漢方ビュー通信

夏の疲れを引きずる「脾気虚(ひききょ)」体質って?

夏の疲れを引きずる「脾気虚(ひききょ)」体質って?

6月末の夏至の頃から始まる本格的な夏の暑さは、9月末の秋分の日の頃まで続きます。
その時期の環境といえば、外は強い紫外線で湿度と気温が高く、室内はエアコンによって、長時間過ごすと底冷えをしてしまうような冷たさを感じます。
すると、そういった環境下にカラダがついていかず、自律神経を乱したり、冷たい飲食物でお腹を壊してしまったり、胃腸風邪(胃腸炎)をひいてしまったりすることも…。
このような長い期間にわたる気候によるダメージは、早めに解消しておきたいものです。特に、消化吸収系の不調は、栄養摂取に関わっているので、今後元気に過ごせるかどうかに影響してきます。

そこで今回は薬剤師である筆者が、夏の疲れを引きずる「脾気虚(ひききょ)」と呼ばれる状態を改善する方法を紹介します。

脾気虚がもたらす症状とは

「脾気虚」とは、漢方医学で、消化器系統の働きが低下し、食事をしても栄養としてうまく利用できていない状態をいいます。すなわち、消化吸収機能が衰退している症候があらわれます。
漢方医学の考え方では、1年の季節を5つに分類し、春夏秋冬にプラス「長夏」というかたちで五季としています。この高温多湿で低気圧が訪れるときが、まさに長夏に該当します。

例えば、雨の日に胃もたれがしやすい、お腹が張るなどの不調を感じている人はいないでしょうか。思い当たる人は、「脾気虚」の可能性が考えられます。
その代表的な症状としては、食欲不振をはじめ、胃もたれや下痢、便秘、疲れやすい、食後の強い眠気、アザができやすいなどがあります。

脾気虚がもたらす症状とは

「脾(ひ)」は食べ物から、「気・血・水(き・けつ・すい)」(※)を作り出す中心的な役割を担う部分です。そのため、「脾気虚」の放置は長期的な疲労感、夏の場合には、夏の疲れや不調を引きずるといったことに繋がってしまうのです

※…漢方で体質を診るオリジナルの“ものさし”としての考え方。「気・血・水」は、カラダに必要不可欠なもので、この3つの要素がうまく体内を巡ることで健康が維持されていると考えられています。

脾気虚の対策は食事と漢方薬で

脾気虚のときには、パンやうどん、パスタ、お菓子、アイスなど、糖質や甘い物を欲しやすくなると考えられています。ですが、脾気虚は消化吸収能力の低下による栄養不足でもあるため、糖質ばかり摂取していては元気になりません。
1日の3食で、消化の負担にならないような豆腐や卵、魚、納豆などから、タンパク質を意識的に摂るようにすることもポイント。
また、消化を助けるために、温かい飲食物をいつもの倍の時間をかけてゆっくり摂ると脾のサポートになります。

そして、脾気虚のときに活躍する漢方薬もあるので紹介します。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

疲れやすい、カラダがだるいときに使われる代表的な漢方薬です。

人参湯(にんじんとう)

疲れやすく、冷えやすく、胃痛、嘔吐などがあるときに使われます。

真武湯(しんぶとう)

全身が冷えやすく、下痢しがちで、水分代謝が悪い人に使われます。

大建中湯(だいけんちゅうとう)

お腹が冷えて痛かったり、お腹が張るときなどに使われます。

六君子湯(りっくんしとう)

食欲がなく、水分を飲むとお腹の中で水がポチャポチャなるような胃腸の不調のときに使われます。

安中散(あんちゅうさん)

胃痛、腹痛、吐き気があるときに使われます。

漢方薬

このように脾気虚のときに用いられる漢方薬はさまざまです。 脾気虚を引きずらないよう、季節の不調はその季節のうちに解決し、次の季節に備えましょう。少し気が早いですが、過ごしにくい夏を乗り切り、秋を思いっきり楽しむことができるように今から準備しておくことが大切です。 今回紹介した脾気虚を自覚したら、自分に合った処方で安心して対策できるように、かかりつけ医もしくはお近くの漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみましょう。

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Jun 2 2023

薬剤師・大久保 愛

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