漢方ビュー通信

意外と知らない「ヒスタミン中毒」って何?

意外と知らない「ヒスタミン中毒」って何?

居酒屋帰り、下痢と発疹に見舞われた友人

先日のこと。友人の一人が「居酒屋から自宅に戻ったら、下痢と頭痛、心臓のドキドキが治まらなくなって、たいへんだった」という話をしてくれました。翌日、病院に行って医師から告げられた診断名が、「ヒスタミン中毒」でした。

ヒスタミンというと花粉症の薬でもある、抗ヒスタミン薬などを思い浮かべる人がいるかもしれません。厚生労働省の解説によると、ヒスタミン中毒とは「ヒスタミンという物質が高濃度に蓄積された食品を摂ることによって発症する、アレルギーのようにみえる食中毒の一種」とのことです。

食中毒の発生状況をみると、ヒスタミン中毒の患者数は年間で数十人~400人(2011~2020年)ですが、保育園や学校で大規模な食中毒が発生しているといわれています。

赤身魚が原因になりやすいが、ワインやチーズも

ヒスタミンはアレルギー症状をもたらす原因物質のひとつで、私たちの体内でも作られますが、魚やその加工品では、そこに含まれるヒスチジンというアミノ酸が、ヒスタミンを作る菌の酵素によってヒスタミンに変わることで蓄積していきます。
そのヒスタミンの量が多いと、食べたときに中毒のような症状を起こす、というわけです。

原因となりやすい食品は、マグロやカジキ、カツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリとその加工品など。赤身の魚に多いという特徴があり、イワシの蒲焼き、鉄火丼、アジフライなどが集団発生の事例として、報告されています。
また、ワインやチーズでもヒスタミン中毒が起こることがあるので、ご注意を。

赤身魚が原因になりやすいが、ワインやチーズも

ヒスタミン中毒の予防法として

もちろんこうした魚やワイン、チーズも、しっかりと管理がされていればヒスタミンが蓄積することはありません。しかし、保存方法がずさんだったり、誤っていたりすると、こうした問題が起こりやすくなります。
一度できたヒスタミンは熱に強く、また加工してもなくならないため、一度蓄積されたものを除去することはできず、食中毒の原因となってしまいます。
厚生労働省では、「消費者のみなさまへ」ということで、以下の4つの注意点を挙げています。

  • 魚を生のまま保存する場合は、すみやかに冷蔵、冷凍すること
  • 解凍や加工においては、魚の低温管理を徹底すること
  • 鮮度が低下した魚は使用しないこと(調理時に加熱しても分解されません)
  • 信頼できる業者から原材料を仕入れるなど、適切な温度管理がされている原料を使用すること

さらに消費者庁では、「エラや消化管はできるだけ早く除去すること」なども、ポイントとして挙げています。

ヒスタミン中毒の症状と発症したときの対策は?

ヒスタミン中毒の症状と発症したときの対策は?

ヒスタミン中毒は、原因物質を食べた後(5~10分後)から1~2時間以内に、顔面や口の周り、耳たぶが赤くなり、頭痛や腹痛、下痢、動悸などが生じてきます。重篤になると、血圧低下や気管支のれん縮などを起こします。

先に挙げた、魚や食品を口にしたときに、唇や舌の先にピリピリとした刺激があったら、そのまま飲み込まずに吐き出しましょう。また急性の症状が起こったら、まずは病院に連絡して、指示を仰ぎましょう。
治療は抗ヒスタミン薬を用いるのが一般的で、重症度に応じて別の治療が追加されます。
食べものを摂ることによるトラブルは、細菌などによる食中毒、食物アレルギーなどがありますが、ヒスタミン中毒という問題もあることを、覚えておくといいかもしれません。

参考

消費者庁 ヒスタミン食中毒について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/topics/topics_003/

厚生労働省 ヒスタミンによる食中毒について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html

救急医学 45:2021 ヒスタミン中毒

Feb 15 2022

医療ライター・山内

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