漢方ビュー通信

離婚をすると脳卒中になりやすい?

離婚をすると脳卒中になりやすい?

「離別・死別」は1.26倍発病リスクが高い

夫がいると具合が悪くなる――。
「夫源病」という言葉が使われるようになって久しい今日この頃ですが、実はそれとはまったく逆の結果がこのほど明らかに。男女にかかわらず、離別や死別をした人は、そうでない人に比べて脳卒中にかかりやすくなるのだとか。
この驚くべき(?)結果は、国立がん研究センターや大阪大学などのグループが行っている共同研究、「JPHC研究(多目的コホート研究)」のなかで明らかになったもの。
岩手県や茨城県、長崎県、沖縄県など9県のある地域に住む40歳~69歳の男女(いずれも研究を始める5年前には結婚(配偶者と同居)をしていた人)約5万人を、研究開始時から平均約15年間の間に「配偶者と離別・死別した人(約5000人)」と、「そのまま同居を継続している人(約4万5000人)」に分けて、それぞれの脳卒中発症のリスクを調べました。ちなみにこういう研究は日本で初めてのこと。

脳卒中のタイプでは出血性のものが多い

脳卒中のタイプでは出血性のものが多い

研究期間中に脳卒中を発症した人は2134人。婚姻関係のあり・なしで比較したところ、「離別・死別した人」のうち脳卒中を発症した人は、「継続している人」の1.26倍も高いことが分かりました。
さらに、今回の調査では脳卒中のタイプと発症リスクの関係についても検証。
脳卒中にはいくつかタイプがあり、脳血管が詰まったり狭まったりして血流が悪くなる「脳梗塞」と、脳の小さな血管が破れて出血する「脳出血」、脳のまわりを覆うくも膜にある太い血管が破れて出血する「くも膜下出血」に分かれます。
その結果、脳梗塞の発症リスクは、男女とも「離別・死別した人」のほうが「継続している人」の1.16倍、出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血)も男性で1.48倍、女性で1.35倍高くなっていました。

心理的ストレスと飲酒量の増加が原因?

心理的ストレスと飲酒量の増加が原因?

調査の結果を受けてJPHCスタディでは、「配偶者を失うと飲酒量が増えたり、野菜やくだものの摂取が減ったりするような変化があることが報告されている」、「心理的ストレスレベルが上昇し、生活を楽しめなくなる傾向にあることも示されている」といった、これまでの研究の結果をもとに、「婚姻状況の変化により起こるさまざまな変化が脳卒中発症リスクを上昇させているのではないか」と分析しています。
出血性脳卒中が増えたのは、動脈硬化が原因でジワジワと起こる梗塞よりもむしろ、血圧が急に上がることで起こる出血性のほうが、ストレスや飲酒などの影響を受けやすいからではないかと言います。

離婚しても健康的に過ごすために

研究では「離別・死別した人」のうち、その後に「親と同居(出戻り)した人」と「独居している人」とで、脳卒中の発症リスクがどう違うかも調査。すると、男性は親と同居で発症リスクが減った一方で、女性は逆に増えていました。
男性は配偶者と別れても親(特に母親?)と住めば家事などを任せられるため、ストレスがかかりにくいのかもしれません。
もちろん、今回の研究結果だけで〝離婚は健康に悪い″と決めつけるのは時期尚早。今は3組に1組が離婚する時代。離婚しても健康的に過ごせるような社会的なバックアップが必要、ということかもしれないですね。

こちらも参考に!

JPHCスタディ
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3792.html

Apr 7 2017

医療ライター・山内

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