漢方ビュー通信

痛風は“痛い”だけじゃない!深刻な病気につながる恐れも…

痛風は“痛い”だけじゃない!深刻な病気につながる恐れも…

「痛風」という病名の由来は、「風に吹かれただけでも痛むから」とされています。
ところが、名前は聞いたことがあるけど、どんな病気かよく知らないという人も多いようです。

痛風持ちの人の会話では、頻繁に食事制限についての話題になります。
「あん肝を食べたらダメだな…」
「最初の一杯のビールは諦めよう…」など。
ところが、このような食べ物の制限は序の口で、痛風はその痛みの先に、深刻な病気につながってしまうこともあるのです。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、痛風について解説します。

痛風の原因は「尿酸」

痛風の原因は「尿酸」

痛風は、体内でつくられる「尿酸」が作用するものなので、まずはこの尿酸について説明します。

尿酸は、食べ物に含まれていたり、カラダでつくられるプリン体(プリン環という構造式をもつ物質の総称)が代謝されたものです。
尿酸は腎臓から排泄されますが、うまく排泄されないとそのまま増加し、血清尿酸値が7.0mg/dlを超えるときに結晶化して、足の指先や関節、腎臓などに炎症を引き起こします。
この時に感じる激しい痛みが痛風です。

尿酸は、食事や体質、年齢、ストレスなどさまざまな原因で体内に溜まってしまいます。
ところが、女性の場合、エストロゲン(女性ホルモン)が尿酸を排泄する働きをもつため、閉経までは発症率が低いと考えられています。
なので、女性よりも男性、特に20代以上の人に発症しやすいとされています。

尿酸がたまりやすいタイプとは

尿酸がたまりやすいタイプとは

では、どのような人が尿酸がたまりやすいのか、具体的にみていきましょう。

肥満タイプ

肥満体質の場合、尿酸の排泄機能が低下します。
また、肥満の原因となる甘い飲食物や動物性の食材も尿酸を増やします。

偏食タイプ

お酒をよく飲む人は注意です。
ビールを気にしている人も多いですが、蒸留酒だとしてもアルコールは代謝される過程で尿酸となります。
また、食べ物では、あん肝や白子、ウニ、レバー、明太子などが有名ですが、煮干しにもプリン体が多く含まれています。例えば、煮干しのスープなど動物性タンパク質から取った出汁にもプリン体は多いので、ラーメンでスープを飲み干してしまう人などは注意が必要です。

他にも、腎機能が低下している人は、尿酸がうまく排泄できないため、体内の尿酸が増えてしまいます。また、脱水気味になっているときにも尿酸値が上がりますので、水分をこまめに取る意識が大切です。

痛風からつながる病気に注意

痛風の状態を放置していると、高血圧や高脂血症、糖尿病、尿路結石、肥満などの病気につながる可能性があります。さらに悪化すると、腎不全や心筋梗塞、脳梗塞など重篤な病気に発展することもあります。
このように、痛風は多くの生活習慣病と密接な関係にあるので、早い段階で生活習慣の改善(食事内容や睡眠、適度な運動など)を行うようにしましょう。

急性期(症状が急に現れる時期)は、西洋薬の服用が必要です。
その後、尿酸値が安定してきた場合や、少し症状が和らいできたときには、肥満症の改善などで「漢方薬」を用いることもあります。
いずれにしても、食事の見直しや根本的な体質改善が重要なカギとなりますので、尿酸値は高いけども痛風にはなっていない人は、特に気をつけていきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

Apr 14 2020

薬剤師・大久保 愛

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