漢方ビュー通信

天然の軟膏、塗る漢方薬「紫雲膏」ってどんな薬?

天然の軟膏、塗る漢方薬「紫雲膏」ってどんな薬?

江戸時代の塗り薬を元に作られた赤紫色の薬

漢方薬というと「飲むタイプ」の薬をイメージする人が多いと思いますが、「塗るタイプ」の漢方薬があるのをご存じですか?

その漢方薬の名前は「紫雲膏(しうんこう)」です。
株式会社ツムラの資料には、以下のように書かれています。

<鮮やかな赤紫色の塗り薬である紫雲膏は、江戸時代の外科医・華岡青洲が中国・明代の『外科正宗』に収載された潤肌膏(じゅんきこう)をもとに創製したものです。主薬である紫根の「紫」と、華岡青洲の幼名である雲平の「雲」の字を用いています。紫雲膏を塗ると皮膚の表面が紫色になることから、これを紫雲(古来中国で、盛徳の君子のいる所にたなびくとされた雲)になぞらえて処方名にしたと考えられています>
※引用の送り仮名は筆者による。

華岡青洲は世界初の乳がん手術の執刀医

ちなみに、ここに登場する華岡青洲は、世界で初めて乳がんの手術を行った執刀医(あえて強調しますが、日本初ではなく、世界初です!)。
なんと、1805年(江戸時代後期)のことです。

このとき全身麻酔として使用したのも、漢方薬のひとつ「通仙散(つうせんさん)」です。
通仙散は、チョウセンアサガオを中心に、6種類の生薬を配合されていますが、配合の割合などは青洲の弟子に一部伝わっただけで、全容は明かされないまま。
西洋薬の麻酔薬の到来で、明治後半からは使用されなくなりました。
この華岡青洲の麻酔手術成功までのいきさつは、作家・有吉佐和子さんの『華岡青洲の妻』という小説にもなっています。

やけどやあせもなど、さまざまな皮膚トラブルに

さて、話を紫雲膏に戻します。
紫雲膏は、胡麻(ごま)油や当帰(とうき)、紫根(しこん)、蜜蝋(みつろう)などからできている塗り薬。患部の血行を促して潤いを与えたり、また炎症を鎮めたりする働きがあります。

やけどや痔などに用いられるほか、ひびやあかぎれ、しもやけ、魚の目、あせも、ただれ、外傷、湿疹など、さまざまな皮膚のトラブル、肌荒れに用いられています。
唇のあれの改善にもよく、天然のリップクリームとして使っている人もいるようです。

独特なニオイが特徴、最近は匂わないタイプも

薬局やドラッグストアなどでも市販されている紫雲膏。
昔の人はこれでさまざまな皮膚のトラブルを治していた薬ですが、難点はニオイ。アブラっぽい独特なニオイが特徴で、それが苦手な人もいます。

ただ、最近は匂わないタイプも登場しているので、チェックしてみてはいかがでしょう。
もうひとつの難点は、あの鮮やかな色。洋服に色が付いてしまうことがあるので、塗るときは少し注意が必要かもしれません。
また、人によっては使うと発疹やかゆみが出ることがあるので、その場合は使用を止めて、皮膚科医などを受診しましょう。

参照

漢方スクエア 紫雲膏

漢方スクエア 漢方徒然 仰げば尊し

ご存じですか?

医療用漢方製剤はお近くの医療機関で処方してもらうこともできます。
ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)

こちらも参考に!

漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介

https://www.kampo-view.com/clinic
Jun 27 2023

医療ライター・山内

関連コンテンツ