漢方ビュー通信

「朝起きられない」のはなぜ?…起立性調節障害とは

「朝起きられない」のはなぜ?…起立性調節障害とは

特徴的な症状は「朝、起きられない」

起立性調節障害(OD)という言葉、聞いたことありますか。
朝起きられなかったり、立ちくらみ、だるさ、動悸、頭痛などが起こるもので、10~16歳の女子に多くみられます。

原因は、自律神経の機能不全。つまり、自律神経のネットワークが働きにくくなっていることが関与しています。
急激に身長が伸びたりすると、その成長に自律神経が追いつかず、カラダを起こす、立ち上がるなどのちょっとした姿勢の変化に対応できなくなり、めまいや立ちくらみなどが起こってしまうのです。

真面目で頑張りすぎの人になりやすい

真面目で頑張りすぎの人になりやすい

起立性調節障害は成長に伴って起こるものとされていますが、性格も影響するそうで、実際、大人しくて真面目、何でも完璧を目指そうとする人に多いとされています。
これは、性格そのものが病気のリスクになっているというよりも、こうした性格の人は、どうしても頑張りすぎて無理をしがちであること。結果的に、自律神経のバランスを崩してしまう…ということなのです。

また、やせ型で色白。ちょっとしたことで体調を崩しやすく、風邪を引きやすい、いわゆる虚弱体質の人に多いということもわかっています。
そして、こうした人たちが疲労ストレスなどをきっかけに、病気が表に出てくるというわけです。

学校に遅刻、キレるなど行動の障害も

症状は、冒頭でも述べた、朝起きられない、立ちくらみ、失神、めまい、だるさ、動悸、頭痛などですが、このほかに、「行動の障害」と呼ばれる状態も起こります。
学校に遅刻する、登校できない、自室に引きこもる、スマホやゲームに没頭する、過食や食べ吐き、周りにキレる、などです。

では、なぜ朝、起きられないのでしょうか。
朝、目が覚めてカラダを起こすと、脳は心臓より高い位置になります。そのため、血圧を上げて脳に血液を送ろうとします。この調整を行っているのが自律神経です。
ところが、起立性調節障害の人は、この機能が低下しているので、頭まで血液がまわらず酸欠が起こるため、なかなか朝、起きられないのです。このほか心理的な要因もあります。
また、ふつう明け方になると短く、浅くなる睡眠周期が、朝になっても長く深いままでいるという理由もあります。これには成長ホルモンが関与していると考えられています。

その人をトータルで診る全人的医療が重要

病院(主に小児科)では「起立性調節障害診断アルゴリズム」の手順にしがたって、診断が行われ、治療が始まります。
この病気は単に血圧を上げる治療をすればいいというものではなく、その人の生活や環境などを含めて、トータルでその人を診る「全人的な医療」が重視されています。
そこには漢方の考え方が役立つこともあり、実際に漢方薬が治療に使われることも少なくありません。

原因不明の微熱には漢方がオススメ

漢方では起立性調節障害の人は、「虚証(きょしょう)」で、気の巡りが悪い「気虚(ききょ)」や、血の巡りが悪い「血虚(けっきょ)」を伴っているケースが多いとされています。そこでその人の主症状や体質などから、それらを改善する漢方薬が検討されます。
例えば、めまいやふらつき、立ちくらみの改善に期待ができる「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」などがあります。ただし、個々の体質や状態によって処方が異なりますので、漢方に詳しい医師や薬剤師に相談することをおすすめします。

参考

日本小児心身医学会(1)起立性調節障害(OD)
https://www.jisinsin.jp/general/detail/detail_01/

『うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある』(森下克也著・メディカルトリビューン)

『チャイルド・ヘルス』Vol.21 No.11 特集 こんなとき、この漢方薬が見方です

『こころの科学』No.217 特別企画 思春期のこころとからだ

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Nov 8 2022

医療ライター・山内

関連コンテンツ