足のむくみやだるさ、「下肢静脈瘤」かも?
足のむくみやだるさに加え、足の血管が盛り上がっているように見える──
このような症状が現れているとしたら、それは「下肢静脈瘤」という病気かもしれません。
人それぞれ症状の現れ方は違いますが、足のだるさが取れない、しつこいむくみに悩まされている、足がつりやすいなどのサインがあります。
今回は、薬剤師である筆者が、血管疾患のひとつである「下肢静脈瘤」について解説します。
動脈と静脈について
人の血管には、動脈と静脈があります。
動脈は心臓から全身に酸素や栄養を勢いよく運ぶ働きがあり、静脈には全身から出てくる老廃物や二酸化炭素を回収する働きがあります。
まずは、それらの血管の特徴をみていきましょう。
動脈には、心臓からの強い圧がかかるので、血管壁に負荷がかかります。
また、糖尿病や脂質異常、加齢などで動脈が硬化し、組織が弱くなると血管の一部が膨らむ「動脈瘤」ができるなどの異常を感じることがあります。
動脈の疾患は、命に関わるものが多い特徴があります。
一方、静脈では、動脈のように血管にそれほど圧がかかりません。そのため、動脈と比べると血管壁は薄い造りになっています。
そして静脈を流れる血液は、筋肉の力を利用したり、逆流を防ぐ弁に助けられながらカラダを巡り、心臓に戻ってくるのです。
下肢静脈瘤は身近な血管疾患
下肢静脈瘤とは、足の血管(静脈)の逆流防止弁が壊れることで起こります。その結果、血液が逆流して溜まり、静脈が“こぶ” のように膨れてしまう症状になります。
特に、立ち仕事や長時間の座り仕事をしている人、妊娠や出産を経験した女性、高齢者の人などに多く見られます。
他に、深部静脈血栓症 (エコノミークラス症候群)の後遺症として起こることもあります。
汚れた血液が足に溜まるため、むくみやだるさを感じることが多いです。
さらに、足がつりやすくなったり、かゆみが出ることもあります。
また、下肢静脈瘤は良性の病気ですので、生命を脅かす危険はありませんが、血管がボコボコと浮いて見えてくることもありますので、女性にとっては美容的に悩むケースもあります。
下肢静脈瘤の予防と対策
下肢静脈瘤は良性の病気とはいえ、重症化すると湿疹や潰瘍、出血を起こすこともあります。
そのため、しっかりと予防と対策をしておきたいもの。
まず、基本となる予防法としては、長時間同じ姿勢(立ち続けたり、座りっぱなし)でいるのを避けましょう。そして、着圧ストッキングを履いたり、こまめなマッサージをすること、足を少し上にあげて休ませるようにすることも効果的です。
それでは、より具体的な方法も紹介します。
エクササイズで予防
筋肉を刺激したり、足の血行を改善することが静脈瘤の予防となります。
- 仰向けになった状態で、手足を天井に向けてブルブルと30秒程度揺さぶります。
これを2セット行います。 - 壁に手をつきながら膝を曲げないようにして立ち、つま先の上げ下げを30回行います。
これを3セット行います。 - 入浴中に、足の指を“グー・チョキ・パー”と20回繰り返します。
次に、漢方薬による対策を紹介します。
漢方医学では、静脈瘤は血行が悪くなっている「瘀血(おけつ)」の状態と考えます。
漢方薬の中には、この瘀血を改善するのに効果的なものが存在します。
また、静脈瘤の症状に伴う、むくみやかゆみなどにも細やかに対応することができます。漢方に詳しい医師や薬剤師に相談し、自分に合った漢方薬を試してみましょう。
下肢静脈瘤は、足にむくみやだるさを感じる以外にも、皮膚が黒っぽく色素沈着し始めたり、皮膚が硬くなったりすることがあります。
放置するとどんどん悪化していく可能性があるので、早めに対策を取るようにしましょう。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
こちらも参考に!
漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/clinic薬剤師・大久保 愛