漢方ビュー通信

体内時計を整えて、不調の解決を!

日中は疲れているのに、夜が近づくにつれだんだん元気になり、寝る直前には頭が冴えてしまってなかなか寝付けない…そういった悩みを抱える人にとって、朝の寝起き時は本当にツライと思います。
これは、1日周期でリズムを刻む「体内時計」が乱れてしまっていることが考えられます。

眠れない時、私たちは就寝前にアロマをたいたり、薬に頼ったりとその時その時でケアしようと考えることが多いと思います。ですが、体内時計はその日1日の過ごし方が影響してくるので、就寝時に気を付けただけでは、すぐに整うことはありません。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、さまざまな生体リズムを調整する体内時計について解説します。

24時間のリズムをしっかり刻むことが不調を遠ざける

体内時計を形成しているのは、数多くの「時計遺伝子」です。
この時計遺伝子は、1960年代頃から注目されはじめ、徐々に研究が進みました。そして、アメリカの科学者らによって、2017年にはノーベル医学生理賞の受賞、現在では20個ほどの遺伝子が発見されているそうです。

さて、時計遺伝子には大きく2つの種類があります。
1つはメインとなる遺伝子で、光の刺激が脳の視交叉上核に作用することでコントロールされています。もう1つはサブ的な遺伝子で、抹消組織である肝臓や血管、皮膚などに存在しています。

メインの時計遺伝子は、1日をおよそ24.5時間と刻んでいます。
外界は1日24時間なので、わずかな誤差がありますが、これをリセットするのが光による刺激です。
次に、サブの時計遺伝子は、部位によって1日の時間が異なります。この足並みを合わせるために働くのが“食事”になります。

勘が鋭い人はお気づきかもしれませんが、これらのバランスが崩れた時に、不調が増えるとされています。外界の時間、メインの時計遺伝子、サブの時計遺伝子が、できるだけバラバラにならないように24時間のリズムを刻むことが、不調を遠ざけるために必要なことなのです。

時計遺伝子を整えることから始めよう

体内時計を整えるには、メインとサブどちらの時計遺伝子も整えることが重要です。

メインの時計遺伝子を整えるためには、朝に太陽の光をしっかりと浴び、夜には強い光を避けること。一方、サブの時計遺伝子を整えるためには、朝食、昼食、夕食のボリュームが、できるだけ朝に多くなるようにすることです。

さらに、就寝2時間前までには食事を終えること、朝食まで10時間以上の絶食期間を設けること、3食しっかり摂ってインスリンの分泌を促すこと、食物繊維や糖質などを意識的に摂るようにすると、時計遺伝子が整いやすくなるとされています。

乱れたリズムをサポートする漢方薬

漢方入門!漢方薬の名前に隠された秘密を解説

ここまで体内時計を整える方法を解説してきましたが、現代の生活の中でなかなか実践するのが難しい環境の人もいるかもしれません。中には、すでに体内時計が乱れてしまい、夜型人間から抜け出せない、朝が弱いなど、簡単にリセットができないような人もいるでしょう。
そのような人たちにとって、漢方薬がひとつの兆しになるかもしれません。

用いられる漢方薬の例として、頭が冴えて興奮気味で眠れないような人には「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」、イライラして眠れないときには「加味逍遙散(かみしょうようさん)」、不安感があって眠れない時には「加味帰脾湯(かみきひとう)」などがあり、感情の種類によって使い分けることができます。
気になった人は、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみるとよいでしょう。

生活習慣の改善がもっとも優先すべきことです。
とはいえ、急に習慣を変えることは非常に難しいことなのも分かります。少しずつ努力しながら、漢方薬も活用し、あるべきカラダの状態へ導いていくことを目指し、不調の解決へとつなげていきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Aug 2 2022

薬剤師・大久保 愛

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