漢方ビュー通信

今さら聞けない「感染症」について

今さら聞けない「感染症」について

病原体が起こす病気の総称が“感染症”

昨年12月に端を発した新型コロナウイルス感染症の拡大。
あらためて感染症とはどんなものなのか、まとめてみました。

感染症とは、ウイルス細菌寄生虫などの病原体がカラダの中に入ったことで、症状(咳や熱、下痢など)が起こる病気の総称です。
代表的な感染症でいうと、インフルエンザやかぜ、結核、風疹、はしかなど。数年前に日本でも感染者が出たことで注目された、蚊が媒介してうつるジカ熱やデング熱、ノロウイルスやサルモネラ菌などによる食中毒も、感染症です。

ちなみに、新型コロナウイルスについては、流行が始まった当初は「新型コロナウイルス肺炎」と呼ばれていましたが、今は肺炎以外にもさまざまな症状が起こることが分かってきたため、「新型コロナウイルス感染症」という呼び方をするところが増えています。

感染症というくくりではありませんが、肝がんや子宮頸がんは、肝炎ウイルスとHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染で起こることがあります。

病原体が起こす病気の総称が“感染症”

同じ病原体でも症状が軽い人と重い人がいる

インフルエンザにかかった際、自分は症状が軽かったけれど、周りの人は症状が重かった――。
そんな経験をしたことがある人も多いと思います。
それは感染のしやすさや、感染後の症状の現れ方には個人差があるからです。

AMR(薬剤耐性)リファレンスセンターのウエブサイトによると、同じ病原体に感染しても、症状が出る場合と出ない場合があり、それは病原体の強さ(感染力)と、わたしたちに備わった防御する力(抵抗力)のバランスで決まる、とされています。

糖尿病などの慢性疾患がある人や、一部の薬物治療(抗がん剤など)を受けている人、高齢の人は、他の人より病原体に感染しやすく、また感染した後に発症、重症化しやすいといわれていますが、それはまさに抵抗力が他の人よりも低下していることが、ひとつの要因となっています。

呼吸器感染症の感染ルートは主に3つ

呼吸器感染症の感染ルートは主に3つ

感染症にもいろいろありますが、そのうち、気管支や肺から感染が起こるものを「呼吸器感染症」といいます。鼻水、鼻づまり、咳、痰、のどの痛み、倦怠感などの症状が表れ、原因となる病原体の9割以上がウイルスによるものです。

呼吸器感染症にかからないために大事なのは、その病原体の感染ルートを知って、その道を閉ざす感染対策を適切に行うこと、につきます。
呼吸器感染症の感染ルートには大きく「空気感染」「飛沫感染」「接触感染」があります。

空気感染

空気中を漂う病原体や付着したホコリなどの微粒子を吸い込むことによって起こる感染。
結核菌やはしか、水ぼうそうのウイルスなど。

飛沫感染

咳やくしゃみ、会話などによって飛び散った飛沫(しぶき)を吸い込むことで起こる感染。
インフルエンザウイルスや、かぜのウイルス(ライノウイルス、コロナウイルスが多い)、マイコプラズマなど。

接触感染

感染者や感染源に触れた手を介して感染が起こるもの。
とびひ(伝染性膿痂疹)や破傷風など。

感染予防のキホンは手洗いと咳エチケット

感染予防のキホンは手洗いと咳エチケット

感染症にかかるリスクをゼロにすることはできませんが、適切な対策を取ることでリスクを減らすことは可能です。

厚生労働省などが感染症対策のキホンとして紹介しているのは、手洗いと、マスクの着用を含む咳エチケットです。
手洗いは接触感染予防、マスクの着用は接触感染(病原体などが付いた手をうっかり口に持っていくことを防ぐ)と、飛沫感染予防になります。アルコールによる手指消毒も、接触感染を予防します。

インフルエンザの場合は抗インフルエンザ薬が用いられることが多いですが、呼吸器感染症にかかったときは、症状を抑える治療が中心になります。
かぜのひき始めに「葛根湯(かっこんとう)」というイメージがあるように、漢方薬が有用なこともあります。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

参照

厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593493.pdf

AMR臨床リファレンスセンター
http://amr.ncgm.go.jp/

国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/

漢方・サイエンス・ビジュアル・レビュー

Jun 9 2020

医療ライター・山内

関連コンテンツ