漢方ビュー通信

自覚症状が分かりづらい“肝臓”を労るために

自覚症状が分かりづらい“肝臓”を労るために

健康情報などでよく耳にする「デトックス」──、じつは「detoxification(解毒)」という英単語の短縮形で、「カラダに溜まった毒素を体外へ排出する」という意味を持っています。
つまり、デトックスとは、有害物質の解毒・分解の働きを持つ「肝臓」をサポートするということになります。その肝臓は栄養の代謝や胆汁の合成・分泌といった働きもあります。

このように、肝臓は生きていくうえで、大切な機能を多く持っていますが、じつは神経が通っていません。そのため、万が一肝臓の病気を患っていた場合、自覚症状が現れるのはずいぶん進行してからになることがあります。これが「肝臓=沈黙の臓器」といわれる所以です。

そこで今回は、薬剤師である筆者が、デトックスに欠かせない臓器である肝臓の働きとその異常を知るための検査について解説します。

肝臓の役割について

肝臓は、腹腔内最大の臓器で、2,500億個もの肝細胞が集まり構成されています。また、2,000種類以上の酵素を持ち、その働きは500以上とされています。
さらに、肝臓には驚異の再生力があり、仮に7割を切り取ったとしても再生するほどです。
ですが、冒頭でもお伝えしたように、神経が通っていない分、自覚症状が分かりづらく、症状が発現したときには病気が進行しているという懸念点があります。

そして、肝臓の代表的な働きは、食べたものをカラダで利用できるように変換する栄養の代謝、食事などにより大腸で発生したアンモニアやアルコールなどの有害物質の無毒化、肝臓で不要になった物質であり消化酵素を助ける働きを持つ胆汁の分泌の3つが挙げられます。

肝臓・肝機能関連の検査と数値

肝臓は症状が分かりにくいので、もし病気を患っていた場合、健康診断などで発覚することが多いです。その際、肝臓の細胞に多く含まれている酵素(ASTやALT、γ―GTP)などに異常があると、血液検査などの精密検査を行います。
他にも、肝炎のウイルス検査や肝がんの腫瘍マーカーの検査、画像診断(CT、MRI)や肝生検を行うこともあります。

ちなみに、γ―GTPは肝臓をはじめ、腎臓やすい臓、脾臓などに存在する酵素です。飲酒習慣があると高くなりやすいため、禁酒で正常値になることもあります。その場合、緊急性は少ないと考えられますが、ALTとともに異常値の場合には、脂肪肝や薬剤性肝障害の可能性も考えられるので注意しましょう。

肝臓を労わるために生活習慣の改善を

慢性肝炎の場合には自覚症状が出にくいため、20~30年間も放置して、気が付いたときには肝硬変やがんになってしまうことも…。また、以前よりもウイルス性の肝炎は減りつつありますが、生活習慣由来(アルコールの過剰摂取、肥満、糖尿、脂質代謝異常症など)の肝炎は増えつつあるようです。
こういった原因の根源は、ストレスや寝つきが悪いことが考えられます。
また、一般的に65歳以上の人に肝臓の病気が多いのは、長年のダメージが蓄積していることが理由とされています。

自律神経の乱れには漢方薬が効果的な場合も

今のところ特に目立った自覚症状はないけれど、生活習慣病に対する危機感を感じている人は、日々の生活習慣の改善とともに漢方薬という選択肢もあります。
例えば、日常のストレスを軽減したり、寝つきをスムーズにしたりするために「抑肝散(よくかんさん)」や「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」などが処方されるケースがあります。無理なく生活習慣を改善するために役立つので、気になる人は一度漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみるとよいでしょう。

肝臓に関わる疾患は、発症したときにはすでに、進行しているケースが多いです。未来の健康のために、自分は心配ないと思っている人も今から生活習慣の改善を行っていきましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Dec 16 2022

薬剤師・大久保 愛

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