きは、元気で過ごすためにはどれも欠かせないものだということがわかります。そのため、気が不足する「気虚(ききょ)」の状態になると、つらい症状が多く現れやすくなります。

冬の「気虚」は大問題!?

「気虚」の代表的な症状に、疲れやすく、やる気がなくなってしまうことがあげられます。
また、冬は気温も下がり、空気も乾燥するので、ウイルスや病原体にとって最適な環境になるので、夏よりも感染力が強くなってしまいます。

すると、先述したように、気が不足していると防御機能が低下しているため、風邪を引くなど体調を崩しやすくなります。また、推動や温煦の働きも低下しているため、手先や足先まで冷えを感じたり、低体温になってしまうことも考えられます。
さらに、年末年始に伴うイベントなどで外出や外食の機会が増えるので、体力はもちろんカロリーの高い食事を消化吸収できる胃腸の働きが必要になります。ところが、固摂や気化の働きが低下しているため、だるさを感じやすく、消化器系のトラブルも起こしやすく、そして、太りやすくなってしまう恐れもあります。

このように、冬の環境下で気虚に悩むということは、“大問題”ということがわかりますね。

気虚対策におすすめの漢方薬

「気」を補うためには、食事の中でタンパク質やビタミンB群、ミネラルをバランスよく摂り、精製糖やアルコールを控えめにすることです。また、冬の時期に減りがちな運動量を増やしたり、十分な睡眠を取ったりすることなども気虚対策としては大事なことです。

漢方薬

ですが、日常生活の中でこれらすべてを実行することは、なかなか難しいことも分かります。
そこで、漢方薬を活用して生活習慣の乱れをサポートしつつ、気虚の改善を図ってみてはいかがでしょうか。
気虚の対策となる代表的な漢方薬に「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」があります。他にも、「気」を補いながら消化をサポートする「六君子湯(りっくんしとう)」や、ストレスケアをしながら「気」を補う「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」などもあります。

このように、「気」を補う漢方薬は多く存在しますので、病気とは思えないちょっとした症状でも軽視しないで、冬の不調を感じたら漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみましょう。これから本格的に寒さも厳しくなり、慌ただしい年末年始もやってきます。生活習慣を見つめ直しながら、早め早めの対策を取っていきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Jan 10 2024

薬剤師・大久保 愛

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