男性が気をつけたい病気
現代において、男性の多くは何らかの仕事を持ち、収入を得ています。仕事で多忙なことから、なかなか自身のカラダについて客観的に見ることができずにいます。また、月経による体調の変化で健康状態を知ることができる女性と違い、男性は健康のバロメーターがないため、日々の体調の変化を知ることもなかなかできません。
しかし、30代を過ぎたら自身の健康に対して関心を持ち、ケアをしていくことが大事です。とくに最近では、30代、40代の健康状態が、がんや認知症などの発症率にも影響を及ぼすことが報告されています。元気で楽しい老後を過ごしたいのであれば、若いときのケアが重要になってくるのです。
そこで、男性特有の病気に限らず、特に気をつけたい、男性に起こりやすい病気を紹介します。
男性が気をつけたい病気
前立腺肥大・前立腺がん・ED(性機能障害・勃起障害)・精巣がん・AGA(男性型脱毛症)など
男性に多い傾向のある病気肺がん・胃がん・大腸がん・食道がん・膀胱がん・アルコール性肝障害・痛風など
厚生労働省「患者調査」より
生活習慣病
第一に気をつけたいのは、暴飲・暴食による肥満や高血圧、脂質異常症、痛風(高尿酸血症)、糖尿病などの生活習慣病です。朝食抜き、昼はファストフードなどのハンバーガー、夜は居酒屋で飲食。あるいは深夜に帰宅してそれから夕食……といった生活では、百害あって一利もありません。
肥満の中で、とくに男性に多い内臓脂肪型肥満は、脂肪細胞から血圧や血糖値を上げる悪玉のサイトカインが分泌されます。そのため他の生活習慣病を招き、動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、脳血管疾患(脳出血や脳梗塞など)につながる危険性があります。実際、こうした致命的な病気の発症率は、年齢が若いケースでみると男性のほうが多くなっています。
仕事関係や仲間との付き合いで、この様な生活習慣を変えることが難しいのであれば、食事には野菜や良質なタンパク質を含む料理を選び、揚げものや脂肪分が多いものは控える、深夜に食事をとらないといったことを心がけることが大事です。もちろん、定期的な運動も大事です。
健康管理の上で重要なバロメーターになるのは体重です。毎日、決まった時間に体重を測り、いつもより体重が増えていたら食事の量を減らし、変わらなかったら通常の食事をとるなどのルールを実践することで、生活習慣病の予防が可能です。 また、「朝立ち」もカラダの健康を知るバロメーターの一つと言われています。ある調査によると、生活習慣病がある人では朝立ちなどの勃起をしにくいことが示されています。
ストレスとうつ
上司からの無理難題、出世競争、ノルマ……、仕事でさまざまなストレスを受ける男性。うつ病の罹患率の男女比は、1.6倍で女性のほうが多いものの、自殺率では男性が女性の約2倍とうつに弱い性別ともいえるのです。
また、男性ホルモンの値が低いとうつになりやすく、ストレスの影響を受けやすい自律神経の活動も、男性では30歳を過ぎると落ちてくることが分かってきています。男性の場合、ストレスによる体調不良を感じていても、なかなかそれを認めないため、結果的に症状の悪化を招くこともあります。また「男らしさ」を意識することで、弱みを見せられずにうつ病を発症するケースもあります。
適度なストレスはココロとカラダに対してプラスに働きますが、それよりも強いストレスや、持続するストレスがあると、さまざまな健康問題の発端となります。
例えば、通常は交感神経と副交感神経のバランスが取れていますが、それが乱れて交感神経が有意になっている状態が続くと、頭痛、肩こり、不眠、食欲不振、下痢、便秘、イライラといった自律神経失調症の症状が起こるようになります。また、ぜんそく、心筋梗塞・狭心症、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群(IBS)などのストレス病や、うつ病へと進んでしまうおそれもあります。
現代社会においてストレスを回避することはできません。まずはストレスを感じたら、休息をしっかりとり、ココロとカラダを休めること。また、自身なりのストレス解消法を用意することが大事です。酒も少量であれば問題ありませんが、飲み過ぎるとかえってストレスになります。適度な飲酒を心がけましょう。
がん
国立がん研究センターの報告によると、ほとんどのがんで男性のほうが女性よりかかりやすいことが分かっています。男性の場合、40歳以上では胃がんや大腸がん、肝臓がんにかかる人が多く、70歳を超えると、前立腺がんと肺がんの割合が増加します。
がんのなかには早期発見、早期治療により完治できるものもありますし、完治には至らなくても長生きできるケースも増えています。まずは、年に1回は人間ドックや健康診断のがん検診を受け、早期発見につとめましょう。
朝食は必ずとって、1日のリズムをつくる
野菜(食物繊維)を中心にした食事で腸を元気に保つ
亜鉛(牡蛎やレバー、牛肉に豊富に含まれる)などのミネラルをしっかりとる
毎日体重を測って、健康のバロメーターにする
ストレス解消法をみつけ、ストレスを感じたら早めに休息をとる
睡眠はしっかりとる
運動を習慣づける
がん検診を年に1回、必ず受ける
「朝立ち」はカラダの健康を知る、バロメーターの一つ。しっかりチェックする
男性が気をつけたい症状
職業や仕事内容でも、気をつけたい健康問題が異なります。以下にその職業や仕事内容別に気をつけたいポイントを取り上げました。
加齢によって減少するのは、テストステロンとデヒドロエピアンドロステロンの2つです。それに伴い、以下のような症状が出てくることもあります。
職業・仕事内容別、男性が気をつけたい症状
営業職
- 排尿障害、便秘トイレに行くタイミングがずれる
- 栄養障害食事が規則正しくとれず、ファストフードで済ませてしまう
- 自律神経の失調室外と室内の温度差の影響
- 腰痛重いカバンをいつも同じ側で持つ傾向がある
- ストレス営業成績やノルマを意識してしまう
- 肝機能障害付き合いで酒を飲む機会が多い
デスクワーク系
- 腰痛同じ姿勢でずっと座っているため
- 視力障害パソコンを長時間使用する
- 肥満をはじめとする生活習慣病運動不足になりがちなため
肉体労働系
- 熱中症屋外での仕事の場合は要注意
- 疲労労働そのものによるものだけでなく、汗をかくことで必要な電解質が失われて疲れやすくなる
- 肝機能障害水分を控えて、アルコールを飲む傾向がある
監修医師
順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授順天堂医院総合診療科
漢方先端臨床医学 小林 弘幸 先生
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。