漢方ビュー通信

毎年、冬の時期に気分が落ち込む人は必見!

毎年、冬の時期に気分が落ち込む人は必見!

季節が冬になると感じやすくなる気分の落ち込み──。
気持ちが塞ぎ込みやすくなったり、ネガティブな思考が優先してしまったり…その結果、過眠や過食などの変化がカラダに現れてくる人もいるかと思います。

こういった症状を、「季節性感情障害SAD:Seasonal Affective Disorder)」※といい、だいたい10月から3月頃にかけて、症状を感じる人が増加する傾向にあります。これは、日照時間が影響しているのではないかとも考えられています。
対処法として、抗うつ剤や安定剤、入眠剤などを服用する人も多いようですが、じつは漢方薬も役立つ場合があります。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、冬の時期に感じやすい季節性感情障害(SAD)について解説します。

※1984年にアメリカの精神科医ローゼンタールらにより「冬季うつ病」として初めて報告された精神疾患

日照時間がカラダに及ぼす影響

日照時間がカラダに及ぼす影響

季節性感情障害(SAD)は、日照時間が短くなり始める秋の終わりから冬の初めのタイミングで発症しやすく、日が長くなる春まで続くことが多いとされています。

このように、人のカラダと太陽の光は、深く関係していることが分かります。
漢方医学では「整体観念」といって、人のカラダは自然の一部であり、自然の変化に連動して体調も変化するため、不調が起きる時にはその不調だけをみるのではなく、カラダ全体や自然との関係性までをひっくるめて考慮し、対策をとることが必要だと考えます。

科学的にみると、日照時間が短くなることで、実際にセロトニンやビタミンDの量が低下します。
セロトニンは、メンタルの状態を安定させたり、睡眠の質を向上させたりするのに役立ちます。また、季節性感情障害(SAD)の患者さんの多くには、血中のビタミンDの低値がみられるという研究データもあります。
さらに、ビタミンDは、免疫の働きをサポートしたり、腸壁の修復やカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にしたりするなどして、風邪などの感染症予防や骨密度低下対策にもつながるので不足させてはいけない物質です。

季節性感情障害(SAD)の症状とは

季節性感情障害(SAD)の症状として代表的なものは、気力の低下や過眠症、体重増加、意欲の低下、倦怠感などがあります。
また特徴的な症状に食欲亢進があり、午後から夜にかけて炭水化物飢餓状態になることがあります。白米やパン、チョコレートなどの菓子類などの炭水化物を強く欲するようになります。

そして、季節性感情障害(SAD)は、その名の通り季節的な要因を持っていて、秋から冬にかけて発症しやすいとされていますが、ストレスとなる出来事など心理的原因がなくとも発症することが特徴です。

冬の落ち込んだココロを元気にする方法

毎年、秋冬に気分の落ち込みで悩むという人は、ただ春の訪れを待つのではなくしっかりと対策を取りましょう。
目に見えている不調ではないからと、そのまま放置する人も多いですが、ココロの不調は行動する範囲を狭めたり、運動量を減らしたり、集中力を低下させたり、時間の使い方を非効率にしたりと、生活の質をじわじわと落としてしまうものです。

簡単にできる対策として、自然光は曇りや雨でもカラダを覚醒させるには十分な力があるため、毎日窓際で朝食を摂ることや、太陽が出ている時間に1時間程度散歩をしたり、ストレッチをしたり、セロトニンの材料となるトリプトファンを多く含む食材(大豆製品や乳製品など)を摂り入れることなどが効果的です。
また、医療機関にかかると抗うつ剤などの服用を勧められるのではないかと考える人も多いかもしれませんが、メンタルに関する分野は「漢方」の得意分野とするところでもあります。
ですので、この時期のココロの不調で悩んでいる場合は、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみてもよいでしょう。

「気(き)」の不調には漢方薬を

日が短いせいでしっかりした運動ができないという人、飲み会の多いシーズンなので食生活が乱れてしまっている人など、この時期はさまざまな“障壁”があることも事実です。
なるべく生活習慣を見直すことを考えながら、そのサポートとして漢方薬を活用しつつ、生活の質を高めていく努力をしていきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Dec 21 2021

薬剤師・大久保 愛

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