「朝起きられない子ども」、もしかして起立性調節障害かも
小学生~高校生の2割が訴える「朝起きられない」
朝、学校に行く時間になっても起きられない、午前中は具合が悪いのに夕方から元気…。
思春期の前後では、こんな問題が起こってくることがあります。
このようなときに考えられるのが、「起立性調節障害」です。聞いたことがある人もいるかもしれません。
起立性調節障害は、自律神経が関係する不調のひとつで、立ち上がったときに立ちくらみやめまい、動悸などが起こるのが特徴です。
過去に行われた調査によると、「『立ちくらみ』や『めまい』を感じることがある。または、立ち上がるときにそっと立つことがある」という訴えは、調査対象の小学生から高校生のうち、男子21.8%、女子27.7%に見られました(平成22年度「児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」より)。
決してめずらしい病気ではないのです。
心拍や血圧の調整がうまくいかないことで生じる
この起立性調節障害をもたらす自律神経とは、私たちのカラダのさまざまな機能を調整している神経のこと、呼吸以外では、自分の意思で調節することはできません。
この自律神経が支配しているさまざまなカラダの機能のひとつが、血圧や心拍数の調整で、横になっている状態から起き上がった状態になった際に、脳にしっかり血液を届けています。
そして、この部分に問題が生じたものが、起立性調節障害なのです。
原因として考えられているのが、思春期に伴うカラダの成長で、これに自律神経の機能が追いつかず、アンバランスな状態が生じるためだといわれています。
ただ、これは医学的に証明されているものではなく、はっきりした原因はよくわかっていないというのが、実情です。
一方で、親が若いころに起立性調節障害があると、その子どもも体質を引き継ぎやすいことは、以前から指摘されています。
また、発達障害との関係に注目する専門家もいて、重症の起立性調節障害の子どものなかに、発達障害を併発している子どもが多いという報告もあります。
心配なら一度、小児科医に診てもらいましょう
起立性調節障害の子どもに見られる大きな特徴が、「朝や午前中に調子が悪い」ということです。
寝起きが悪く、がんばって起きたとしても頭痛やめまい、腹痛などがあって、学校に行くのが困難になります。逆に、夜遅くまで寝られず、そのため朝起きられない…という悪循環に陥っています。
心配なときは、まずは小児科を受診させましょう。最近はこの病気について詳しい小児科医も増えています。
起立性調節障害の治療については後述しますが、家庭では水分摂取(1.5リットル程度)や、塩分摂取(1日10グラム程度)などが勧められています。
水分や塩分を摂ることで血圧が上がり、症状を軽くすると考えられています。
さらに可能な範囲でカラダを動かす、規則正しい生活に努める、めまいや立ちくらみがしないように、ゆっくりと立ち上がるといったケアを行っていきます。
大切な思春期、家族やまわりは子どものサポートを
このほかに、薬による治療も行われます。
使うのは主に血圧を上げる薬(昇圧薬)ですが、めまいや立ちくらみには漢方薬も有用とされています。
漢方では子どもの体質や症状などを加味して、「苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)」や「半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)」、「真武湯(しんぶとう)」などが用いられています。
起立性調節障害は一般的には成長とともに改善されていきます。
しかし、大切な思春期の一時期、不調を抱えながら過ごすのは、本人にとっても家族にとってもつらいもの。
医師と相談しつつ、無理をせず、その子らしい生活ができるようサポートしていくことが大事です。
参照
平成22年度「児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書
https://www.gakkohoken.jp/book/ebook/ebook_H230030/H230030.pdf
漢方スクエア 立ちくらみ、起立性調節障害と漢方治療
小児科診療 小児の漢方療法―エキス剤を使いこなそう
ご存じですか?
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ご自身の症状で気になることがありましたら、一度かかりつけ医にご相談ください。
(すべての医師が漢方独自の診療方法を行うとは限りません。一般的な診療だけで終える場合もあります。)
こちらも参考に!
漢方に詳しい病院・医師検索サイト紹介
https://www.kampo-view.com/clinic医療ライター・山内