乾燥の季節に始まる肌荒れとその対策
環境の変化で進む「乾燥肌」
冷たく乾いた外気に、エアコンの暖房…この季節に注意したいのが「乾燥肌」です。
肌の乾燥といえば、小じわやカサつきで化粧のノリが悪いなど、どうしても美容面に目が向きがちですが、影響はそれだけではありません。
肌には、ホコリやウイルスなどをはじめとする、外からの病原体や刺激物が体内に侵入しないようにする、“バリア機能”が備わっていますが、肌が乾燥するとそのバリア機能が低下してしまうため、病原体や刺激物が入り込みやすくなります。
それが、赤み(炎症)やかゆみの原因となり、集中力の低下やイライラ、不眠などにつながることもあります。
さらに今年は、マスクによる肌ダメージで、乾燥が進む可能性も…
早めに対策を始めた方がよいかもしれません。
乾燥肌のしくみって?
そもそも、乾燥肌とはどのような状態なのでしょうか。
わたしたちの肌(皮膚)は、「表皮」、「真皮」、「皮下組織」という3層で成り立っています。
普段“肌”と呼んでいるのは表皮にあたる部分で、ここにバリア機能がある角質層があります。
角質層は角質細胞からできていて、細胞内にはアミノ酸や尿酸などでできた潤いのもと「天然保湿因子(NMF)」が存在しています。また、角質細胞の間は、セラミドやコレステロールなどでできた潤い成分「細胞間脂質」で満たされています。
本来は、このNMFと細胞間脂質が肌からの水分蒸発を防いでくれていますが、こうした潤い成分が減って角質層にすき間が生まれたのが、乾燥肌。そのすき間から水分が蒸発することで、乾燥がさらに進むという悪循環に陥ります。
保湿ケアで大事なこととは
先述した悪循環を断つには、日々の保湿ケアが欠かせません。
保湿ケアとは、スキンケア用品に含まれる保湿成分を用いた肌の手入れのこと。
保湿成分には、ヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチン、グリセリンなどの“肌の表面に水分を溜めるもの”と、セラミドやワセリンなどの“水分の蒸発を抑えるもの”があります。
大事なのは、これらを正しい順番で使うこと。
最初に“水分を溜めるもの”を使って肌の表面に水分を補充し、その上から“蒸発を抑えるもの”でフタをする。これで効果的に潤いが保てるとされています。
全身の乾燥を予防する保湿ケアは、風呂上がりが効果的。
ただし、そのタイミングが重要で、入浴後10分以内にケアを済ませることが望ましいことがわかっています。
乾燥してかゆみが強い湿疹や皮膚炎には漢方も
年を重ねると、この肌の潤い成分を閉じ込める機能も低下していきます。
そういう状態のときに起こりやすいのが、乾燥による皮膚のかゆみや皮膚炎です。
冬の乾いた外気と皮脂の欠乏、発汗の低下などが合わさって生じる皮膚の症状で、かゆみが強いのが特徴です。
この皮膚のかゆみや湿疹、皮膚炎などには、外用薬とともに、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、消風散(しょうふうさん)、当帰飲子(とうきいんし)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、真武湯(しんぶとう)などの漢方薬が用いられます。
それぞれ、皮膚の症状に加え、睡眠障害、精神不安など合わせ持つ症状や、体格、表情などをもとに、その人に適した漢方薬が処方されます。
保湿ケアをしても乾燥による肌荒れや、乾燥によるかゆみが続くような場合は、一度、皮膚科などで相談することをお勧めします。なお、漢方薬は医薬品ですので自己判断で選ぶのではなく、医師の診察や薬剤師に相談のうえ、服用するようにしましょう。
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
医療ライター・山内