漢方ビュー通信

年々増えている「心不全」、その背景にある2つの理由とは?

心不全とは「心臓の機能が低下した状態」

全身に血液を行き巡らせるポンプの役目を持つ心臓。この心臓の機能が何らかの理由で低下した状態を心不全といいます。
心不全というと、多くの人が“亡くなる直前の心臓の状態”だと思っているようですが、実際はそうではなく、日本循環器学会と日本心不全学会による定義では、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」としています。

わが国では心不全を患う人は年々増えていますが、その理由は大きく2つあります。
理由の1つ目は、寿命が延び、高齢者が増えていることが挙げられます。
心臓の機能が低下する大きな原因は加齢なので、高齢者が増えればそれによって心不全の患者さんも増えるというわけです。
また加齢で増える高血圧も、心不全の原因になります。

患者数が増えている理由が医学の進歩?

もう1つは、医学の進歩です。
それって逆では?と思う人も多いと思いますが、心不全の原因となる病気には心筋梗塞や狭心症、不整脈、弁膜症などの心臓病があります。これらの病気が手術や内科的治療(カラダの中に細い管を通して行う治療=カテーテル治療)のおかげで治るようになりました。
昔はこうした病気で亡くなっていた人が助かるようになったのです。

しかし、一度患った心臓は、いくら治療をしても元通りにはなりません。心臓をつくる心筋という細胞は、一度壊れたら再生しないからです。
そのため、こうした人たちが治療後に徐々に心臓を悪くして、心不全になっているのです。

高齢者に多い心不全

高齢者の病気というと認知症やがんといった病気を思い浮かべる人も多いかと思いますが、じつはこうした病気よりも、あるいはそれらと同じくらい心不全は予後が悪い(寿命が短くなる)病気です。
心臓の機能は加齢や病気によって徐々に落ちていきますが、風邪やインフルエンザといった感染症や、水分の摂り過ぎ、塩分の摂り過ぎ、急激な運動などをきっかけに、急に悪化します。そしてそれらによって命を落とすことも少なくないのです。

実際、日本循環器学会によると、わが国の循環器疾患(心筋梗塞や狭心症など)の死者数は、がんの次に多く、心不全による5年生存率は50%程度となっています。
したがって、心不全では悪化させないよう感染対策をしっかりし、心臓にやさしい生活をしていくことが重要になってきます。

心臓と上手に付き合っていくために

心不全の治療は、大きく薬物療法と非薬物療法にわかれます。
薬物療法では血圧を調整したり、浮腫を防いだりすることを目的に、降圧薬や利尿薬などを使っていきます。漢方薬では浮腫や息苦しさに対して「木防已湯(もくぼういとう)」などが用いられています。
非薬物療法では、心臓に負荷がかからない程度にカラダを動かすことが悪化予防に効果的であることから、最近では医師の指導の下で「心臓リハビリテーション」なども行われています。

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いずれにせよ、年齢が上がればそれだけ心不全のリスクが上がります。
しかし、私たちにもできることはあります。規則正しい生活をする、ストレスを溜めない、暴飲暴食は控えるなど、心臓にやさしい生活を心がけることが大事です。

参照

地域のかかりつけ医と多職種のための心不全診療ガイドブック

漢方スクエア「木防已湯」

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Apr 25 2023

医療ライター・山内

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