「女性の問題」だけにして欲しくない!男性不妊について
WHOの調査では「4分の1が男性側に原因」
今年4月から始まる「不妊治療の保険適用」。体外受精や顕微授精などが対象となりますが、男性不妊に対する検査や治療でも、健康保険が使えるようになります。
不妊は女性の問題だから、男性は関係ないだろう──そう思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
WHO(世界保健機関)の調査によると、不妊の原因は男性側にあるケースが24%、女性側が41%、男女両方にあるケースが24%、不明が11%となっています。
つまり男性側の要因が4分1以上あるとされ、決して他人事ではないのです。
男性不妊の9割近くが精子に問題あり
では、男性不妊の原因はいったい何でしょうか。
2016年に行われた男性不妊の調査研究では、その原因は精液所見不良(射精される精液中の精子数が少ないか、動きが悪い。あるいはその両方の場合)が9割近くにのぼり、残りの1割強が性機能障害(勃起せず挿入できない、勃起はするものの射精できない、あるいはその両方)でした。
精液所見不良の内訳は、精子を作る造精機能の障害と精子が通る道の通過障害などです。
日本生殖医学会によると、精子は精巣の中で作られ、精巣上体(精巣の上側にある組織)を通り抜ける間に運動能力を得て、完全な精子となります。精巣内での精子が作られたり、精巣上体での成熟する過程に何らかの問題があると、精子数が減ったり、精子の動きが悪くなったり、奇形率が多くなったりして、受精する力が低下します。
原因の多くは不明とのことですが、男性型脱毛症(AGA)の薬を服用していると、精子を作る機能が障害されることがあるようなので、注意が必要です。
「父親になろう」と思ったら心がけたいこと
そもそも不妊症とは、「生殖年齢にいたった男女が、1年以上避妊せず性交を行っているにもかかわらず、妊娠が成立しないこと」をいいます。
心当たりがあったら、まずは男性であっても日々の生活を整えることが大事です。
一般的に言われているのは、精巣を必要以上に温めないようにすること。精巣が体外にあるのは、体温より低めの方が、精子が育ちやすいからです。
そのため、サウナは控える、長時間ノートパソコンやタブレット型パソコンを膝の上で使用しないといったことは、造精機能を低下させないために必要です。
このほか、禁煙する、内服の育毛剤は控える、長時間のバイクや自転車運転は控える、締め付ける下着は履かないなども、精子の質を保つためには大切です。
とくにタバコは精巣や精子に悪影響を与えるので、止めることが前提になります。
男性不妊対策では漢方治療が有効なことも
精子を作る機能を整える治療には、ビタミン剤や漢方薬、末梢血管を拡張させて血液循環をよくする薬などを用いた薬物療法と、内分泌療法(ホルモン療法)とがあります。
漢方では、不妊になっている男性は体力が低下していて、弱々しい状態になっている「虚証(きょしょう)」、あるいは「腎虚(じんきょ)」であると捉えています。そこで、虚証や腎虚で用いられる漢方薬(補腎剤)が使われることが多いようです。
また、ストレスが関与している可能性がある人には、不安を和らげる漢方薬が用いられることもあります。
いずれにせよ、すぐに精子の能力が回復するわけではないので、3カ月~半年ほどしっかりと向き合っていく必要があります。
男性不妊を扱っている医療機関、専門医はそれほど多くありませんが、日本生殖医学会のサイトには男性不妊治療に詳しい医療機関や医師が載っていますので、参考にしてください。
参考
日本生殖医学会 Q4.不妊症の原因にはどういうものがありますか?
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa04.html
男性不妊症の診療に関するアンケート調査結果(2021年8月13日掲載・更新)
http://www.jsrm.or.jp/about/data.html#enquete
「臨床婦人科産科」72巻11号 男性不妊アップデート
「臨床婦人科産科」66巻1号 ワンランク上の漢方診療
ご存じですか?
医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
こちらも参考に!
漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/clinic医療ライター・山内